多文化クロストーク

「病気と病院」について ー第3回 病気の予防ー ~ウズベキスタン、ネパール、イタリア出身者が語る~

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左から、ウズベキスタン出身のダブロノヴァ カミラさん、イタリア出身のメンカッティニ マウリッツィオさん、ネパール出身のスレスタ ジョティさん。

第3回 病気の予防について

病気と病院について、3回シリーズでお届けしています。3回目のテーマは、病気の予防です。病気の予防や健康法は、出身地によってどんな違いがあるでしょうか。お話をうかがいました。

子どものころからいわれている健康法はありますか

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ネパールでは体を冷やさないことが一番の健康法だと、ジョティさん。
スレスタ ジョティさん(以下:ジョティ)

朝ごはんは必ず食べてから家を出るように、といわれていました。

メンカッティニ マウリッツィオさん(以下:マウリ)

そうですね、朝ごはんはよくいわれました。甘いものを食べると元気が出るから、食べなさいということ。もう一つは、頭痛を予防するために、シャワーを浴びた後は髪の毛をちゃんと乾かしなさいといわれていました。

ダブロノヴァ カミラさん(以下:カミラ)

わたしも朝ごはんは必ず食べなさい、残さずに食べないと神様が怒るよ、とおばあちゃんや母から言われていました。

ジョティさん

ネパールも頭を冷やすと風邪の原因になるといわれていて、朝はシャワーをしないほうがいいと今もいわれています。できれば昼のシャワーがいいと。日本ではシャワーの後に髪をすぐに乾かしますが、ネパールでは髪を乾かすことができないことがあります。ネパールに行くとシャワーを浴びるのは昼ごはんを食べてからです。夕方の5時や6時を過ぎると、シャワーはしません。体を冷やさないようにといわれていますので。日本では時間に関係なくシャワーに入ります。

マウリさん

なるほど。体を冷やさないことが大切なんですね。

ジョティさん

そうです、オイルマッサージもします。5歳までは毎日マスタードオイルでマッサージをします。マスタードオイルは体を温めるので、日本でも筋肉痛があるときはオイルを温めてマッサージをします。体を冷やさないことが一番の健康法です。

カミラさん

ジョティさんの話を聞いていて、思い出しました。ウズベキスタンはマスタードオイルではなく、ウォッカを使ってマッサージをします。手とか足を温めるためで、お母さんがしてくれました。

ジョティさん

ネパールでは風邪をひいたときは、子どもたちもお酒を飲みます。夜寝る前にスプーンでほんの少しです。ぐっすり眠れるから、朝元気になります。日本酒みたいなお酒です。ネパールでは自分の家でお酒を作ることが多いので、それを薬みたいに使っています。

カミラさん

わたしも4歳のときにおばあちゃんからワインをちょっともらって、薬のように飲みました。おばあちゃんはロシア人なんです。これはウズベキスタンの習慣ではなく、ロシアの習慣なのかと思います。

普段の生活で健康のために気をつけていること

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自炊をし、バランスの取れた食事をとるように気をつけている、とマウリさん。
マウリさん

バランスを考えて料理を作るとか、体を動かすことですね。僕は自分で料理を作っているので、野菜とか肉、魚のバランスを考えます。得意な料理はやっぱりイタリア料理で、パスタです。最近は筋トレをしているので、パスタは全然食べてないです。週に3~4回ジムに行くので、たんぱく質を中心にした食事にしています。

ジョティさん

普段気をつけていることは、早寝早起きとバランスよくごはんを食べることです。また、夜寝る前に、温かい牛乳を飲むのが、家族の習慣になっています。風邪をひきそうなときは、牛乳にターメリックを入れて飲んで体を温めます。冷たい牛乳を飲む習慣は、ネパールにはありません。子どもたちは学校で牛乳を飲むのでしかたないですが、わたしは日本に来てから冷たい牛乳を飲んだ記憶はないです。

カミラさん

ウズベキスタンの料理はとてもおいしいですが、脂が多くてヘルシーじゃないです。わたしの家ではヘルシーな料理が好きで、お父さんはとくに油や塩を少なくして作りますからフュージョン(fusion)です。今日は日本料理、明日はイタリア料理、次はロシア料理などと作ったりします。
そして、わたしの家族は、朝ごはんも、ランチも、ディナーも、必ずサラダを食べています。野菜は大事です。

ジョティさん

野菜を食べた方がいいと子どものときから思っていましたが、ネパールでは生野菜をあまり食べないので、どうやって食べるかわからなかったんです。日本に来てからよく野菜を食べるようになって、お腹の調子がいいです。わたしはもともと胃が痛いとか、便秘の悩みが子どものころからあったんですが、日本に来てからはないです。ネパールに帰国すると、また胃が痛くなったり、便秘になったりします。ネパール料理はスパイスをたくさん使っておいしいですけど、ちょっと重いですね。

病気の予防と睡眠時間について

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3人とも病気の予防は、体を温めることだといいます。
カミラさん

ウズベキスタンではコーヒーよりも、紅茶を飲みます。お茶はとても大切で、いつも温かいお茶を飲んでいます。お客さんが遊びに来て、夏の暑いときでも温かい飲み物を飲みます。冷たいものは飲みません。

マウリさん

風邪をひいたときには、お粥のようなシンプルな料理を食べなさいっていわれます。複雑な料理じゃなくて、スープとかお粥のようなものです。

ジョティさん

病気の予防のためには、お茶にハーブを入れて飲みます。チャイのような紅茶もいいですね。

 

睡眠時間について

カミラさん

わたしは大学生なので、することがとても多いです。1日に2時間しか寝ないことも多いです。今日はいつもより多くて4時間ぐらい寝ました。
子どものころは22時に寝なさいといわれていましたけど、成績を維持するために勉強していて朝4時、5時に寝ることがよくありました。

ジョティさん

ネパールも睡眠は大事だといわれています。でも、ネパールは日本の小学校と違って宿題が多いです。各科目で宿題が出るので、22時、23時まで宿題をやっていました。寝る時間は8時間がいいのはわかっていますが、なかなかとれません。日本に来てから睡眠はたくさんとれるようになりました。

マウリさん

イタリアも8時間の睡眠がいいといわれています。僕は今、7時間くらいの睡眠をとっています。子どものころは勉強よりもテレビを見て、2時ごろに寝て7時くらいに起きたりしていました。お母さんに「テレビを消しなさい」とよく怒られました。

ジョティさん

日本は宿題が終わらなくても、21時には寝なさいということを知りました。ネパールは宿題が終わるまでは寝ちゃだめだから、両親も子どもに21時に寝なさいとは言いません。

日本の病気予防で、驚いたことはありますか

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毎食サラダを食べ、野菜は大事と話す、カミラさん
ジョティさん

風邪をひいたときにネギを食べることに、すごくびっくりしました。ネパールではネギを食べると風邪をひくといわれています。ネギは体を冷やすから長ネギは食べないです。風邪をひいているときは、生のニンニクを食べます。

カミラさん

子どものころから日本に来ているので、マスクにはすぐに慣れました。ウズベキスタンに帰ったときも、冬の (あいだ) はマスクをしています。

マウリさん

インフルエンザの予防接種などは、イタリアにはありません。風邪をひくと日本人は薬をすぐ飲みますが、イタリア人は風邪ぐらいでは、たぶん薬は飲まないです。友だちに聞いても、あまり (くすり) を飲んでいません。風邪のときは服をたくさん着て汗を流したりします。

ジョティさん

もうひとつ驚いたことがありました。ヨーグルトです。日本では風邪をひいているときでもヨーグルトを食べています。ネパールでは風邪をひいているときは、ヨーグルトを食べません。風邪がひどくなって大変になるから、治るまで食べません。でも、日本では皆さんが食べているから、わたしも風邪をひいたときでもヨーグルトを食べています。ネパールに帰ったときは、ヨーグルトを食べると、次の日から喉が痛くなります。不思議です。

カミラさん

驚いたことは、アイス(氷)ですかね。日本では、(温かい飲み物以外)ドリンクにアイスが入っています。ウズベキスタンでドリンクにアイスが入っていると、わたしはすぐに風邪をひきます。日本では大丈夫です。

ジョティさん

日本で出産をしましたが、ネパールでは出産後に温かい飲み物とか温かいスープを飲みます。日本では冷たいジュースをくれたりするので、びっくりしました。

マウリさん

イタリアではオリーブオイルを飲むと便秘がよくなるといいます。皮膚が乾燥したときにオリーブオイルを塗ったりします。お母さんたちはオリーブオイルで髪をパックしてからシャンプーをするときもあります。オリーブオイルはよく使う、身近なオイルです。ひどく日焼けをしたときは、赤くなったところに生のトマトを切ってのせたりもします。

── 終わり

 
 

病気と健康について、3回シリーズでお届けしました。国によって、地域によって、病気についての対処の仕方が違います。病院や薬についても、日本との違いがいろいろありました。来月からは「子育て」についてお届けします。