多文化クロストーク
観光・旅行業に関わる人たちー第1回 日本の観光・旅行業に興味を持ったきっかけー
3人のプロフィール
カン(台湾出身)
- 在住年数
- 6年
- 母語
- 中国語、台湾語
- 好きな日本語
- 確かに
- 東京で好きな場所
- 戸越銀座商店街、隅田川、裏浅草~日暮里(谷中霊園)~上野
- 好きな食べ物
- 台湾なら臭豆腐、日本ならラーメン
- 趣味
- 旅行、写真撮影、野球観戦
- 東京でおすすめの観光地
- 戸越銀座商店街、亀戸天神
ミケラ(イタリア出身)
- 在住年数
- 8年
- 母語
- イタリア語
- 好きな日本語
- おすすめ
- 東京で好きな場所
- 谷中
- 好きな食べ物
- 寿司(特に海老と中トロ)
- 趣味
- 旅行
- 東京でおすすめの観光地
- 浅草(特に奥浅草)、門前仲町、柴又
タスニア(バングラデシュ出身)
- 在住年数
- 10年
- 母語
- ベンガル語
- 好きな日本語
- 寿司、蕎麦
- 東京で好きな場所
- あきる野にある古民家の和食店
- 好きな食べ物
- ビリヤニ
- 趣味
- 旅行と読書
- 東京でおすすめの観光地
- 浅草、中目黒、明治神宮
第1回 日本の観光・旅行業に興味を持ったきっかけ
「観光・旅行業に関わる人たち」の座談会を3回シリーズでお届けします。
日本、東京を訪れる外国人観光客は年々増えています。今回は自らの背景や経歴を生かし、日本で観光・旅行業に携わる3人に話を聞きました。第1回では、3人が日本の観光旅行業に興味を持ったきっかけについて聞きます。
いつ、どんな興味を持って日本に来ましたか?
私の出身であるイタリアは、長い歴史のある国です。私は歴史の勉強が好きだったので、他の国の歴史についても学ぶ中で、日本に興味を持ちました。特に武士や侍の文化に興味がありました。
日本に初めて来たのは2013年です。とても面白かったので1年に1回訪れるようになり、住みたいと思うようになりました。実際に住み始めたのが2017年のことです。
私は海外留学先を探していて、決まった国が日本でした。さまざまな国の候補があった中で、日本は安全で綺麗なイメージがあって特に惹かれました。また日本でテクノロジーについても学びたいと感じました。2015年に来日し、その後九州の大学で学び始めました。
台湾では日本のアニメを放映していて、子どものころからたくさんアニメを見ていました。日本に親近感があり、2017年、交換留学で初めて来日しました。その後一度台湾に戻りましたが、今の勤務先である東武鉄道株式会社が東京オリンピック・パラリンピックを見据えて人材募集を出していることを知り応募、採用され、今に至ります。
今の仕事について教えてください。
私は東武鉄道で、インバウンド観光の戦略立案及びマーケティング等を担当しています。観光地に来ていただくために、オンラインメディアやSNSでキャンペーンを企画したり、海外の旅行会社に向けた商談会などに出ることもあります。また、海外メディアや旅行会社から沿線観光地や施設を取材・視察したいという依頼が入った場合は、手配やアテンドをすることもあります。
勤務の4割程度は国内や海外への出張ですね。
外資系の旅行会社で、ヨーロッパから訪日する観光客向けのツアー企画などを担当しています。基本はリモートワークで、たまにファムトリップ(地域の観光資源を知るためのツアー)などの出張が入ることもあります。また個人としては、トラベルブロガーとしてイタリア語と英語で日本旅行に関する記事を投稿しています。
平日はIT系企業で技術関係の仕事をして、土日は旅行系のインフルエンサーとして活動しています。
SNSに旅行の写真を掲載するほか、私も各地でファムトリップに参加することがあります。私の出身国バングラデシュは、イスラム教徒の比率が高いです。私も戒律についてはよく知っているので、ムスリム向けのサービスについてアドバイスを行うこともあります。
観光・旅行業の仕事を始めたきっかけはなんですか?
もともと旅行は大好きでした。旅行のブログは趣味で2015年から書いていて、日本への移住をきっかけにメインの仕事も旅行業界になりました。ブログを始めたおかげで今の旅行会社の仕事に巡り合ったので、書き始めてよかったなと感じています。
ミケラさんと同じで、私も旅行が大好きです。台湾にいたころは、MICE(国際会議、研修旅行、展示会等)に関わる会社で働いていました。外国人ゲストに観光案内を企画したりする中で、観光への関心が深まりました。その経験がきっかけとなって、旅行・観光の仕事を長く続けたいと考えるようになりました。
私がSNSでの発信を始めたのはコロナ禍がきっかけです。私は海外旅行が好きでしたが、それまで写真を撮ったり、誰かに向けて発信することはほとんどありませんでした。ただコロナ禍で突然海外に行けなくなり、海外に住む友達にも会えなくなってしまいました。仕事がリモートワークになったこともあり、全国色々な場所で働きながらSNSで自分の現況を発信するようになったんです。投稿が意外に好評だったので、続けることになりました。
観光・旅行に関わることのやりがいや、大変と感じることを教えてください。
もともとインフルエンサーになるつもりはありませんでした。ただ発信を続けていくうちに、次第に全国各地のホテルや会社などから「来てください」とお声がけいただき、いろいろな場所に出かけるようになりました。さまざまな国内観光地を見ることで知見が深まり、自分が持つ情報量も増えました。またSNSは見た人からすぐにコメントをもらえるので、自分の発信を改善することにもつながります。4年ほど活動を続けて、自分の可能性が広がったと感じています。
観光地と深く関わる機会があるのは面白いです。地元の方と協力してイベントなどを行い、「地域の認知度が上がってよかった」などコメントをいただけると嬉しいですね。また参加した観光客から「この場所は面白い」などのフィードバックを聞くと、やりがいを感じます。旅行や観光のコンテンツは上辺だけの基本情報だけでなく、いろいろな人とアイディアを出し合って作ることが大事だと思っています。
旅行を楽しむ方法、隠れた名所など、さまざまな情報をシェアできるようになったのはとてもよかったと思います。自分自身も旅行を楽しめるし、その経験が人の役に立つのは素晴らしいことです。
一方で、ストレスに感じることもあります。それは一部の訪日観光客が、日本の文化を尊重していないと感じるときです。たとえばある観光客から、料亭で芸者体験をするときに「ハンバーガーが食べたい」とリクエストを受けたことがありました。日本の芸者文化に対して、すごく失礼な態度だと思いました。観光客側も、日本の文化や伝統について学ぶ姿勢を見せるべきです。
すごくよくわかります。実際、リクエストに完璧に対応することは難しい場合もありますよね。
仕事で海外からの取材や視察をコーディネートすることがあるのですが、行程の都合上、時間の遅れや急な予定変更が発生して、私が間に立って謝るケースもあります。どこまでが柔軟に個別対応すべきことなのか、バランスが難しいです。
私も同じことを話そうと思っていました。日本旅行の人気が高まるにつれて、みんな同じ体験を求める傾向が強くなってきていると感じます。
「今日は天気が悪いから見えないよ」とアドバイスしても、みんな富士山を撮影するためにとりあえず近くに行きます。思わぬ場所にたくさんの観光客が集中して、地元の人が困っているケースもありますよね。
マナー違反に対して、注意すれば聞いてくれる人もたくさんいますが、「短期の滞在だから何をしても大丈夫」という考えの人もいます。そういう人に接すると、心が重くなります。
少し前までは、こんな感じじゃなかったですよね。観光客はすごく増えているように感じます。
そうですね。有名な場所をチェックリストみたいに回る人が増えたなと感じます。
第1回から、観光・旅行という共通の仕事を持つ3人で、早速話が弾んだ第1回でした。第2回では、「旅行地としての東京の魅力」について話を聞きます。
── 次号へ続く