多文化クロストーク
「仕事と休日」について ー第1回 仕事についてー ~インドネシア、中国、ペルー出身者が語る~

3人のプロフィール
リズキーさん(インドネシア出身)
- 在住年数
- 10年
- 母語
- インドネシア語
- 好きな日本語
- 響
- 東京で好きな場所
- 浜離宮、明治神宮
- 好きな食べ物
- 寿司、生麩
- お国での仕事
- 建築アシスタント
- 日本での仕事
- デザイナー(UI/UX、アプリ開発&Web、グラフィックなど)
てぃなさん(中国出身)
- 在住年数
- 15年
- 母語
- 中国語
- 好きな日本語
- クッション言葉(「恐れ入りますが」「僭越ながら」「あいにく」「ご多忙のところお手数をおかけしますが」「心苦しいですか」「差し支えなければ」)
- 東京で好きな場所
- 墨田区、代官山~中目黒
- 好きな食べ物
- 辛い料理
- お国での仕事
- 経験なし
- 日本での仕事
- 商社営業
ディエゴさん(ペルー出身)
- 在住年数
- 14年
- 母語
- スペイン語
- 好きな日本語
- 以心伝心
- 東京で好きな場所
- 渋谷
- 好きな食べ物
- 馬刺し
- お国での仕事
- 経験なし
- 日本での仕事
- 会社員(接客販売)
第1回 仕事について
仕事と休日について、3回シリーズでお届けします。今月は仕事について話します。日本に住み、日本の会社で働く外国人が増えるなかで、彼らはどんなことを感じているのでしょうか。3人が日本で働くことになったきっかけから、仕事の見つけ方、日本社会で働く難しさややりがいなどについて、話していただきました。
日本に来たきっかけ、今の仕事を始めたきっかけ

大学で何を専門にしたいかを、自分でもあまりわかっていませんでした。外国語を勉強したら就職しやすいと思って、日本語学科に入りました。それが日本との最初の出合いです。大学3年生のときに交換留学の機会があり、1年間日本に住んでみたら、文化や考え方などが自分と相性がいいと感じました。もう少し日本にいたいと思ったので、日本の大学院に入るために再び来日し、そのまま就職、以来日本の生活は15年目になります。
大学生のときにお父さんの会社が大変になり、中退して日本に来ました。日本語が分からないまま来て、日本語を独学で勉強しながら、アルバイトをしたりしました。ペルーに戻ったときに、祖父母からも「頑張りましたね」と言われました。頑張れば成功できる、日本に来てよかったと思いました。
高校生のころから、世界は広いのにずっとインドネシアにいるのは嫌だと思っていました。海外に行きたい、海外で働きたいと思っていたので、大学は隣国のマレーシアへ行きました。卒業後はインドネシアに戻り、次はドイツへ行きたいとドイツ語を学びながら建築のアシスタントとして働いていました。日本の大学院の奨学金が出る機会があったのでトライをしたら、無事に合格できたので日本に来ました。卒業後は「日本語がうまくなるまで働こう」くらいに思っていたんですが、気づけば日本に来て10年になっていました。
大学院生のときに、日本で就職活動をしました。そのころは自己分析もあまりできていなくて、色々受けてみましたが、まずは商社に就職してみようと思いました。転職がしやすいと思ったのも理由の一つです。結局は内定をもらった今の商社で、営業として働いています。わたし自身いろいろなことにチャレンジしたいタイプだということが、だんだん分かってきました。結果として、商社のように多くの業界や職種があるところが、自分には合っていると思っています。現在もさまざまな方といろいろな仕事をしています。
自分の出来てないスキルを身に付けたいので、最初は色々なタイプの仕事をしてきました。 日本語があまり話せなかった時は作業系の仕事やドライバーが中心でしたが、話せるようになってからは接客の仕事をしています。わたしにとって仕事だけでなくいい人間関係を作ることはとても重要です。今の職場は働きやすい環境です。
学生時代に建築の勉強をしていたので、大学院卒業後はまず建築事務所で働いていました。その後、広い意味での「デザイン」という視点からUI/UXやアプリなどのデザイナーに転身しました。
みなさんの国の就職活動について

中国は9月が新学期で卒業は6月なので、大学4年生の9月から就職活動をすると聞いています。日本のように大学3年生からスタートすることはありません。
インドネシアは基本的に大学を卒業してからでないと、就職の申請ができません。就職説明会のようなものはないですね。大学を卒業してもまだ仕事がないといって、親から早く仕事を見つけなさいというパターンと、まだ働きたくないから1つだけ単位を残して卒業をしないというlazyな人たちもいます。インターンシップのような考え方はあるかもしれませんが、少ないですね。
ペルーは4月から新学期が始まり、大学は5年間です。就職活動は大学3年や4年生のころで、インターンシップもできますが給料はすごく安くて、雑務が多いです。いい関係が築けたら就職できることがあります。また、家族のネットワークや友だちの紹介で入る人もいます。学校の成績よりもコネがないと、外資企業などのトップ企業に入ることはできません。
わたしは日本で就職活動をしたんですが、日本の会社説明会などには「服装自由」って書いてあるのに、そうなっていませんよね。今でも謎です。あまり変な服装は失礼にあたりますが、社会で服装を限定している風潮があるように感じます。企業としてその人を知りたいのであれば、そうした風潮はない方がいいと思います。
街中でスーツの学生たちを見ると、今年もその時期がきたんだな、と思います。(笑)
わたしも就職活動をする前に日本人の友達とスーツを買いに行った時、ネイビーのものを選ぼうとしたら「やめた方がいい、黒にした方がいいよ」と言われました。黒だと就職後にあまり使えないと思って、わたしはネイビーを選びました。
友達に聞いたんですが、中国では就職活動の際、普段よりはフォーマルな服装で行くそうです。でも、世界中で日本よりフォーマルな国はないんじゃないかと思いますね。他の国の人たちも、自分たちではフォーマルだと思っているんですけどね。
ペルーも同じで、普段よりフォーマルな服装で行きます。ドラマなどの影響か、欧米系の人に合わせた服装の人が多いです。
インドネシアも服装は決まってはいませんが、ドレスコードぐらいはあります。暑い国なのでスーツじゃなくてもシャツを着て行く。丁寧な服装の方がいいですよね。
転職や起業について

中国では終身雇用は、公務員と国営企業以外ほとんどないですね。それらも終身雇用というよりは、長期雇用という感じです。
ペルーは日本と同じで、1つの会社で長く働きたいと思っている人が多いです。自由にしたい人はいろいろ転職をしますが、ハイスペックの人たちはその方が向いていると思います。
インドネシアでは公務員はもちろん長く働きますが、それ以外の人たちは転職する人も多いと思います。ライフワークバランスを大切にしているからです。宗教の影響があるかもしれませんが、高い給料を目指すよりは、時間を家族のために使うという考え方があります。あとは、インドネシアは親と同じ仕事に就く人が多いです。お父さんが医者だったら医者に、公務員だったら公務員に。
Q. 起業を考えたことはありますか。
わたしは以前、起業したことがあります。
わたしは今の会社で学びながら、起業しようかと思っています。今の会社の主な市場は日本ですが、クライアントが外国人だったら、チャンスは増えると思いますね。
わたし自身に限っては、今は思っていないです。でも、今まで一度も起業しようと考えたことがないわけではありません。
日本社会で働く中での難しさ、やりがい

日本社会の中で仕事をするためには、考え方を変えなければいけないと思いました。日本人と話すときは日本の文化を尊重し、英語圏の人と話すときはその方の文化を尊重するようにしています。そうでないといい関係を作ることができないです。相手の文化に合わせることを、わたしは楽しいと思っています。空気を読む、とかね。(笑)
私もその国の文化を楽しめるタイプです。 ただ、仕事の中で外国人の壁を感じるときなど、難しさは感じます。社内でアイデアを認められても、最終的に日本のやり方にしたほうがいいとクライアントや上司が判断する、ということが前の職場でありました。外国人の僕にはチャンスがあまりもらえなくて、キャリアにならないと感じて転職しました。
逆に、外国人の私たちだからできることもあると思うんです。例えば、日本で働く外国人は今後さらに増えると思いますが、同じ立場だからこそわかること、教えられることがあると思います。
そうですね。私も外国人である分、海外の取引先とやり取りする際に文化の違いを想定したり理解したりしやすいので、スムーズに進みますね。
外国のクライアントは任せてもらえることが多いです。そういう時に役に立てるのは嬉しいですね。ただ僕の場合、顔を見ただけだと日本人と間違えられることもあるんですけど。(笑)
「仕事」についてのテーマ、いかがでしたか。努力すればチャンスがもらえると身をもって感じたお話、仕事の中で壁を感じたこと、外国人だからできると感じることなど、日本社会で働く3人からいろいろな話を聞くことができました。次回は「職場」について話していただきます。
── 次号へ続く