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「衣食住」について ー第2回 食についてー ~ミャンマー、アメリカ、フィリピン出身者が語る~

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左から、アメリカ出身のミオさん、フィリピン出身のヒキシマさん、ミャンマー出身のリンさん

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第1回はコチラから

第2回 食について

衣食住について、3回シリーズでお届けしています。2回目は「食」についてです。日本在住のみなさんは、和食と母国の料理とどちらを多く作っているでしょうか。食についての話題は話が弾み、たくさん話していただきました。

 

初めての和食は何を食べましたか

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初めての来日は高校生のとき。愛知県半田市のホストファミリーの家で過ごした、とミオさん
ヒキシマさん

日本に来て初めて食べたのは、天丼です。とてもおいしくて、残さず食べました。フィリピンには天丼のようなものはありません。

リンさん

和食のお店で鯖の塩焼きを初めて食べました。すごくおいしかったです。14年経った今でもその味を覚えています。

ミオさん

最初に食べたものは、忘れないですよね。

リンさん

ミャンマーでもわたしの地域では、魚を焼いて食べるということが少なく、煮たり、揚げたりして食べます。

ミオさん

最初の和食は、初来日した高校生のときにホストファミリーと空港で食べたお蕎麦です。今まで食べたことのない味でした。お店に入ったとき、すごく元気よく「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」というのが印象的でした。

ヒキシマさん

最初のとき、お刺身もお寿司も食べられなかったです。フィリピンでは生の魚は食べないから。今ではお寿司と焼き鳥が一番好きです。

ミオさん

わかります、(生魚は)私も不安でした。アメリカでもお寿司を食べた覚えはありますが、日本のものと全然違います。天ぷらやソースが入っているんです。

リンさん

びっくりしたのは、魚のカマ(魚のえらの部分)を焼いて食べることです。カマ焼きを食べたとき、こんなにおいしいの! と驚きました。友だちが来ると「食べてみて」とすすめています。

ミオさん

魚のカマは、初耳です。わたしが和食で驚いたのはうなぎです。初来日のときに「あれを食べるの?」と思ったけど、食べてみたらとってもおいしかった。

ヒキシマさん

驚いたのは、レバ刺しや馬刺しです。なんで食べるんだろうって、びっくりしました。

普段食べるのは、母国の料理と和食とどちらが多いですか

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初めて食べた和食は天丼。おいしかった!と、ヒキシマさん。
ヒキシマさん

やはりフィリピン料理を作ることが多いです。

リンさん

家で作るのはやはりミャンマー料理が多いです。

ミオさん

わたしは大学生のころからヴィーガンです。子どものとき、魚と卵は食べていましたが、肉はまったく食べていません。日本では国で食べていたようなヴィーガンの食材がなかなか手に入らないので、ある物で自己流に作っています。 皆さんの母国料理の材料は日本で見つかりますか。

リンさん

材料は手に入りやすいですよ。わたしは高田馬場のミャンマーの食材店で買うことが多いですが、スーパーにもあります。

ヒキシマさん

フィリピンの調味料も手に入りやすいです。最近は大きいスーパーなどでもアジアの調味料が揃っていますよね。

リンさん

ミャンマーの料理でよく使う調味料はナンプラーです。生姜焼きや豚汁など和食を作るときは日本の醤油を使いますが、ほかの料理はナンプラーですね。

ヒキシマさん

フィリピンでよく使う調味料はパティスといいます。味はナンプラーと同じです。ケチャップもいろいろあって、バナナケチャップとかもあります。色は黄色ではなく赤です。

ミオさん

アメリカで一番使っているのはマスタードです。100種類ぐらい揃っていて、とにかく安いです。日本はマスタードの種類が少なくて、高いです。

外食はしますか

リンさん

外食はあまりしません。

ヒキシマさん

外食をするときは寿司とか焼き鳥とか、好きなものを食べます。外食でフィリピン料理を食べることはないです。誰かの誕生日とかパーティーをするときだけ、フィリピンレストランへ行きます。

ミオさん

外食はほとんどしません。2019年に路上ライブツアーで日本全国を回っていたんですが、わたしともう一人がヴィーガンですごく困りました。ヴィーガンの物がなかなかないので、梅干しのおにぎりばかり食べていたら、体調が悪くなったり。2022年に再来日したら東京にヴィーガンのお店が増えていました。でも、日本でヴィーガンの人は、まだまだ不便だと思います。

得意料理はなんですか

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魚が大好きで、カマの塩焼きのおいしさにびっくりした、とリンさん。
ミオさん

得意料理はヴィーガンのデザートです。日本ではオーブンを持っていないので、野菜や豆腐、麺を入れたスープが得意です。クミンやカルダモンなど、たくさんのスパイスを入れて、 (から) い物が好きなのでハバネロとかホットソースなども加えます。

リンさん

よく作るのは、魚と空心菜のスープです。 (から) くて酸っぱいスープですが、これがあれば (ほか) のおかずはいりません。ご飯にかけてもいいし、そのままでもおいしいです。ナンプラーやタマリンド、唐辛子も入れます。

ヒキシマさん

子どもたちが「ママのシニガンがおいしい!」と言ってくれるので、シニガンが得意料理です。野菜がたっぷり入ったスープです。

みなさんの国に「お弁当」の文化はありますか。

ヒキシマさん

フィリピンにもお弁当文化はあります。家で作った料理をタッパーに入れて、ピクニックに持っていきます。仕事のときは、ビニール袋にご飯やおかずを入れて持っていきます。お弁当箱もあるけれど、ビニール袋の方が楽です。

リンさん

ミャンマーは給食がないし、店でもお弁当をあまり売っていないので、小学生から社会人までみんなお弁当を持って行きます。ご飯やスープを分けて入れるので、男性は3~4段で女性は2段のお弁当箱をみんなが持っています。週末には動物園や公園にお弁当を持って行ってピクニックをすることもあります。

ミオさん

動物園にお弁当を持って行くんですね、びっくり!

ヒキシマさん

フィリピンも動物園にお弁当を持って行きますよ。

ミオさん

わたしが通っていた学校には給食があって、ホットランチといっていました。ピザとかマカロニ、チキンナゲットとかちょっと不健康なメニューが多かったです。わたしは家族がベジタリアンだったので、ナッツとかサンドイッチ、ニンジンやセロリなどを持って行っていました。当時は珍しかったけど、今はヘルシーなランチを持って行く人が増えたかもしれないです。

行事に合わせた特別な料理はありますか

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「知らなかった!」「おいしそう!」それぞれの国の食べ物にお互いが興味を持ちました。
ヒキシマさん

誕生日のときは、必ず長いものを用意します。焼きビーフンとかスパゲティがないとだめです。

ミオさん

面白い! 長生きするためにですか。

ヒキシマさん

そうです。そしてお正月は、丸い果物を13種類用意します。13はラッキーナンバーで、丸いものはお金を意味します。1年間、食べ物にも、お金にも困らないようにという願いを込めています。たとえお金がなくても、お正月は豪華にします。必ずどこかの家で果物が山になって飾ってあります。

リンさん

ミャンマーのお正月は4月ですが、日本と同じように餅をいろいろな味にして食べます。 毎月いろいろなお祭りがあります。2月の「タマネ祭り」では、ココナッツ、ピーナッツ、ごま、もち米と油を混ぜてつくるタマネというお菓子を作ります。近所の人と一緒に作って、一緒に食べます。11月の満月の祭りでは、メザリィプートゥというメザリィ木の花のつぼみサラダを食べます。ちょっと苦いですが、苦いものは体にいいとみんなが思っています。満月の夜に食べると1年間元気に過ごせると信じています。

ミオさん

アメリカのお正月のようなものは、クリスマスです。家族と過ごしたり、友だちと過ごしたり。2月はバレンタインデーで、チョコレートなど甘いものを食べたくなります。3月はセント パトリックス デーで、町中が緑色に染まります。マクドナルドにミント (あじ) の飲み物を買いに行きます。そして復活祭がありますが、お菓子のイメージが多いです。プラスチックで作られた卵をいろいろな場所に隠して、子どもが見つけるという宝探しのようなこともしました。

「食について」のテーマは、話題がどんどん広がります。みなさん、母国の料理に使う材料や調味料、母国のお茶など食べ慣れたものは日本に住んでいても必ず冷蔵庫に用意しているそうです。次回は「住(住むところ)」について話していただきます。

── 次号へ続く