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東京都 江東区 区民の交流を育む、江東区のやさしい日本語の取り組み

左から、地域振興部 地域振興課 交流推進係・片倉さん、
地域振興部 地域振興課 多文化共生担当係長・蛭田さん
4万人を超える外国人住民が暮らす江東区では、「江東区多文化共生推進基本指針」にやさしい日本語の推進を掲げ、日本人と外国人がやさしい日本語で交流できる場づくりや、外国人向け動画の制作、職員向け研修など、さまざまな取り組みを進めています。
江東区ならではの工夫や、やさしい日本語を通じた多文化共生について、地域振興部 地域振興課 多文化共生担当係長の蛭田さんと交流推進係の片倉さんにお話を伺いました。
区民の交流の場として始めた「やさしい日本語会話サロン」
――江東区としてやさしい日本語を活用することになった経緯を教えてください。
2021年度に、区民を対象とした多文化共生に関する意向調査を実施したところ、外国人住民から多言語以上に、やさしい日本語での情報提供のニーズがあることが分かりました。これを受けて、翌年度に策定した江東区多文化共生推進基本指針の中にやさしい日本語の活用を推進することが盛り込まれ、この指針に沿って取り組みを進めています。
今年度(2026年度)から開始した「やさしい日本語会話サロン」は、やさしい日本語を活用した地域の交流の場づくりを目的としています。これまで区として実施してきた教室や講座で、外国人は生活に必要な日本語を学んできました。また今年度からは区民向けのやさしい日本語講座も始まっています。こうした互いの学びを実際の対話の中で活かしながら交流できる場として、「やさしい日本語会話サロン」がスタートしました。
――会話サロンの立ち上げには、何かきっかけがあったんですか。
2025年の江東区民まつりに、「やさしい日本語Mini Talk」として、日本語教室を受講している外国人住民と会話ができるブースを出展したんです。受講者の日本語を学ぶモチベーションにするとともに、日本人住民と外国人住民が交流する機会になったらと企画しました。
おまつりでは、途切れることなく来場者がブースを訪れ、大盛況となりました。受講者はもちろん、日本人の参加者からも「外国の方ともこうやって楽しく話せるんだね」といった好意的な声が多く寄せられました。こうした区民が交流できる場を継続してつくれたらと、「やさしい日本語会話サロン」を立ち上げることになりました。

やさしい日本語関連のイベントで配布しているノベルティ
――「やさしい日本語会話サロン」では、どのような内容を実施していますか。
「やさしい日本語会話サロン」は、学びと実践を一つのプログラムに組み込んでいることが特徴です。講師からやさしい日本語のポイントを学んだあと、グループで会話をしながら実践する流れにしています。
これまでに2回実施していて、第1回は「わたしとわたしの国のことを話そう」、第2回は「わたしの国のおまつり」のテーマで、グループで会話してもらいました。
参加者は日本人と外国人がほぼ半々です。国籍は回によって幅があり、中国の方が多い回もあれば、イギリスやインドなど様々な国の方が参加する回もあります。年代も、若い世代から子育て世代、ご高齢の方まで皆さん幅広く興味を持って参加してくださっている印象です。
――実際に開催してみて、見えてきたことがあれば教えてください。
「会話の時間が足りない」という声が出るほど、参加者の皆さんは積極的に会話を楽しんでいます。「学んだやさしい日本語を、すぐ使って試せるのが良かった」という声や、「どのように言い換えれば伝わるか、考えるきっかけになった」という声があり、日本人参加者が自分の話し方を意識し直す機会にもなっているようです。皆さんの様子を見ていると、こうした交流の場を求めている方が多いのだと感じます。
日本人と外国人が交流できることこそ、会話サロンの大きな意義だと感じています。近所に住んでいても、お互い急に話しかけるのは難しいものです。こうした場での交流を通じて、不安が和らぎ、関わり方も自然と分かってくるのだと思います。

「やさしい日本語会話サロン」を担当する、片倉さん
――会話サロンでは、防災などのテーマも扱っているそうですね。
はい。会話サロンの最後に少し時間を取って、「今日の防災」として防災情報を紹介しています。楽しい会話だけで終わらせず、日々の交流の延長として、防災にも自然に触れてもらえたらと考えています。
やさしい日本語と防災という観点では、地元の消防署と連携して日本語教室で防災についての授業をやっていただいたりもしています。また、昨年度の区民まつりでは、外部の講師をお呼びして、日本人と外国人が一緒に防災ブースを回るツアーを開催しました。講師の方がやさしい日本語で解説してくださり、日本人住民と外国人住民が同じ体験を共有しながら一緒に防災を学べたのが良かったですね。
やさしい日本語の動画を、生活情報の入口に

外国人向けの日常生活に関する動画(こうとうく へ ようこそ!~ひっこし の てつづき~)
――区役所での手続きや生活上のルールが分かる、やさしい日本語の動画も制作されているんですね。
外国人に情報を伝える際、文字情報だけでは分かりにくい場面があります。より分かりやすく伝える方法として、動画を制作しました。
江東区には140ヶ国以上の方が暮らしています。より多くの方へ情報を届ける方法として、やさしい日本語を活用しています。
動画は生活情報への入口としての位置づけです。細かい情報は母語で読んだ方が正確に伝わるため、観光マップや防災マップ、ごみカレンダーは多言語化しています。
動画で概要を知ってもらい、その後はホームページで詳しい内容を確認していただくことを想定して、制作しました。
――制作にあたって、工夫した点を教えてください。

手続きで覚えてほしい言葉は、動画の最初にまとめて説明
例えば、国や都の動画ではさまざまな手続きの案内について、「詳しくは自治体へ」「窓口へ」という形で終わるものが多いようでした。そのため江東区の動画では、区役所内の様子や、どこでどのような手続きをするのかを詳しく紹介しています。お一人でも安心して手続きに来られるようにしたいと考えて、制作しました。
また、すべてをやさしい表現に置き換えるのではなく、覚えてほしい言葉はそのまま残し、括弧書きで意味を補ったり、動画の冒頭でキーワードとして紹介したりしたことも、工夫した部分ですね。
――一方で、制作にあたり苦労した点はありましたか。
一番苦労したのは、各部署との調整です。引っ越し手続きの動画だけでも、住民登録や国民健康保険、年金、介護保険など複数の部署に協力してもらいました。
各部署の案内したい情報を盛り込んだ結果、動画が長くなってしまったことは反省点のひとつです。この経験を踏まえ、2026年度はより見やすい動画を目指し、制作しています。
また、日本語教室でも教材として使用しながら、受講者に動画を見てもらい、意見があれば今後反映していきたいと思っています。

動画の制作を担当した、蛭田さん
窓口から地域へ、区役所からやさしい日本語を広げていく
――職員向けにも、やさしい日本語の研修をしているそうですね。
やさしい日本語の取り組みとしては、2023年度に職員向けの研修を行ったのが最初になります。区役所では多くの職員が窓口で区民の方と接するため、まずは職員がやさしい日本語を使って対応できるようにしたいと考えたのがきっかけですね。
研修は、窓口で実際に使えるようになることをゴールとし、内容は話し言葉を中心に、外部講師と一緒に組み立てています。原則として各課から1名以上が参加し、学んだ内容を持ち帰って課内で共有してもらっています。
――研修を続ける中で感じた変化や、職員からの反応を教えてください。
やさしい日本語を必要なものとして捉え、選択肢として認識してくれる部署が、少しずつ増えてきたと感じます。外国人住民への対応は、防災、子育てや教育などさまざまな部署に関わります。まだまだこれからですが、庁内での意識が広がっていることは嬉しいですね。
職員からも「これまで何気なく使っていた難しい表現に気づいた」「もっと簡単に伝えてもいいと分かった」といった感想が寄せられています。
――今後、江東区としてやさしい日本語をどのように広げていきたいと考えていますか。
これまでさまざまな取り組みを進めてきましたが、振り返ると、交流の場では参加した皆さんが一番楽しそうで、いきいきとした表情を見せていました。外国人の方と実際に話してみることで、学んだことを実践し、初めて気づくこともあると思います。交流の機会を増やすことが、やさしい日本語を学ぶことにもつながると感じています。今後も、日本人と外国人が交流できる機会をさらに増やしていきたいと考えています。