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料理店の外国人の座談会 ー第3回 料理店の人の日常についてー

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左からエチオピア出身のエフレムさん、モンゴル出身のウヌルさん、中国出身のヨウさん。

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第1回はコチラから

第3回 料理店の人の日常について

料理店の外国人の座談会、3回シリーズの最終回では「料理店の人の日常」について話していただきました。
料理店は開店までの料理準備や、閉店してからの片付けなどがあるので、一日のほとんどを店で過ごすのではないでしょうか。コロナ禍で生活の変化もあったことと思います。
いつも忙しく働いている三人に、お店の営業日や休日の過ごし方について、お話しいただきました。

 

お店の営業時間について

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「レストラン以外にも事業をしているので、毎日がとにかく忙しい」とウヌルさん。
ヨウさん

百宴香 (ももえんか) 」はコロナ前より営業時間を短くしました。ランチは11時半~14時半(ラストオーダー)で15時には休憩に入ります。夜の営業時間は17時~22時(ラストオーダー)で、23時には閉めます。以前は閉店時間を過ぎてもお客さんを入れていましたが、今ははっきり言うようにしています。

エフレムさん

「リトルエチオピア」も同じです。コロナ禍になってからはランチを中心にして、夜は17時~22時までにしました。

ウヌルさん

「ウランバートル」は11時半~14時までがランチで、夜は17時半~22時までです。コロナ前までは23時まで営業していました。ランチを始めたのが2年ほど前です。

Q. 朝は何時にお店に行きますか。

ウヌルさん

前の日に全部掃除をして帰りますから、当日はすぐにでもお店を開けられます。朝はお米を炊くくらいなので、開店の30分くらい前に行きます。別の所に料理を作る場所があって、店では最終的に揚げるとか焼くとかして出すので、そんなに準備をしなくても大丈夫です。

ヨウさん

うちは9時に店に入ります。注文がたくさん入っているときは、主人が6時半ごろに店に行きます。家が近いんです。店は3人でしているので、早く出勤したときは主人に早めに休憩に入ってもらうなどして対応しています。

エフレムさん

開店の何時間か前には入ります。エチオピアの主食であるインジェラは発酵させて作るものなので、準備が必要です。例えば今日出すものは、1週間前から準備をしたものです。お客さんが来ても来なくても作らなくてはならないのです。作り置きができないので、今日の分だけを作ります。

休日は何をしていますか

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「以前は夜の1時でも2時でも遊びたい人が多く町はにぎやかでしたが、コロナ禍を経て、いろいろ変わりました」とヨウさん。
ウヌルさん

店は365日開けていて、お正月も営業しています。なぜかというと、会社が休みだからモンゴル人は東京に遊びに来るんですよ。年末年始は開いている店が少ないので、うちに来るんですね。モンゴル人が多いですが、日本人も来ます。お正月は忙しいです。お正月に出勤した人は他の () に休むなど、交代で休みが取れます。
わたし自身は、何年も休んでいないです。趣味のスノーボードもゴルフもやっていないです。

エフレムさん

年末のカウントダウンというのは朝までやっています。他の (みせ) が休むときは、うちの店は営業します。みなさんが集まりますから、働きます。店は奥さんがメインでしているので、週に1回、月曜日が休みです。わたしは会社員なので、月曜日から金曜日は会社で、土日になると店の手伝いをしています。休みはないですね、土日は忙しいです。

ヨウさん

うちは木曜日が定休日です。テイクアウトが多くなるときなどは、休みの木曜日に作ったりするので、休みがなくなることもあります。用事がないときは、ゆっくり寝たりとか、温泉に行ったりとか、近所で食事をしたりもします。

エフレムさん

日本に来て18年間、まだ一度も国に帰っていないです。いろいろな問題があり、政権が代わって今は国に帰れない状態です。家族が日本に来ることはできるので、会うことはできます。

ヨウさん

今年は2回くらい国に帰る予定です。コロナのときは帰っていませんが、以前は1年に1回は必ず帰っていました。店を閉めて、10日間くらい帰ります。

ウヌルさん

毎年帰っています。1年に1回のときもあれば、何回か帰るときもあります。従業員にお店を任せられるので、1か月くらい帰ります。
店のメニューは増やしていこうと思っています。モンゴル料理じゃないけど、中華風に串焼きなども入れてみようかなど、いろいろ考えています。

日本に来たばかりのとき、母国の料理を食べたいと思いましたか

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会社員でもあるエフレムさんは、店の手伝いを土日にするので休みがないといいます。
ヨウさん、エフレムさん

はい、母国の料理が食べたいと思いました。

ウヌルさん

日本の料理がおいしくて、モンゴル料理を食べたいと思わなかったです。

エフレムさん

最初は知っている人もいなかったので、とても寂しかったです。
食事に関しても、日本とエチオピアはまったく違うんです。アフリカは大きいお皿にドーンと出てきて、みんなで食べます。お箸の使い方も全然知らなかったし、小さい入れ物にいろいろな料理が並んでいるものを食べるということもなかったです。料理が個人に分けられていることもなかったです。
最初のころはエチオピアの材料を持っている人のところで食べました。

ヨウさん

材料があれば主人は (なん) でも作れます。前は手に入りにくかったですが、今は中国の野菜がほとんどあります。コロナのときに中国人が日本に大きい農場を借りて、中国の野菜を作り始めました。日本は野菜の種類が少ないので、中国の野菜を1週間 (しゅうかん) に5~6種類くらい仕入れて中国人に料理を提供しています。コロナのころは中国の野菜や果物、たとえばライチなども手に入れるのはすごく難しかったです。

Q. コロナ禍はどのように乗り切りましたか

ヨウさん

コロナのときは、最初お店が潰れるんじゃないかと思って、不動産屋にもそのように伝えました。でも、すぐにはやめられず、「まずは6か月頑張ってみてください」と言われたので、おかずや点心のテイクアウトメニューを始めました。店内で出している裏メニューとはまた別に、中国の季節の料理を出していました。うちの娘もそうですが、日本で育った子どもたちにも中国の文化を知ってほしいと思ったのがきっかけです。すごく人気だったんですが、主人は持病があるので、その後2年間は完全にお店を閉めていました。

エフレムさん

コロナの時期もコース料理でやり続けていましたが、休みにした日も多かったです。夜の営業だけ、要請を守りながら週に何回かやっていました。コロナの時期にお客さんが離れてしまうと、戻ってきてもらうのも大変かなと思ったので。自分も子どもがいて、不安な気持ちもあるので、お客さんの人数を決めたりしていました。

ウヌルさん

コロナ禍になってすぐ、肉や、店で普段使っている材料をボウズ(餃子のようなもの)や小籠包などにして、ネット販売を始めました。すぐネット販売に切り替えられたのは、もともとオリンピックの準備で製造する機械などを準備していたからなんです。オリンピックでモンゴルの選手やスタッフの食事をうちで用意することになっていたので。

ヨウさん

コロナ禍で生活習慣が変わり、お客さまも変わってきました。在宅勤務が増えたこともあるのでしょう。ランチは以前の1/3くらいのお客様です。食事のときにお酒を飲まない人も多くなりました。

日本と母国とで、人気のメニューは同じですか

座談会のために、ヨウさんのご主人が早くから手づくりの点心を用意してくれました。
エフレムさんも羊肉が大好きだそうで、ウヌルさんと羊肉のことで楽しそうに話していました。
ヨウさん

同じではないですね。中国のお客さまは、本場の中国メニューは高くてもオーダーします。自分で作ると材料代などでもっと高くなると思うと、ここで食べます。中国と日本のお客様の両方に人気なのは、上海ワンタンです。上海のソウルフードで、朝でも、昼でも食べるし、みんなが食べます。中国の留学生が来たら、必ず頼みます。
それから、薬膳鍋が人気です。何種類もの薬草が入っていて、味のおいしさだけじゃなく、「翌日の化粧ノリがいい」とか、「1週間元気です」など、食べた人からコメントをいただきます。

エフレムさん

やはり人気のメニューはちょっと違います。エチオピアの料理は大きいプレートに盛って、みんなで食べます。テレビの撮影のために、インジェラの上に数種類のおかずを盛ったマヒベラウィを作ったんです。エチオピア料理を一度に食べられるので、テレビを見た人たちが同じ料理を頼みたいといって人気が出ました。今ではマヒべラウィがメインです。

ウヌルさん

日本とモンゴルでは人気のメニューは違います。モンゴルでは、レストランで塩茹での肉はほとんどありません。家でしか食べないものなんです。 でも、店で羊肉の茹でたものを出したら、一番の人気メニューになりました。逆にモンゴル人は茹でた肉は頼みません。ボウズといって餃子みたいなものを頼みます。面白いですね。

Q.これから店に食べに来てくれる人に、メッセージはありますか

ヨウさん

お客様の喜びは、わたしたちの喜びです。

エフレムさん

日本の人は、わからないことを知りたい、食べ物でもなんでもチャレンジしますよね。とてもいいことだと思います。エチオピア料理にチャレンジしたい人がいたら、ぜひ来てください。

ウヌルさん

モンゴル料理は想像もつかない料理だと思います。1回食べてみないとわからないと、勇気を振り絞って食べに来てくれる日本のお客様たちに感謝しています。

料理店の外国人の座談会はいかがでしたか。
東京には世界の料理が食べられるたくさんのお店があり、そこではさまざまな国の方々 (かたがた) が働いています。三人のお話をとおして、お店で働くみなさんのことが、少し身近に感じられたのではないでしょうか。
訪れたことのない国でも、お店の料理や店員さんを通してその国の文化に少し触れることができます。行ったことのある国ならば、懐かしさを感じるかもしれません。そうして時には料理店に非日常を感じに行くのもいいかもしれません。

ヨウさんの「百宴香 (ももえんか) 」と、ウヌルさん「ウランバートル」は、営業時間内でしたらいつ行っても大丈夫だそうです。エフレムさんの「リトルエチオピア」は、グループですと予約してもらった方がいいとのことでした。

 

 

三人のお店

 

  • リトルエチオピアレストランバー(エフレムさんのお店)リトルエチオピア

    TEL:03-6323-3983
    営業時間:[ () ~金]11:0014:00 / 17:0023:00 
           [土日祝]17:0023:00
    住所:東京都葛飾区東四つ木3丁目23-6
    https://maps.app.goo.gl/2zaaB9ATtgK6hbHw6

 

  • モンゴル料理 ウランバートル(ウヌルさんのお店)ウランバートル
    TEL:050-5600-4444
    営業時間:11:3014:30 L.O.14:00)
          17:3022:00L.O.21:30
    住所:東京都墨田区両国 (りょうごく) 3-22-11 2F

    https://maps.app.goo.gl/LS3bK7ZmShAPTgUm7