多文化クロストーク

「衣食住」について ー第1回 衣服についてー ~ミャンマー、アメリカ、フィリピン出身者が語る~

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左から、ミャンマー出身のリンさん、アメリカ出身のミオさん、フィリピン出身のヒキシマさん。

3人のプロフィール

リンさん(ミャンマー出身)

在住年数
14年
母語
ミャンマー語
好きな日本語
ヤバい
東京で好きな場所
明治神宮
好きな食べ物
寿司
お国での仕事
ガソリンスタンドの経営
日本での仕事
飲食店の従業員

ミオさん(アメリカ出身)

在住年数
1年
母語
英語
好きな日本語
「日本語のすべてが好き!」  頑張る、笑う (かど) には福が来る、青空、日向ぼっこ、などたくさん
東京で好きな場所
新宿中央公園、代々木公園、江戸川公園、新宿御苑
好きな食べ物
メキシコ料理、お豆腐、ほうれん草、ピーナツバターとジャムのサンドイッチ
お国での仕事
シンガーソングライター
日本での仕事
シンガーソングライター、歌で英語を教える講師

ヒキシマさん(フィリピン出身)

在住年数
37年
母語
タガログ語
好きな日本語
何とかなる、大丈夫
東京で好きな場所
日本橋
好きな食べ物
焼き鳥
お国での仕事
店員
日本での仕事
介護士

 

第1回 衣服について

衣食住について、3回シリーズでお届けします。今月は「衣服」についてです。季節のある国や一年中暑い国など、気候条件によって服装に違いがあります。服の枚数や色の好みなど、服についてどんな違いがあるでしょうか。

服装に関して日本との違いはありますか

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「フィリピンは1年中 (ねんじゅう) 暑いから、日本とは服に対しての考え方が違う」とヒキシマさん。
ヒキシマさん

フィリピンは1年中 (ねんじゅう) 暑いので、みんなTシャツとジーパンが好きです。Tシャツとジーパンでどこでも行けます。ビジネス街でもスーツの人はあまりいません。オフィスでもポロシャツやシャツで大丈夫です。

リンさん

ミャンマーには四季がありますが、基本的に暖かいです。服装は、民族衣装であるロンジーが基本です。長い布を巻いたスカートみたいなもので、男性用と女性用があります。普段着にも正装としてもロンジーを着ますから、日本の服装とは違います。

ミオさん

わたしの出身のミシガン州はアメリカの北の (ほう) にあるんですが、四季がはっきりしています。緯度は北海道と同じくらいですが、冬はもっともっと寒いです。冬は4枚くらい着てスキーのジャケットを着ます。靴下も1枚じゃ足りません。夏は全然違います。23~25度のちょうどいい気温になります。

ヒキシマさん

日本はすごくファッショナブルです。街によっても違います。例えば、渋谷と表参道はファッションが違います。そこがいいなと思います。私も今、日本でいろいろファッションを楽しんでいます。

リンさん

日本に来て驚いたのが、男性もトートバックのような大きなカバンを持っていることです。ミャンマーの男性はリュックだけです。ミャンマーで男性が大きいカバンを持つのは恥ずかしいです。

ミオさん

アメリカの男性も同じです。大きなカバンは持ちません。持つのは財布だけです。カバンを持たないので、大きい財布をポケットに無理に入れています。

日本は保守的? 服の色も違う

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「ロンジーのときはサンダルを素足で履きます」とリンさん。
ミオさん

日本の人は暑い日でも長袖を着ていたり、長いスカートをはいているので、保守的だなと感じます。日本に来たばかりの時に「あまり肌を見せてはいけない」と聞いて、上着や丈の長い服を買い足しました。選ぶ色についても中間色が多く、肌の色や髪の毛に合いそうな色を選んでいると思います。例えば黄色一つとっても、日本で人気の黄色はマスタードの中間色で、アメリカだったら色鮮やかでもっと明るい黄色ですね。

ヒキシマさん

フィリピンの人は明るい色が好きな人が多いです。ファッションをあまり気にしない人が多いんですが、最近帰国したときには短いワンピースを着ている若い女性が多かったので、流行っているのでしょうね。

ミオさん

若者はどの国へ行っても元気で、頑張ってファッションを楽しんでいますね。

リンさん

ミャンマーでは若い女性はミニスカートも着ますが、ほとんどの人はロンジーを着ています。中学・高校はロンジーしかだめです。大学生になると自由ですが、ロンジーを着ている人が多いです。ビジネスの場合でもロンジーが基本です。

ヒキシマさん

フィリピンの学校は、短いスカートは禁止で膝下 (ひざした) までないとダメです。

ミオさん

アメリカはキリスト教の学校には制服がありますが、それ以外の学校は制服も厳しいルールもほんとんどないです。

日本に来て服の枚数は増えた?減った?

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ワンピースをたくさん持ってきたという、ミオさん。
ヒキシマさん

日本は季節によって気温が違うから、どうしても服が増えます。下着や靴下まで季節によって変わるので、服を入れ替えるようになりました。フィリピンでは入れ替えすることはなかったですね。

リンさん

ミャンマーも服の入れ替えはしません。日本は半袖に長袖、コートなど、温度調節にいろいろ必要なので、服がどんどん増えていきます。

ミオさん

わたしは服が減りました。スーツケースに入らないのと、アパートにも置けないからです。今はアメリカから持ってきた大きなスーツケース2つに入れた服だけで、身軽に暮らしています。ワンピースならコーディネートしなくてもいいので、たくさん持ってきました。日本は冬でも寒くないからコートも持ってきていません。

リンさん

服を買うから、服に使うお金は増えました。

ミオさん

わたしの服代は0円になりました。体型も肌の色も違うから日本の服は似合わないし、筋肉もついているから服が入らない。コロナ禍で試着 (しちゃく) ができなかったから、よけいに買えませんでした。わたし、足も大きくて、日本では男性のものしかないんです。合う靴をアメリカで見つけたら、必ず買います。いくらでもいい。5年とか10年間は履きます。

ヒキシマさん

フィリピン人の体型は日本人と一緒なので、サイズは合います。日本の服が大好きなんです。

リンさん

ミャンマーの女性たちは足の幅が広いので、日本の靴はなかなか入らないんですよ。それは本当に困ります。男性の靴の場合はそんなに違いはありません。

ミオさん

あと驚いたことは、日本は暑いのにみんなが重ね着をしていること。わたしは1枚でも暑いので、すごくびっくりしました。

ヒキシマさん

食べ物の関係もあるんでしょう、体温が違うんじゃないですか。

ミオさん

日本人は汗をかかないから、うらやましいです。夏はTシャツでも暑くて、タンクトップやキャミソールを着たいです。袖があるともう汗でびっしょりになるんです。

冠婚葬祭などで服のマナーはありますか

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靴についての悩みは、いろいろあるようです。
リンさん

ミャンマーでは、結婚式や大事なイベントでお寺に行くときは、黒はダメです。黒は悪いものが来ると思っているので、黒以外の色だったら何色 (なにいろ) でも大丈夫。お葬式は黒でもほかの色でもいいです。イベントや結婚式ではミャンマーの民族衣装を着る人もいます。少数民族の人たちは自分たちの民族のものを着ます。

ヒキシマさん

フィリピンでは、黒は誰かが亡くなったイメージがあるから、あまり好きじゃないです。結婚式や入学式、卒業式は、おめでとうだから黒は誰も着ないですね。子どもが入学したときには、日本ではみなさんが黒を着ていて驚きました。わたしは何も知らなかったから、旦那さんが買ってくれた赤い服を着て行きました。あのころは外国人が少なかったので、目立ちました。

ミオさん

アメリカには入学式はないです。卒業式はあります。家族もお祝いに来ますけど、黒は着ません。卒業する本人はきれいなワンピースやスーツを着ていますが、家族は普段着。わたしの卒業式の写真には家族全員いますけど、兄たちはジーンズです。でも、結婚式は別です。白は花嫁さんだけが着る色なので、白は絶対に着て行きません。また、結婚式は祝うときなので、黒は着ません。

「衣服について」は身近なテーマでもあり、話が大いに盛り上がりました。気温の感じ方や、色の好み、服装のマナーなどにも違いがありました。次回は「食について」話していただきます。

── 次号へ続く