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研究者の外国人ー第3回 研究環境についてー

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第3回 研究環境について
研究環境や学校のシステムは、国によってそれぞれ違いがあります。日本と皆さんのお国とではどんな違いがあるのでしょうか。研究するうえで皆さんが感じている違いや、日本で研究していて良かったことなどを話していただきました。
日本の大学とお国の大学での研究環境の違いについて教えてください

日本の大学は施設がたくさんあるし、研究に必要な費用や設備があります。応援してくれる企業もたくさんあります。こうした環境をアフガニスタンで見つけるのは難しいので、日本の環境はいいと思います。
研究する環境を比べると、日本の方がいいと思います。わたしの大学では、大学院生に対して院生室が用意してあります。それはとてもいいです。
中国の大学は修士が3年です。わたしのような人文科学の分野ですと、自分で自由に研究課題を選ぶことができないんです。主担当の教員の課題をするということになっているので、日本の方がいいです。また研究できるものも制限されていますし、雰囲気が全然違います。中国の場合は教員と学生が会社の上司と社員のような関係になっていて、平等に話すことができないんです。縦社会だと思います。
タジキスタンと日本では教育制度がまったく違います。タジキスタンの場合、小学校は4年生までで、5年生から9年生までが中学校です。10年生と11年生が高校です。大学は4年で、修士は2年です。日本では小学校から中学に入るときには別々の中学へ行ったりしますが、わたしの国ではそのまま一緒です。先生の教え方も違います。日本のほうが分かりやすいです。
大学に関しては、公立大学は高等教育省によって管理されていて、私立大学は独立しています。一方、日本の公立大学は中央政府によって完全に管理されているわけではありません。アフガニスタンは大きな組織で運営されているのに対し、日本は研究所や権限を持つ小さな組織で運営されていると感じています。
ナビエワさんが言うように、都市部では小学校から高校までが同じ場所にありますが、地方では小学校は地元にありますが、中学校や高校は施設がないため、日本と違って遠方にあります。大学の入学制度も日本とは異なります。全国にカンコール試験と呼ばれる一般的な入学試験があります。したがって、試験に合格して成績が良い人は、大学または専攻を選択できます。
中国の大学は、小中学校でしてきた集団生活の延長線と捉えられているから、4人部屋での全寮生活で、決められたスケジュールで生活しているので、大学から自主性を求められていません。いざ大学から出て、自分が何をすべきか、どうしていいか考えることができないような自主性の欠如があります。日本の大学生は一人暮らしも多いですし、自主性が求められている気がします。でも、中国の学生はみんなまじめです。逆に日本の大学生は、もっと勉強したほうがいいと思います。
研究者の待遇はどうですか

ずっと雇用されている職員に関して給料などは、日本の方がいいと思います。
給料は日本と比べると、タジキスタンは低いと思います。もちろん日本は物価も高いです。
中国の給料は、大学の教員とサラーマンとでそんなに変わりません。博士向けの補助金を含めて、月に2,000円ほどしか給料をもらえない研究員もいます。それで生活はできませんから、親のサポートが必要になります。偉い先生は給料をもらっていますが、あまり高くはありません。博士課程の学生の10%ぐらいしか学術系の仕事が見つからないです。あとの9割の研究者がどうなるのかは問題になっています。総合して見ると日本の方が待遇がいいと思います。
日本の学生はアルバイトをしながら大学生活を謳歌する人がいますが、中国では学生はアルバイトしません。
タジキスタンでは、アルバイトというジャンルはありませんから、学生がアルバイトすることがありません。日本と全然違います。学費も生活費も、両親からです。
アフガニスタンの国立大学は、学士課程は授業料が無料ですが、修士課程や博士課程は1学期あたり5万円から10万円程度の費用がかかります。私立大学は、学士課程と修士課程の両方を請求します。
学生がパートタイムで働く機会は少ないです。一方、日本では、学生はアルバイトをしながら、同時に大学で勉強することができます。
わたしのアルバイト先にも高校生が働いていますが、高校生がアルバイトしているのは都市伝説だと思っていました。
高校生が働くのには驚きました。
わたしは高校生が働くのはいい機会だと思っています。
日本で研究していて、良かったと思うことは

日本は技術が発展していて、先進的です。大学の環境がよく、生徒が自立しています。彼らは自分自身をどうやったら向上させるかを、ちゃんと知っています。学生向けの奨学金があって、銀行からお金を借りることができます。もちろん返すのは難しいと思いますが、お金を借りてでも勉強する仕組みがあるのは、いいことです。アフガニスタンでは、大学卒業後に仕事を得ることが難しいです。日本はちゃんと仕事が見つかりますから、いい環境だと思います
わたしは日本語そのものが専門なので、日本で研究すること自体に意義がありました。日本語の論文を執筆できるようになりました。また、いろいろな人と出会って交流を持てたことが良かったです。日本は第二の母国になりました。タジキスタンに戻って、再び向こうの生活に慣れるのは難しいかもしれないと思っています。コウリンさんが言っていたように、あれこれを見てびっくりするかもしれません。
日本は自分の研究を客観的に見ることができる土壌があると感じています。中国・台湾にいると主観的になりますが、日本だと客観的に自分の研究を捉えられます。
Q. 日本の研究環境について、今後変わるといいと思うことを教えてください。
日本の研究環境は、これからもっと良くなっていくと思います。ひとつあるとしたら、いろいろな国・文化の研究者を招くことで、新しいアイディアが生まれる土壌になります。大学にとっても、色々な研究者を招くといいと思います。
大学院生の研究室は夜の11時まで開いていますが、部屋を朝まで開けていてほしいと感じています。わたしのように家庭を持ちながら研究をしている人もいるので、部屋が長く開いているとより柔軟に研究を続けることができます。また、奨学金の申請がもっと簡単になるといいなと思っています。
なんの不満もありません。歴史学研究において、もっと国際的な交流を持った方がいいと感じています。他の国の似たようなトピックについて、研究する人たちと交流できたらいいと思っています。
今後のプランについて教えてください

日本は発展した技術とより深く研究する機会があります。同じポジションなのか別の立場になるかわかりませんが、日本で研究を続けたいと思っています。
一時的には帰国したいと考えています。大学院を卒業するまでは、日本で研究を続けたいです。
日本で研究を続けたいと思っています。ただ将来のことは予測できないので、別の国に行く可能性もあります。自分としては、やはり日本に拠点を置きたいと思っています。
Q. 今後の夢について教えてください
続けたいことは 2つあります。自分のメインの研究であるバクテリアが、植物にどう影響するかというメカニズムを解明したいです。日本に暮らしているので、日本語をもっと上手になりたいです。そのための勉強を続けたいです。
今後研究としてやりたいことは、次の論文の「授受動詞」です。日本で続ける必要がある研究なので、日本で研究したいです。参考文献も日本にたくさんあって、タジキスタンに帰るとほぼ見つからないので困ります。
目標は日本で教職を見つけることです。今研究していることは、歴史における教育政策の変化です。次の研究は、婚姻政策です。1970年代の香港における婚姻政策は、かなり特殊な歴史があります。それらの研究を続けて博士号を取り、日本で教職を取りたいです。
3回シリーズでお届けした「研究者の外国人」はいかがでしたか。
普段なかなか聞くことのできない研究職の皆さんのお話は、興味深い内容が多かったのではないでしょうか。特に、第1回でお聞きしたお一人おひとりの研究テーマや、そのテーマを選ぶに至った経緯などは、『そんな研究をしている方がいるのか!』と、座談会の参加者の皆さんはもちろん、同行者一同も大盛り上がりでした。研究者の皆さんを一気に身近に感じられるようなお話もありました。研究でお忙しい中お話を聞かせてくださった3名の皆さん、ありがとうございました!
次号からは「介護職の外国人」シリーズが始まります。