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「子育て」について ー第2回 子育ての文化ー ~中国、ロシア、アメリカ出身者が語る~

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左から、中国出身の来来さん、ロシア出身のエヴゲニヤさん、アメリカ出身のトーマスさん。

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第1回はコチラから

第2回 子育ての文化について

子育てについて3回シリーズでお届けしています。第2回は子育てをしていく中で母国と違って戸惑ったことや、子育てで特に気をつけていることなどを話していただきました。

子育てをしていて、驚いたことはありますか

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日本の赤ちゃんが裸足なのには驚きましたと、エヴゲニヤさん。
来来さん

ありました。子どもを連れて公園で遊ぶとき、中国では各自おもちゃを持ってきたら基本はシェアして一緒に遊びます。そのおもちゃを借りるたびに「貸して」とか「いいですか」と言うルールはないんですよ。
日本の公園では「貸して」と言わないと、失礼な人とか家のしつけが悪いと思われたりします。1歳や2歳の子どもは、親の目の届かないところで勝手に使い始めたりするので、まわりの人から (きび) しめに見られることがあります。

トーマスさん

そうですね。そういうことはあります。

来来さん

もう一つは、中国から (しゅうとめ) が来たときに、 (しゅうとめ) が子どもと公園に行ったんです。イチゴをお弁当箱に入れて持っていきました。他の子どもが寄ってきたとき、「いかがですか」といったら、子どもは食べたがっていたんですが親御さんから「うちは公園でイチゴを食べる習慣はないんです」と言われたそうです。他の子どもに物をあまり食べさせないとか、衛生面では正しいと思うんですけど…。中国では、ほかの子どもが食べたいのにあげないのはケチだと思われます。 (しゅうとめ) は断られて、ショックだったようです。

エヴゲニヤさん

多分、知らない人から物をもらわないっていうことだと思います。わたしも娘にそう言っています。

来来さん

そうですね。

エヴゲニヤさん

日本の赤ちゃんは裸足だということにショックを受けました。冬にママはたくさん服を着ているのに、抱っこ紐の中で赤ちゃんが裸足ということに本当に驚きました。
娘が生まれて次の夏にロシアに行ったとき、娘はベビーカーの上でまだ歩けないから裸足でいいと思っていたら、ロシアの人から「なんで靴下を履かせないんだ。寒いじゃないか」って言われたんです。「まだ歩けないですから」といっても、それはおかしいという感じです。靴下も靴も買えないんだろうって。今度はロシアにショックを受けました。ロシアでは夏でも、赤ちゃんに靴下と靴を絶対に履かせるんです。文化の違いですよね。

トーマスさん

面白いですね。わたしがびっくりしたのは、子どもが自由に一人 (ひとり) で出かけたりすることです。アメリカですと一人 (ひとり) で公園に行ったりしません。場所にもよると思いますが。わたしの地元は田舎ですので、車がないと公園に行けません。日本は安全ですし大丈夫だと思うんですけど、6歳の子どもが一人 (ひとり) で友だちと一緒に公園に行くことは、とても驚きました。

エヴゲニヤさん

日本の小学生はチャイムが鳴ると、家に帰るんですよね。偉いですよ、すごく驚きました。

来来さん

中国では小学生は送り迎えし、場所によっては中学生までします。おじいちゃんやおばあちゃんなど、家族がしてくれます。

エヴゲニヤさん

ロシアもおばあちゃんたちが送り迎えします。

トーマスさん

アメリカはスクールバスです。バスを降りたところから自分の家までかなり近いので、そこからは一人で帰ります。

子どもの食事について

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家でグリーンカレーなどいろいろな食事を作るというトーマスさん。

子どもに最初にあげる離乳食はなんですか

トーマスさん

お粥みたいなものもありますし、よくバナナを潰して食べさせたりします。

来来さん

中国も同じでお粥です。リンゴのペーストみたいなものもあげます。バナナももちろん食べますが。

エヴゲニヤさん

ロシアは野菜です。最初は色の薄い野菜からで、ズッキーニやポテト、キュウリなどです。トマトや人参は後からです。野菜をつぶしてあげます。 (ほか) にはお米だけじゃなくて、そばの実などのお粥みたいものもあります。

子どもの食事について周りの人に聞いたりしますか

来来さん

主人と二人でインターネットで調べます。周りの友だちとコミュニケーションはしますが、基本は自分たちで解決します。

エヴゲニヤさん

そうですよね。親に聞いても古い知識なので今とは違いますから、自分で調べます。日本の離乳食の雑誌があって、すごくわかりやすかったです。どのくらい潰せばいいとか書いてありますし、スプーンに載せられた離乳食の写真もすごく助かりました。ロシアの情報と合わせて、自分なりにアレンジしました。

トーマスさん

妻が実家に相談したり、子どものいる先輩のママたちに聞いて、離乳食をあげました。

家では母国の料理と日本の料理、どちらを食べることが多いですか

トーマスさん

基本は日本食です。妻が日本人ということもありますが、子どもたちも当たり前のように食べています。日本食が7割から8割くらいです。わたしも料理を作ります。タイ料理のグリーンカレーやいろいろ作りますよ。

来来さん

中華が60%で日本食が40%くらいです。もともと自分で作るときは中華しか作らないんですけど、最近ミールキットなどを使っていて、それが日本食なので40%くらいの数字になっています。

エヴゲニヤさん

同じです。子育てですごく疲れていたとき、ミールキットを頼んで日本食が増えました。最近は飽きたので、自分でレシピを見なくてもできる料理を作っています。ロシア料理は7割くらいです。外食はいろいろです。主人は日本食が好きなので、ランチに食べてくださいと言っています。子どもは両方ともおいしく食べます。

トーマスさん

子どもたちは日本食が好きですが、ファストフードも好きです。健康的に育てたいから、あまり食べさせないようにしているんですけど。

来来さん

息子たちは日本食の方が好きです。学校の給食も全部日本食ですから。外食のときも、すき焼きとか牛丼 (ぎゅうどん) 、ハンバーグなど、そういう料理が好きですね。

エヴゲニヤさん

娘はお寿司は好きだけど魚は食べないとか、ロシア料理は肉が多いのでそれは食べますがタマネギが嫌だとか。いろいろ主張が出てきたので、どちらとも言えないです。でも、お米がないと不機嫌になります。

子どもの話す言葉、継承語について

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2人の子どもを育てるなかで、子どもたちの話す言葉や継承語についての考え方が変わったという来来さん。
トーマスさん

子どもとは、ほとんど日本語で話します。妻の両親も日本語しか話せませんし、周りに英語のできる人がいないので日本語です。でもわたし自身は、最近はできるだけ英語でも積極的に話そうとしています。英語が全然話せないと、わたしの家族と話せなくなるので。子どもたちはNetflixを見るときは日本語と英語両方で見ています。

エヴゲニヤさん

家ではロシア語だけです。娘は幼稚園では英語で、幼稚園の外では友達と日本語で話します。この3か国語が娘の中では自動的にスイッチするんですよ。ロシア語は家族の言葉として決めたので、これからどの学校へ行ってもロシア語は今のまま上達してほしいです。ロシアの文化も教えたくて、日本語でロシアの文化を教えるのはおかしいと思うので。

来来さん

長男のときは、中国語にこだわっていました。今14歳で、普通に中国語で議論することができます。長男と違い、次男は学校ですぐクラスに馴染んで日本人の友達とすごく仲良くなりましたから、あまり中国語を話してくれません。わたしが中国語で話しかけても、日本語で返ってきます。そこでわたしも考え方を変えました。将来、中国語をどういう (ふう) に使うかもわかりません。未来はAIも進んで言語の壁がなくなるかもしれないですし、もう日本語でいいと思いました。

トーマスさん

兄弟同士は日本語で話していますか。

来来さん

兄弟同士は日本語ですね。わたしが長男と話すときは中国語と日本語が半々ですが、次男とは日本語です。主人とわたしが二人で話すときは、上海語です。子どもたちはそれを聞いているけれど、家族で話すときは日本語と中国語が半々くらいです。将来の優先順位で考えると、日本語、英語、中国語の順番でしょうか。けっこう考え方が変わりました。

子どもに日本語で話すときはどんなときですか

エヴゲニヤさん

「危ない」とか「やめて」とか、危険なときの言葉です。 (ほか) の人から言われたときのために、「危ない」という言葉を知っていた方がいいですから。また、「危ない」とか「怖い」とかという言葉を日本語で言うのは、周りにいる人の悪口を言ったんじゃないです、とわかってもらうためでもあります。

トーマスさん

外に出かけるときは日本語を話しています。家に帰ると英語で話そうとしますが、公園で仲よく遊んでほしいときは、日本語で話したほうがいいと思います。電車に乗るときに周りの人に迷惑をかけたときは、ちゃんと日本語で注意するようにしています。

来来さん

一緒です。周りに日本人の方がいらっしゃるときには日本語で話して、周りの人にも分かるようにします。そういうところを気をつけたいと思っています。

子育てで気をつけていること

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子育てで気をつけていることはそれぞれ違いますが、お互いに共通点も多いようです。
 
エヴゲニヤさん

言語に関しては、同じ話で日本語と英語とロシア語を混ぜないようにしています。話す言葉がわからないときは、「これはロシア語だよ。じゃあ英語は知っている?」というように確認しています。知っている言葉を増やしてほしいからです。

トーマスさん

わたしのところは子どもたちの年齢差がないので兄弟同士の競争が激しくて、喧嘩しないように言っています。ぶったりしないで、できるだけ言葉を使って交渉しようということを言っています。

来来さん

わたしは在宅勤務なので、学校から帰ってきたときの子どもたちの表情をちゃんと見るようにしています。中国出身だということを理由に、学校で変なあだ名をつけられたり変な質問をされたりすることもあります。子どもは自分からは言わないです。でも表情には出ますから、今日何があったかを必ず聞きます。するといろいろなことを教えてくれます。担任の先生と相談することもありましたが、無事に乗り越えました。

エヴゲニヤさん

そうでしたか。わたしは子どもに「みんなそれぞれ」ということを教えています。
日本の文化、ロシアの文化があるけれど、日本人の中でもロシア人の中でも一人ひとり違うということです。何か自分に嫌なことを言う人がいても、その人の気分だと思って気にしなくていいと言っています。

来来さん

そうですね。最近はわたしも息子に、「中国のことで何か嫌なことを言われたときには『中国はいいところだから今度ぜひ行ってみて』と勧めたら?」って言っています。

第2回のテーマは「子育ての文化」でした。子どもたちは日本で生まれ育っているので、家庭の中で継承語をどのように教えていくかなどの話題は興味深いです。3回目のテーマは「幼稚園・保育園・学校入学」についてです。

── 次号へ続く