多文化クロストーク

観光・旅行業に関わる人たちー第3回 日本の観光のこれからー

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左からバングラデシュ出身のタスニアさん、台湾出身のカンさん、イタリア出身のミケラさん

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第1回はコチラから

 

第3回 日本の観光のこれから

インフルエンサー、鉄道会社、旅行会社・ブロガーとして、観光・旅行業の分野で活躍する 3人。
最終回となる第 3 回では、日本の観光業の今後の展望について、それぞれの考えを話していただきました。

 

東京の観光において、今後課題と感じることがあれば教えてください。

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日本人中心のチームで、台湾出身の観点を生かして働くカンさん。
タスニアさん

東京は自然豊かな場所もあるのに、あまり知られていないのがもったいないなと思います。私は秋川渓谷にバーベキューに行ったことがありますが、すごく綺麗で人も少ないですし、自然を探している人にはちょうどいいです。でもバスの情報も少なく、訪日観光客はあまり来ないですよね。アクセス情報などは、やはり言語の壁があると感じます。

カンさん

多言語情報の整備はだいぶ進んだと感じますが、それでもまだわかりにくいところがあります。鉄道関係でいうと、乗車券・特急券の区別は日本独特のもので、海外の人には理解が難しいです。
また日本では、手続きなどが丁寧すぎることが時に課題と感じることもあります。たとえば海外メディアが観光施設を「ちょっと撮影したい」と言ったとしても、日本では撮影申請の承認に海外よりも時間がかかります。これはさまざまな状況を想定する日本のビジネス文化ですが、海外の人の目からは遅いと思われてしまうこともあるようです。

ミケラさん

私は迷惑な訪日観光客への対応が心配です。たとえば先日イタリアの有名な観光地で、立入禁止の場所に入った人がいました。するとすぐに警察が来て迷惑行為の人を連行し、その映像が全世界に配信されました。私はこれはとてもいい対応だと感じました。警察以外に、まわりの市民も注意する、通報するなど観光地ではこうした行動を起こすべきだと思います。

タスニアさん

オーバーツーリズムは、今場所によっては本当に問題ですよね。京都や富士山の話はよく聞きますが、東京でも路上で飲酒したり、騒音問題があったり。

ミケラさん

混雑により、住民の生活が脅かされていると感じます。物価上昇でホテルも高くなっています。今後民泊が増えすぎた場合に、住民用の住居が少なくなることも心配です。

カンさん

円安が進行していることも大きいですよね。日本の方は国内旅行を選択し、海外からは訪日観光客が来ます。

オーバーツーリズムによる問題は、どのように解消すべきでしょうか。

ミケラさん

有名観光地に代わる別の場所を案内するのも一つだと思います。たとえば浅草寺は人気ですが、根津神社はいい神社なのにあまり知られていません。観光客を分散させることが大事だと思います。

カンさん

私はやはりSNSの影響力を利用すべきだと思います。日本のマナーや文化を伝えたり、ミケラさんが言ったような別の場所の選択肢を伝えたりなど。

タスニアさん

来日前の周知が大事だと思います。以前 () った国は、事前にウェブフォームで、法律・ルールを守ると誓約しなければ入国できませんでした。それが難しくても、空港で入国審査の待ち時間に日本の基本ルールやマナーについて動画を流すなどしてほしいです。

東京は観光地として、発展の可能性があると思いますか?

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まだ知られていない日本を発信していきたい、と話すタスニアさん。
ミケラさん

はい。知られていない魅力が、まだたくさんあると思います。たとえば古い歴史のある建造物、工芸体験やユニークなカフェなど。伝統と現代が融合している環境は、日本人にとっては普通ですが、ヨーロッパの観光客にとってはすごく興味を引かれるものです。

カンさん

下町など、地元感を強く感じられる地域の人気が増えているように思います。そういったエリアの散策マップは求められていると思いますね。日本は特に春と秋は気候がいいので、もっと人気が出るポテンシャルがあると思います。それと台湾は雪が降らないので、スキーなど冬のアクティビティも今後伸びしろがありそうです。

タスニアさん

日本の春と秋はたしかに魅力ですが、夏と冬もPRしたほうがいいです。みんな同じ時期に来ると、ますます混雑して大変なことになります。夏は祭りなどもありますし、冬のアクティビティなどもたくさんあります。私でも「なんで今まで知らなかったんだろう」と思う場所やコンテンツがたくさんあるので、これから日本に来る人に知らせていきたいです。

外国人住民として日本の観光・旅行業に関わることに、どんな意義があると思いますか?

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日本文化を大切にしながら、その魅力を海外に伝えていきたいと語るミケラさん。
ミケラさん

地方のファムトリップ(地域の観光資源を知るためのツアー)に参加すると、実感することがあります。それは日本人観光客と訪日観光客が求めているものは違うということです。
以前ある地域で、観光地としてダムを案内されたときは「なんで!?」と思いました。イタリアでは、ダムを見に行くのは小学生の遠足くらいです。そういうときに、訪日旅行客が本当に見たいものを、自分の観点からアドバイスできるのは強みだと思います。

カンさん

ダム、私も地域の人から勧められたことがあります。ミケラさんと同じで、私も訪日観光客は興味がないだろうと思ったので、別の場所を提案しました。

タスニアさん

海外の人の文化的背景がわかることは強いですよね。私も母国のバングラデシュ以外に、色々な国の人と関わったことがあるので、彼らが本当に何を求めているのか考え、観光の提案をするようにしています。

カンさん

そうですね。私は日本人中心のチームで働いているので、また違う観点から別のアイディアが出せるなと思います。それと海外の商談会では、日本の文化をそのまま説明するより、外国人目線の観点から説明することもあります。

ミケラさん

それ、わかります。私もヨーロッパの人に伝わりやすい説明の仕方がなんとなくわかるんです。

今後、どんなことに力を入れていきたいですか?

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特にオーバーツーリズムの対策については話が盛り上がりました。
タスニアさん

本は、まだインフルエンサーを使ったPRの市場が成熟していないと感じます。海外だと、フォロワーの数よりも発信のクオリティや内容を見て仕事が依頼されることが多いです。地道に頑張ることで、インフルエンサーの立場を向上させたいです。
また東京でいうと、今は島しょ部に興味があります。PRの仕事ばかりこなすよりも、自分の見解を生かして、興味のある場所で自分なりの発信をしていきたいです。

ミケラさん

サステナブルツーリズムですね。文化を守りながら、新しい観光資源を開発していきたいです。日本の住民と観光客が、共に生きる環境をつくりたいです。観光客を分散させれば、日本人の若年層が地方に戻るきっかけにもなります。地元ファーストを大事にしながら、観光をもっと盛り上げていきたいです。

カンさん

私はやはり台湾をはじめ各国と日本の架け橋になりたいと感じます。日本はユニークな魅力のコンテンツがあります。今は国境を越えた () () も盛んな、インターナショナルな世界です。文化の違いをお互いに理解しながら、観光業を発展させていきたいです。

 

全3回にわたって、「観光・旅行業に関わる人たち」のシリーズをお届けしました。 ますます盛り上がるインバウンド観光の業界。外国ルーツの目線を生かして活躍する住民がいることを、知っていただけたら嬉しいです。

来月からは「コンビニで働く人たち」のシリーズが始まります。

 

 

撮影協力:東武博物館
第3回のヘッダー写真は、昭和20年代のレトロな路線バス前で撮影。