多文化クロストーク

「日本の暮らし」について ー第1回 日本語ー ~タイ、ボリビア、ウガンダ出身者が語る~

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左からボリビア出身のセラノ ミゲルさん、タイ出身の清水エドさん、ウガンダ出身の羽上 (はがみ) 珠希さん

3人のプロフィール

セラノ ミゲルさん(ボリビア出身)

在住年数
14年
母語
スペイン語
好きな日本語
頑張る
東京で好きな場所
墨田区
好きな食べ物
焼肉とバーベキュー
お国での仕事
測量士
日本での仕事
自営業

清水エドさん(タイ出身)

在住年数
16年
母語
タイ語
好きな日本語
一生懸命
東京で好きな場所
スカイツリー、下町
好きな食べ物
お寿司
お国での仕事
物流管理
日本での仕事
イベント企画運営・営業など

羽上 (はがみ) 珠希さん(ウガンダ出身)

在住年数
7年
母語
英語
好きな日本語
かわいい
東京で好きな場所
お台場
好きな食べ物
お寿司
お国での仕事
大学卒業後すぐに来日のためなし
日本での仕事
正社員

第1回 日本語について

最初は日本語ができなかった

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週に6日、日本語ボランティア教室に通った清水エドさん
清水エドさん(以下:エド)

私は全然できませんでした。

セラノ ミゲルさん(以下:ミゲル)

僕も全然できませんでした。

羽上 (はがみ) 珠希さん(以下:珠希)

わたしはベーシックな日本語ができました。中学生のとき、ウガンダの日本大使館で日本語を勉強しました。大学生のときはJICAの人からも日本語を教えてもらいました。どちらもベーシックな日本語です。

ミゲルさん

全然話せなかったので、日本語学校へ3か月通いました。すぐに仕事を始めたのですが、やっぱり勉強が足りないと思って、また3か月通いました。合計6か月ですね。

エドさん

私はボランティア教室で習いました。最初は週に6日間 (かかん) 、墨田区、江東区、足立区の教室に通いました。インターネットで調べたんですが、そのときは英語で探しました。日本語ボランティア教室は、言葉だけでなく生活の面でもいろいろ教えてくださいましたので、とても助かりました。

ミゲルさん

僕もボランティア教室にも通いました。火曜日と木曜日の週に2回、2つのボランティア教室に通いました。そうですね、生活のことを教えてもらえたので、助かりました。

珠希さん

わたしも1年くらいボランティア教室に通いました。仕事を始めたので、教室に通うことができなくなりました。ボランティア教室は、日本語レベルがみんな違います。1対1で勉強することができなかったので、わたしには少し足りなかったと思っています。日本語をもっと上手になりたいので、週末に通える日本語学校を見つけて2年前から毎週土曜日に通っています。

日本語は難しい

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寝言を日本語で言ったという、セラノ ミゲルさん
エドさん

日本語は今でも難しいです。
タイ語には、日本語にない発音がたくさんあります。タイ人にとって「さ (ぎょう) ) 」と「た (ぎょう) 」は言いにくいし、聞きとれないです。特に「す」と「つ」は難しいです。

ミゲルさん

日本語には「R」と「L」の区別がないので、日本の方と話していて、どっちで言うのが正しいのか、と思うことはあります。

エドさん

日本語は「ら (ぎょう) 」しかないからなんですよね。例えば「ルーム」と「ロンドン」も、日本語では同じ「ら (ぎょう) 」です。英語は「R」と「L」で発音が違いますから。

ミゲルさん

スペイン語も英語と一緒です。子どもたちには「R」と「L」の違いを今から教えています。

珠希さん

あと、日本語と英語は文法が逆です。日本語は最後まで聞かないとわかりませんね。

エドさん

そうです、そうです、わたしは間違えたことがあります。最後のところを聞きとれなくて「~なります」と「~なりません」で、勘違いしたことがあります。

珠希さん

面白いなと思ったことに、カタカナの言葉があります。たとえば日本の方は「テンションが高い」といういい方をします。テンションという言葉の意味が、英語と日本語でちょっと違うと思います。

エドさん

わたしは日本の人が言葉を短くするのが、面白いと思います。初めてびっくりしたのは、パソコンです。
カタカナでパソコンの意味はわかっているんですが英語では何だろうと、ずっと考えていてようやく「パーソナルコンピュータ」だということがわかりました。

珠希さん

漢字は難しいです。いろいろな使い方がありますから。初めて見る漢字は絵に見えるんですよ。漢字をたくさん覚えないとネイティブレベルにはなりません。もっと漢字を覚えたいです。

エドさん

わたしは仕事をするとき、書き言葉の尊敬語と謙譲語がとても難しいと思います。使いすぎてもよくないと思うので、ちょうどいいところが難しいです。

ミゲルさん

区役所から送られてくる紙は、むずかしいです。妻が日本人なので、妻に聞きます。家族に日本人がいなかったら、けっこう大変だと思います。

珠希さん

私は区役所から送られてくるものは、まず読みます。難しかったらグーグルで調べますが、大切なところは拾うことができます。

聞く、話す、書くで、得意なのは

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漢字は難しいという、羽上 (はがみ) 珠希さん
エドさん

聞くのは大丈夫ですが、書くのが苦手です。

ミゲルさん

ぼくもそうです。同じです。

珠希さん

ひらがな、カタカナだったら書くのは簡単だけど、漢字は見ながら書かないと、ちょっとできないです。
日本語のできる順番は、聞くのが1番で、話すのは2番、書くのは最後です。

エドさん

ミゲルさんと珠希さんは、日本語で話すとき、母国語で考えてから話しますか。それとも日本語で考えて、日本語で話しますか。

ミゲルさん

日本語で考えて、日本語で話します。それは娘が生まれてからですね。日本に来て2年後くらいです。
娘に日本語で話しかけるから、日本語で考えるようにしていました。そのころは寝言も日本語だったそうです。

エドさん

前にタイ人の友だちから「夢の中で日本語が出てきたら、上手になった証拠だよ」と言われたことがあります。2~3年後ぐらいですかね、夢に日本語が出てきたときはすごくうれしかったです。

珠希さん

わたしは母とはずっと英語で話していたんですけど、最近は日本語で話しています。母から「上手になったね」と言われます。日本に来て3年目くらいのときからです。

日本語を勉強している人へのアドバイス

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母語はそれぞれ違いますが、共通語は日本語です。
ミゲルさん

僕が日本語の勉強をしたときは、動詞を毎日5つ覚えようとしていました。書きながら覚えていました。いまは書くのを忘れましたけど。

珠希さん

まずは、日本語に興味を持つこと。そして、あきらめない気持ちがあればだんだん上手になります。
わたしは努力をして勉強したら、日本語が上手になりました。

エドさん

日本語をローマ () で勉強する人がいますが、ひらがな、カタカナから勉強した方がいいです。同じことを2度勉強することになりますから。それから、日本人の先生から習う方がいいと思います。文法の説明は同じ国の人の方が理解しやすいことはありますが、発音のことを考えると、日本人の先生の方がいいです。違う発音を覚えると、なかなか直らないので。

── 次号へ続く