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「地域の日本語教室、支援」についてー第3回 地域日本語教室で得たことー

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左から中国出身のエンさん、日本出身のアイシャさん、バングラデシュ出身のサロワルさん。

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第3回 地域日本語教室で得たこと

日本語教室に (かよ) った三人のみなさんにとって、地域日本語教室で学んだことが今の生活にどのように活きているのでしょうか。 (かよ) った期間や、 (かよ) ってよかったと思うことなど、話題は広がりました。そして、どんな日本語教室があったらいいか、というアイデアについても話していただきました。

 

地域日本語教室に (かよ) った期間、どんなことを学びましたか

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今は日本語を教えるボランティアとして、教室に通っているサロワルさん。
エンさん

一つの日本語教室に、5年間くらい通いました。

アイシャさん

わたしは小学1年から中学3年まで通いました。日本語はもともとできましたが、日本の文化を学ぶことができたのがすごく良かったです。家の中ではスペイン語ですし、基本的にはペルー文化ですから。

サロワルさん

同じ教室に31年も (かよ) っています。もう一つの教室も20年以上 (かよ) っています。日本語を学んだのは12~13年ぐらいです。どちらの教室もお世話になったので、今はボランティアとして教えたり、一緒に勉強したりしています。

エンさん

日本語教室では、いろいろなことを学びました。言葉や情報のほか、日本の文化を教えてもらいました。例えば、子どもの日には菖蒲湯に入ること。先生に教えてもらってから、毎年菖蒲湯を続けています。すごくいい香りだから大好きです。先生たちとも友達になって、地域にも知り合いができて、とても幸せです。

アイシャさん

日本語教室で日本語を深く学べたので、今の仕事にもつながっています。日本語をしっかり勉強できたおかげで、生徒に教えることができます。説明の難しいものも、先生の説明の仕方が勉強になっています。

サロワルさん

最初に習った日本語は、お店で買い物をするときの会話です。当時はスーパーではなく、野菜は八百屋さん、お米は米屋さんで買いますからどう言っていいのかわかりませんでした。僕は片言の英語を話していたんですね。日本語教室では英語を使ってはダメといわれていたので、苦労して日本語を覚えました。

日本語教室に通って、良かったことは何ですか。

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日本人はそばを食べるときに音を出します。おいしいという意味ですが、他の国は静かに食べます。急に音を出して、汁が飛ばないように食べるのは難しいです。と、エンさん。
サロワルさん

日本語教室と出会えなかったら、自分がここまで成長したかわからないです。日本語教室でいろいろな人と出会って、友達になって、そのつながりで結婚することになりました。そして、日本語教室がきっかけで、一発 (いっぱつ) で車の免許を取ることもできたんです。

エンさん

日本語教室はわたしにとって、大事な存在です。日本語が分からないまま来たので、何もできませんから子どももかわいそうです。日本語を勉強したら、普通の生活ができます。育児も日本と中国とでは、全然ちがいます。最初の出産のときは大変でした。二人目の出産はコロナの時期だったのでやはり大変でしたが、日本語ができましたから少しは楽でした。

アイシャさん

良かったことは、先生と出会えたことです。いろいろサポートをしていただきました。その先生と同じようなエネルギーで、生徒に教えています。生徒たちは、いつも楽しいと言ってくれます。

サロワルさん

いろいろな人と出会えたことが良かったと思っています。バングラデシュから当時一緒に来た人は、もうほとんど日本にいません。みんな帰っちゃいました。やはりメンタルの面でのサポートが必要だったのだと思います。みんなが離れ離れになったので、新しい人と出会ってメンタルを安定させることは大切なことだと思います。日本語教室と出会わなかったら、もしかしたら帰国していたかもしれません。

Q. 地域日本語教室で学んだことが、今のみなさんにどのように活きていますか。

アイシャさん

地域日本語教室で学んだことは、今の仕事につながっています。学んできたことや出会い、そして仕事を見つけたこともそうです。わたしの中ではとても効果があったと思います。

エンさん

日本で暮らす生活能力がついたことだと思います。
中国語は基本的に家庭の中だけです。子どもは外では中国語を話しません。中国語を話すのが恥ずかしいからじゃなくて、みんなが日本語を話しているから一緒に話すためです。

サロワルさん

日本語ができなかったら、仕事についていけなかったと思います。免許も取れないし、空手の指導もできません。子どもが小さいときに「お父さんは日本語ができないのに、勉強しろって言うの」と言われたことがあります。日本語ができるようになって、「お父さんも漢字ぐらいできるよ」と言えました。
今は地域のみなさんと交流できるし、どんな場面でも話せるし、知らない人ともコミュニケーションできるようになりました。日本語教室に行ったことで、自分の自信につながったんですね。

日本語教室にこうしたらいいというアイデアはありますか

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わが家の家庭料理は母が作るペルー料理か、父の作るパキスタン料理です。と、アイシャさん。
アイシャさん

仕事が終わった (あと) に行くことができる、夜の時間に日本語教室があるといいと思います。または、土日のどちらかに通えるような場所があったら、いいと思います。日曜日は教会に行く人もいるので、土曜日の方がいいかもしれません。

エンさん

わたしは主婦なので、子どもと一緒に勉強できたらいいなと思います。子どもが3歳くらいになったら連れていく教室があれば、わたしも通いたいです。

サロワルさん

僕の () っている日本語教室は、子どもが来てもいいんです。もし子どもがうるさかったら、好きな時間に帰ってもいいです。挨拶するだけでも勉強になります。
日本語教室は、言葉を勉強するだけじゃありません。いろいろな人と出会って、顔見知りになることができます。

アイシャさん

あとは、子どもだったら日本語だけじゃなく、教科も教えてもらえたらありがたいです。家族で通えるところもいいですね。お父さん、お母さんは日本語の勉強をして、子どもは科目の勉強をしたかったら同じ場所でできる。そうした場所があれば、家族が集まりますよね。

サロワルさん

日本語教室をするためには、まずは場所が必要です。教材も必要です。今は区が補助してくれていますが、それでも毎週ボランティアの人も、学習者も100円ずつ払っています。無料で貸してくれたらいいなと思います。区役所も予算がないかもしれないから、国のサポートが必要かもしれません。

あなたにとって日本語教室はどんな場でしたか

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コミュケーション力の高い三人のみなさんのおかげで、和やかな座談会になりました。
アイシャさん

安心できて、楽しい場所でした。わたしは日本生まれの日本育ちなので、日常生活のことで友達や周りの人に聞きにくいことがあります。先生には何でも聞けるので、すごく安心できるし、なんでも話せてすごく良かったです。

エンさん

日本語が分からないときは、話せないので不安ですね。日本語教室で勉強すると、安心して落ち着いて話せます。わたしは子どもがいるので、日本語ができないと子ども同士一緒に遊べないし、大変なことは多いです。日本語が話せるのと、話せないのとは全然違います。
日本語教室に行くことで、生活が変わります。ストレスも発散できます。先生にいろいろ話せるし、情報も教えてもらえて、すごく助かりました。

サロワルさん

日本語教室に行き始めたときは、週に1回土曜日だけだったんです。日本語が分からないから仕事のストレスを抱えていて、自分の中で土曜日が待ち遠しかったです。日本語教室に行ってみなさんの顔を見たら、ストレスとか全部発散できたんですね。明るい雰囲気と笑顔で迎えてくれることが、自分にとって天国みたいな場所でした。当時はルールが厳しくて、電話番号の交換や遊びに行ったりすることは禁止だったんです。それでもみんな独身だったので、毎週食事に行ったり、遊びに行ったりしていました。日本語教室がすごく楽しみの場所でした。

3回にわたって続いた「地域の日本語教室、支援について話そう」はいかがでしたか。三人、三様のきっかけで日本語教室に通っていましたが、そこで学んだことが学習者にとって言語の部分だけでなく、日本で暮らしていく自信にもなっていることがわかりました。そして、教室を通じて地域の人や地域社会とつながれることも、生活する中での安心感につながっているようです。オンラインで学ぶ場も増えていますが、こうして地域の人が集まって一緒に学べる場がこれからも続いてほしいですね。

 

12月からは新しいテーマでお届けします。