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料理店の外国人の座談会 ー第2回 開店の準備についてー

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第1回はコチラから第2回 開店の準備について
料理店の外国人の座談会を3回シリーズでお届けしています。
2回目は「開店の準備について」です。日本で初めてお店をもつことになった三人。初めは手探りだった部分もあったといいます。
どんなお店にするのか、多くの人にお店に来てもらうにはどうしたらいいのか、など、開店までに準備をしなければならないことはいろいろあります。三人に振り返って話していただきました。
開店準備で特に大変だったことは何ですか

やはり物件探しと内装工事は大変でしたね。やったことがないから、どこに頼んだらいいのかわからなくて…結構自分たちでやりました。
確かに、内装工事は大変でしたね。頼んだ会社が経験不足で、苦労しました。
オープンした後にも突然停電するとか、換気がうまくいかないとか…またお金をかけてやり直したんです。
わたしの場合、(大変だったことは)そんなになかったんです。やっぱり周りの人たちが色々助けてくれました。内装についても自分の仕事関係の人がやってくれて、その人もすごく話しやすい人で、会ってすぐに「俺がやるよ」と言ってくれて、何も問題はなかったですね。
Q. お店を知ってもらうために、どんなことをしましたか
特に何もしていません。開店してすぐに『タモリ倶楽部』の番組でタモリさんが来ました。
その後、映画やテレビ番組の撮影などで、いろいろな人たちが来てくれました。エチオピア料理が珍しいからだと思います。今は店のFacebookのページやホームページなどもできました。
うちも宣伝のようなことは、まったくしていないですね。モンゴルの人たちが来てくれて、クチコミで広がっていきました。今は食べログに載せたり、Facebookをやっています。最初、店は母がやっていたので、日本語もわからないでよくやっていたと思います。母はモンゴルの人しか来ないと思っていたと思います。
うちはオープン前にチラシを配りました。その後はまったく宣伝していません。
地域のイベントに参加したりしていくうちに、お客様のクチコミで広がりました。食べログに書いてくれているお客様もいます。
みなさんのお店は、どんなお客さんが多いですか

うちのお客さんは、80%が日本人です。その他だと、中国の人も多いし、欧米系の人も来ます。最近両国は観光地でもあるので、いろいろな国の人が来ます。文化的に羊肉を食べる人たちだと思います。「ハラールですか」と聞かれることもあります。うちはハラールの肉を使っているので安心するのだと思います。
日本人が70%くらいです。テレビで見たという人が多く、けっこういます。テレビで見たコース料理を食べてみたいという人がいたり、ベジタリアンメニューもあるのでアメリカやヨーロッパの人も来ます。合わせて90%くらい。エチオピアの人が約5%で、その他のアフリカの人が5%くらいという比率だと思います。
コロナ前は90%が日本人のお客様で、コロナ後は6対4で中国の人が4割くらいになりました。
ランチは近所で働いている人が多いので日本人が多く、夜は中国のお客様が多いでしょうか。もちろん日によって違いますが。
Q. 日本でお店を開くからと準備したものはありますか
日本人と中国人それぞれのお客様に向けたメニューを用意しました。
日本人向けのメニューには、よく知られている人気の中国料理を中心に載せています。中国人向けのメニューは本場の本格的な中国の料理が中心です。そのうちのいくつかは日本人向けのメニューにも載せています。
エチオピアは手で食べるんですけど、日本にはその文化はありませんから、箸やフォーク、スプーン、おしぼりはセットにして用意しています。
モンゴルでは、レストランで水は出さないです。わたしの店もおしぼりは出しますが、水は出しません。頼まれたら出します。定食屋じゃないからです。
ランチの時は最初からお茶がついています。
わたしの店も同じです。レストラン&バーだから、水は頼まれたら出しますが、基本的には出しません。
メニュー作りで心がけたことはありますか

料理は日本人に合わせるのではなく、できるだけ本当のモンゴルの味を出したいと思っています。これが本当のモンゴルですよ、という感じで。
エチオピア人は辛いものが好きなので、料理は辛いものばっかりなんです。なので、日本人が食べられるように辛さを調整したりしています。
主食のインジェラは発酵させて作るんですが、エチオピアの穀物だけで作ると酸味が強くなります。日本人が食べやすいように日本の穀物と混ぜて作っています。少し日本人に寄せて、口に合うようにしています。
先ほど少し話しましたが、うちは日本人と中国人それぞれのお客様に向けた2種類のメニューを用意しています。
中国人のお客様向けのメニューは、中国のお母さんが家で作るような料理が中心です。毎日の仕入れ状況を見て手書きのメニューを作っています。中国の食材、野菜などの仕入れも高いので、どうしても値段が上がってしまうんです。それでも食べたいというお客様がいるので、裏メニューとして提供しています。日本人の方でも、よく中国へ行く方で、「食べたい」という方には案内したりします。
あとは、料理の量も少し調整しましたね。
最初は一品一品の量が多かったんです。モンゴルの人や力士の人たちは喜ぶんですけど、それだと、普通の日本人が食べきれないんですよ。だから今はだいぶ小さめにしています。日本人はやっぱりいろいろなものを少しずつ食べるという感じですよね。
エチオピアも同じです。今日の料理はこれ、といってドーンと出てきたら、それをみんなで食べます。多めに出るので、食べ残しもけっこうあります。
中国はいろいろな料理を取り分けて食べるので、日本と近いですね。
料理の値段などはどのようにして決めましたか

最初はわたしが決めました。周りの店との競争が激しくて、やっぱり大変でした。
その後、周りのお店を見て値段設定をしました。コース料理は予算に合わせて、お客様の希望を聞いて出しています。高級なものから、700円の定食まで、どんなお客様でも来られるように、幅広い設定にしています。
最初はワンコインバーのような感じで、ランチもワイコインにしたらとてもわかりやすいと思ったんです。オープンして知り合いがたくさん来てくれたんですが、「これでは安すぎる」「商売にならない」と言って、アドバイスをくれました。
エチオピアの人たちも、自分で材料を揃えて作るよりも食べに来た方が安いと言って、食べに来てくれます。
Q. お店をオープンする前と後で何か変えたところはありますか
店を始めたころと現在とで、大きく変わったことはランチを始めたことです。従業員を三人確保できたのでランチを始めましたが、今後は店を閉めないでフルタイムで開けようかと思っています。従業員は人からの紹介ですが、モンゴル人、中国人、日本人もいます。
以前は家族だけで店をしていました。今はお客さんで働きたいという人がいたり、同じエチオピア人など三、四人のスタッフがいます。
三人のお話だけでも、お店を開店するまでにさまざまな準備が必要であることがわかります。
メニュー、料理の値段、スタッフの人数や広報など決めなければいけないことが多いのはもちろん、他店との競争やお客さんのニーズに合わせて調整していくことも必要となります。今では三人のお店は人気店ですが、そうなるまでの苦労もお話の中から少し見えました。
次回は「料理店の人の日常」について伺います。
── 次号へ続く
三人のお店
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百宴香(ヨウさんのお店)
TEL:03-5619-1082
営業時間:11:30~15:00 / 17:00~23:00
住所:東京都墨田区太平4-2-1
https://maps.app.goo.gl/dnscbSnUCEvx7raL6
- リトルエチオピアレストランバー(エフレムさんのお店)
TEL:03-6323-3983
営業時間:[火~金]11:00~14:00 / 17:00~23:00
[土日祝]17:00~23:00
住所:東京都葛飾区東四つ木3丁目23-6
https://maps.app.goo.gl/2zaaB9ATtgK6hbHw6
- モンゴル料理 ウランバートル(ウヌルさんのお店)
TEL:050-5600-4444
営業時間:11:30〜14:30 (L.O.14:00)
17:30〜22:00(L.O.21:30)
住所:東京都墨田区両国3-22-11 2F