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「地域の日本語教室、支援」についてー第2回 地域日本語教室という場所についてー

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第2回 地域日本語教室という場所について
「地域の日本語教室、支援」についての座談会を3回シリーズでお届けしています。
2回目は、地域日本語教室という場所についてです。日本語教室に通った時期も、地域も違う三人のみなさんですが、教室ではそれぞれどのような時間を過ごしたのでしょうか。教室のこと、先生のこと、仲間との出会いなど、たくさん話していただきました。
日本語を教えてくれる先生は、どんな方たちでしたか

わたしを担当してくれた先生は、年配の男性はプロのような先生です。もう一人の女性の先生は仕事もされている方で、土曜日にボランティアするのは大変だなと思います。わたしのお姉さんのような存在です。先生たちは、みなさん優しいです。優しい先生じゃないと、ボランティアはできないと思います。
先生は普通のOLの方でした。最初は1対1で勉強していたんですが、いつのまにか学習者が四、五人ぐらいになり一緒に勉強しました。勉強する自分たちより、先生がいちばん頑張ってくれていると感じました。「今度の土曜日はこれを教えます」と言って、それまでに先生が一生懸命勉強してきて、真剣に教えてくれたのがすごく印象的だったんです。例えば長文だったら、みんなで読んで問題をして、そのあと一人ずつ話したりしました。
すごく明るくて、個性的な先生です。ネイルがすごくかわいくて、キラキラしてて、子どもたちが「先生かわいい」って言って先生にくっついていくような感じでした。先生はシールをたくさん持っていて毎回一つくれるので、次も行きたいなって思うんです。
わたしの教室の学習者は、サラリーマンが多かったです。日本語は話せるけれど、日本人のように話したいからと8年も続けている人がいました。すごいなと思います。普段は学習者同士の関わりはあまりなく、教室のイベントのときは一緒に話をします。みんなリラックスして、勉強の話じゃなくいろいろな話をします。楽しかったですね。
日本語ボランティア教室に参加してから、自分の世界がすごく広くなりました。たくさんの人と出会って、友達になって、バーベキューしたりお花見に行ったりしました。葛飾区では桜祭りがあるんですが、ボランティア教室のみんなでトッポキや餃子、キーマカレーなどを作ってお店を出したりもしました。
どんなサポートが特に助かりましたか

高校受験のときのサポートはとても助かりました。また、敬語も日本語の先生が教えてくれて、とてもよかったです。
必要なサポートは、時期によって変わります。子どもが小さいときは、病院に行くためのサポートが必要で、先生と会話の練習をしました。小学校に入ると今度はPTAのことなどです。日本語が出来たら日本の文化がわかるので、多くの問題が解決します。日本語教室は頼りになります。
ボランティアの先生から「あなたは頑張ればできる」という気遣いのサポートはよかったです。もう一つ、会社のサポートは大切です。19時からの教室で、残業になると参加できないです。週に1回の教室なので、その日は残業なしにしてくれるなどのサポートがあるといいです。
日本語教室は、保育園のことや疑問があったときに聞くことができるのがいいですね。情報のサポートは必要だと思います。
教える側になってからは、どこまでサポートするべきか、線引きの難しさを感じるようになりました。ただ、学習者の頃を思い出すと、地域の日本語教室なので、地域のおいしいお店とか教えてもらえたのは、とても嬉しかったです。友達と一緒に行ったりしました。
とくに必要なサポートというのはありませんが、小学校に入学するときに、日本語のレベルチェックをしてほしかったです。それだけです。
日本語教室を通じて、どんなイベントに参加しましたか

教室では日本の文化を経験する餅つきや花火、砧公園でのお花見もしました。防災訓練にも2回くらい参加し、AEDも体験しました。地域のお祭りにも参加しました。
母が日本語教室に通っていたときに、お祭りでボランティア団体の人がチョコバナナを作って販売していました。母と一緒に参加してお手伝いしたりしました。
日本語教室に参加したばかりのころは、お祭りも盆踊りも何も知らなかったんですね。浴衣を買って、他の人の踊りをまねして、一生懸命踊りました。町会にも入ったので、地域にたくさんの友達ができました。
高校では日本語のスピーチコンテストがあり、わたしは「ペルーの貧困問題」の話をしました。
わたしが通っていた教室では、スピーチコンテストのようなものはありませんでした。
葛飾区は国際交流祭りのときにスピーチコンテストをしています。一人3分の枠でスピーチをしますが、内容に感動してすごく盛り上がるんですよ。僕も出ようと思っていたら審査員になっちゃったんです。外国ルーツの審査員は僕一人です。
家族や友達との会話は日本語ですか

アイシャさん、南米の人と話すときは日本語ですか、スペイン語ですか。
もともと学校で日本語を話している人だったら日本語で話します。人によりますね。
わたしは日本語教室の他に、NPOがやっている学習支援教室に通うことが多かったです。国語や数学、科学や理科の授業があって、すごく楽しかったです。学習支援のほかに母語教室もあり、スペイン語と英語の教室もありました。わたしは大学生のときに、今度はボランティアで教える側として参加しました。勉強も教えるし、母語教室でスペイン語も教えていました。
子どもに自分の母語を教えればよかったなと、少し後悔しています。片言くらいは教えていたんですけね。
息子は中国語を話しますが、学校では全部日本語です。家族の中では、できるだけ中国語で話します。叱るときは中国語が使いやすいです。
学生のとき、学校で「スペイン語を話すな」といわれたことがあります。日本語を勉強してほしい、という先生の気持ちもわかりますが、日本語も母語もどっちも大切ですよね。
僕の家は日本語だけですね。僕ももう母語を忘れかけていて、日本語の方が上手になりましたね。
中国出身の子どもたちは、中国語をぜんぜん話したがらないです。町の中で中国語を話すと、周りの人が見るからいやだと言います。
その気持ちわかります。わたしも子どものころ、みんなと違うのが嫌で日本人になりたいと思っていた時期がありました。日本で生まれて、日本しか知らないのに……
だから私は子どもを国際教室に行かせたんです。たくさんの国の子がいて、いろいろな言葉を話すんだということを知ってもらいたいから。子どもの考えと親の考えは、違いますね。
みんなと違うのが嫌だったんですが、高校生ぐらいになると逆に自分は自分でいいなって思うようになりました。周りの考えも変わってきて、外国人ってかっこいいみたいに言われるようになりました。
日本に来たばかりの外国人にとって、日本語教室は居場所にもなっていることが三人の話からわかります。いろいろな経験や質問ができる場所、そして、そこで勉強する学習者同士の交流も生まれます。イベントを通して日本の文化にも触れることができ、とにかく楽しい場所だといいます。
3回目は「地域日本語教室で得たこと」について、話していただきます。
── 次号へ続く