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「仕事と休日」について ー第2回 職場についてー ~インドネシア、中国、ペルー出身者が語る~

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左から中国出身のてぃなさん、インドネシア出身のリズキーさん、ペルー出身のディエゴさん。

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第1回はコチラから

第2回 職場について

仕事と休日について、3回シリーズお届けしています。2回目は、職場について話します。働き始めて驚いたことや、昼休みの時間や過ごし方、残業や福利厚生、副業についてなど、話題はどんどん広がりました。各国の違いや日本との違いも見えてきます。

 

日本で働き始めて驚いたこと

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電車通勤に驚いたという、ディエゴさん。
リズキーさん

初めて社会人として働いたのが、京都の鴨川のすぐ近くでした。きれいな景色が隣に広がっているのに、壁ばかり見ながら仕事をするのが社会人なのかと思って驚きました。
また、インドネシアや留学したマレーシアでは、病気になってお医者さんの診断書があれば有休を使わなくてもいいです。日本ではそれがダメで、病気になったら有休を使って休み、有休がなければ欠席になることに驚きました。

ディエゴさん

日本は休憩時間が1時間と決まっていますが、ペルーはもっとアバウトです。1日の仕事を時間内に終わらせることができれば、長く休憩しても大丈夫です。例えば、みんなで食事に行って1時間半とか休むこともあります。

てぃなさん

入社当時にすごく驚いたことは、昼ご飯を食べるメンバーが暗黙の了解で決まっていたことです。新入社員で同期で、場所もなんとなく決められていて、毎日そこで食べている。なんで同期だからといって、毎日一緒にご飯を食べなきゃいけないのかと思いました。当時はすごいカルチャーショックでした。

リズキーさん

そういうことは、ありますね。
休みのことで、もう一つ驚いたことがあります。日本では10時出社なら、1 (ぷん) でも遅くなれば遅刻になります。僕はたばこを吸いませんが、たばこを吸う人が何回も喫煙所に行くのは合法です。なぜだろうと思います(※)。
(※そのことは日本でも新聞記事になっています)

ディエゴさん

それから、通勤に電車を使うことにもびっくりしました。ペルーでは車かタクシーで行きます。1時間タクシーを使って仕事場に行くことも普通にあります。タクシーは高くありません。

リズキーさん

ペルーにはバイクタクシーはありますか。

ディエゴさん

あります。都心から離れたところだと、バイクタクシーはもっと安いと思います。

てぃなさん

中国だとバイクタクシーで () ったり、疲れているからタクシーで () ったり、家族の車に乗せてもらって () ったりとか、毎日好きなように通勤していると思うんです。日本ではそれがあり得なくて、しっかりルールが決められています。ケガをしたら労災はどうなるのかも含めて理由があるからだと思いますが、自分も含め皆さん決められた枠の中で毎日走っていると感じています。

働く時間と昼休みについて

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中国の昼休みの時間は日本より長く、食事のあとは昼寝をすると、てぃなさん。
てぃなさん

今はフレックス勤務で働いていて、9時15分から17時30分で、1時間の昼休憩です。多少残業しています。中国は日本よりスタートが早く8時ごろで、昼休憩が長く2時間ぐらいです。昼ご飯を食べたら、昼寝をします。終了時間は日本と同じくらいで17時30分とか18時です。

ディエゴさん

勤務時間は世界的に8時間だと思いますが、ペルーでは昼休憩が1時間30分~2時間とか3時間の所もあります。ペルーは治安があまりよくないので、親が子どもの学校の送り迎えをします。子どもが一人で家に帰るということはありません。親は昼休憩のときに学校に子どもを迎えに行き、お昼を一緒に食べて、また会社に戻ります。企業や職種にもよりますが、自分の仕事のノルマが終わらない場合は、土曜日に出て半日働いたりもするようです。

リズキーさん

今の会社はITの仕事で10時スタートですが、フレックス勤務なので8時から仕事を始めることもできます。終了時間もちゃんと終わります。
インドネシアも基本の勤務時間は決まっていますが、昼休みが1時間から2時間に伸びたとしても大丈夫ですし、子どものいる人が仕事中に学校に迎えに行って会社に連れてくることもあります。バイク通勤の人が「雨が降りそうだから少し早く帰らせてください」ということも、みんなが許して「急いで帰りなよ!」と笑顔で送り出してくれます。

ディエゴさん

海外だとケースバイケースで対応することが多いと思いますが、日本はみんなが同じように働く国だから、ケースバイケースの対応で問題が起こるリスクがあるなら避けたいと思うので、難しいのかもしれませんね。

てぃなさん

これを許しちゃったら、こっちでも許さなきゃいけないとかですね。

Q.昼休みは何を食べますか。

ディエゴさん

自炊が多いです。昼に食べ過ぎると眠くなってしまうので、朝たくさん食べて昼はライトミールで済ますこともあります。上司や同僚とリラックスして話したいときには食事に誘うこともあります。

てぃなさん

大体決まったものをローテーションで食べることが多いです。会社に社員食堂はありますが混みますし、 (ほか) にランチの選択肢が多いのであまり使っていません。

リズキーさん

在宅勤務なので、家にあるものを食べることが多いです。たまに外に食べに行ったり…でも、リモートの時に外で食べると1,000円のランチもちょっと高く感じます。出社している時はあまり気にならないんですが。(笑)

残業や副業はありますか

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「インドネシアは許してくれる文化があるので、待ち合わせしても遅刻することが多いです。ジャカルタは交通渋滞がすごいので、時間どおりに行けないということもあります」と、リズキーさん。
てぃなさん

残業している人の方が頑張っている、という昔の日本の文化からは変わり始めたころに入社したと思います。今は残業も何十時間を絶対に越えないようにと、毎日のように社内で教育されています。残業した分はきちんとつけるとか、残業が多い人は業務改善すべきと言われます。残業は基本的にはよくないというのが、普及していると思います。

ディエゴさん

できれば残業はないほうがいいと思います。コロナのときに残業はありませんでしたが、これから残業がありそうな感じです。

リズキーさん

前職のデザインの会社では、残業が普通でした。仕事が終わっていないというだけで、残業しているという感覚はありませんでした。今はITの会社なので、残業はほとんどありません。

てぃなさん

残業は業種によると思います。中国で流行っている言葉に996と007があります。朝9時から (よる) 9時まで週6 () (かん) 働くという意味です。007が究極で、0時から0時まで週7日間 (かかん) 働くというので、永遠に仕事をしているという意味です。ITで有名な企業などではいわれているようです。

副業は皆さんの会社や国ではどうですか

てぃなさん

わたしの会社は副業禁止だから、最近は様子を見ている状況だと思います。
中国は副業禁止とは聞いたことがありません。むしろ、副業を持っておいた方がもっと幸せに働けるみたいな考えがあります。もちろん会社が副業を勧めるというのはないと思います。

ディエゴさん

ペルーでは月末まで生活費が足りなくなる人たちは、けっこう副業をしていると思います。現金でもらうことがあるので、月収など (おもて) に出ているよりももっと収入はあると思います。

リズキーさん

副業はダメという会社はあると思いますが、インドネシアは公務員も副業をしています。なぜなら給料がとても低いので、副業しないと足りないという人が多いです。ファッションの好きな人がネックレスを手作りして、インスタグラムで販売をする人もいます。

ビジネスマナーや福利厚生について

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日本の会社は健全という、てぃなさん。英語教育を増やせば子どもたちの視野がもっと広がるとディエゴさん。日本は信頼できる会社になるためにマナーなども決められているとリズキ―さん。
リズキーさん

日本のビジネスマナーは決まりが多くてびっくりしましたし、多いからこそ少し緊張します。たとえば名刺を出すとき、ちゃんとマナー通りにできたかどうか今でも緊張します。

ディエゴさん

慣れるまでは少し堅苦しいけど、回数を重ねていけば自然に大丈夫になります。

リズキーさん

インドネシアの友人に聞いても、名刺を出すことが減っているようです。連絡先の交換はwhat's upですることも多いそうです。

てぃなさん

連絡先の交換が目的なので、最近だとスマホですぐにQRコードをスキャンしたりできるから、海外では名刺文化というのは少なくなってきているんじゃないですか。

ディエゴさん

海外だとどの立場でもみなさんとラフにフレンドリーに話せばいいんですが、日本人が名刺交換するのは相手の (かた) のポジションに合わせて話すからじゃないでしょうか。尊敬語とか謙譲語で話さないといけないから。

リズキーさん・てぃなさん

確かにそうかもしれませんね。

Q. 日本の会社の福利厚生についてはどう思いますか

てぃなさん

日本は福利厚生の制度は充実していると思うんですが、改善の余地はまだまだあると思います。社会全体でいわれる問題について、企業まで政策を落とし込めていないところがあります。子育てや介護で時短を使う社員もたくさんいるなかで、時短の社員には大事な仕事は任せられないということがあります。理由はあるかと思いますがもう少し改善できるかなと思います。
また、周りや社会からの見られ方を気にしてか、今ある制度も使い切れていない人が多いようにも感じます。

リズキーさん

日本の福利厚生の中に宿泊が割引になるというようなサービスがありますが、宿泊のサービスは泊まらなければ無駄になります。インドネシアだったらそうしたサポートのお金を、出産のときや病気のときに会社がボーナスや休暇というような形でもらえるほうが喜ばれると思いますね。

職場についてのテーマはいかがでしたか。日本人が当たり前だと思っていることに疑問や驚きを感じていたり、もっとこうしたらいいのでは、といった意見も聞くことができました。次回は休日について話していただきます。

── 次号へ続く