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東京都 小金井市 防災から学校生活まで。官民連携で進める、やさしい日本語の取り組み

 

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左から、小金井国際支援協会(KISSA)・山脇さん、学校教育部 学務課・学務係 佐藤さん、市民部 コミュニティ文化課・協働文化係 天利 (あまり) さん、兼 (かね) 堀さん

 

 

東京都小金井市では、外国人住民とのコミュニケーションに「やさしい日本語」を活用する取り組みを進めています。防災をテーマにした講座や外国人住民も参加するワークショップなどを通して、市民にやさしい日本語を学ぶ機会を提供するほか、外国人保護者のための小学校・中学校ガイドブックの制作でも、やさしい日本語を活用しています。

小金井市コミュニティ文化課および学務課の担当者、そしてガイドブックの制作や研修で市と協働する民間ボランティア団体「小金井国際支援協会」(以下、KISSA)のメンバーに、取り組みの経緯や実践を通じて得られた気づき、今後の展望について伺いました。

 

防災をテーマとした、実践形式の「やさしい日本語」講座を継続実施

――まず、小金井市がやさしい日本語に取り組むようになった経緯を教えてください。

天利 (あまり)

2022年3月に、大規模自然災害等に備えたまちづくりを推進するための「小金井市国土強靱化地域計画」が策定され、外国人住民への防災知識の普及や語学ボランティアの確保などが、コミュニティ文化課の課題に掲げられました。

これを背景に、2022年度から国際交流事業の「防災語学講座」として、やさしい日本語の講座を定期的に実施しています。

――これまで、どのような講座を行ってきたのでしょうか。

天利 (あまり)

講座では、やさしい日本語の基本を学ぶだけでなく、実際に使ってみることを大切にしています。

地図を見ながら目的地までの道順をやさしい日本語で伝えるペアワークや、外国人から話しかけられる場面を疑似体験できる映像など、実際のコミュニケーションに近い形で練習してもらっています。

――講座を重ねる中で、内容を改善したことはありますか。

天利 (あまり)

講座を始めた当初は、やさしい日本語と防災で前半・後半を分けて学ぶ形にしていましたが、参加者からは「メインテーマがどちらなのか分かりにくい」という声がありました。後半の防災パートでは、やさしい日本語を用いない説明もあり、外国人参加者に用語や言 (い) い () 回しが伝わりにくい場面もありました。

それ以降は、やさしい日本語を実際に使いながら、防災も一緒に学べるワークを取り入れる形に見直しました。

 

天利氏

市民部 コミュニティ文化課・協働文化係の天利 (あまり) さん

 

外国人住民と日本人住民が一緒に学ぶ防災ワークショップで、やさしい日本語を実践

――2025年10月には、「やさしい日本語×防災ワークショップ」を開催しています。どのような内容だったのでしょうか。

天利 (あまり)

市内の小学校を会場に、「多文化防災ワークショップ」と「防災まちあるき」を企画しました。参加者は外国人7名と日本人22名の計29名で、10代から70代まで幅広い年齢層の方に参加いただきました。

山脇

それまでの講座は、日本人がやさしい日本語を学び、「外国人とどうコミュニケーションを取るか」を考えるものが中心でした。一方このワークショップでは、KISSAの協力のもと外国人住民にもグループに入ってもらい、日本人と外国人が実際にコミュニケーションをとりながら、一緒に防災について考えました。

天利 (あまり)

グループでは、災害への備えをイラストで確認し合う「ナイスカード」というゲームや、防災クイズを行いました。防災クイズについては、過去にやさしい日本語講座に参加した防災担当職員が、やさしい日本語で作成したものです。避難所のマークを当てる問題など、外国人の方も答えられる内容で、参加者や講師の方からも好評でした。その後は防災備蓄倉庫を見学し、ハラール対応の非常食や固定式の災害用マンホールトイレも紹介され、参加者から多くの質問が寄せられました。

 

ワークショップ風景

2025年10月開催「やさしい日本語×防災ワークショップ」の様子

――外国人住民と一緒に取り組んだことで、どのような反応や気づきがありましたか。

天利 (あまり)

参加者からは、「外国人も日本人も同じ地域に住んでいて、災害が起きれば一緒に被災する。非常時に助け合うためにも、普段からお互いを知っておくことが大切だと感じた」といった声がありました。首都直下型地震も予想されている中、外国人とのコミュニケーションツールとして、やさしい日本語を普及させることも非常に重要だと感じています。これからも、やさしい日本語と防災をかけ合わせた講座を通じて、少しでも周知していけたらと思っています。

山脇

外国人参加者からも、印象的な感想がありました。長く日本に住んでいるネパール出身の方から、「避難所は市が運営するものだと思っていた」という感想がありました。地域住民が避難所の運営に関わることは、長く日本で暮らしていても知る機会がない場合があるのだと感じました。

 

外国人保護者の声から生まれた学校生活ガイドブック

――「外国人保護者のための小学校・中学校ガイドブック」は、どのような課題から生まれたのでしょうか。

KISSA山脇氏

小金井国際支援協会(KISSA)の山脇さん

山脇

KISSAで外国人保護者をサポートする中で、学校から配られる書類を見ても、内容が理解できないという相談が多くありました。たとえば、「液状のりを持ってきてください」と書かれていても、「液状のりって何?」というケースです。

そこで、外国人保護者が困ったときに確認できる、小金井市独自のガイドブックが必要だと考え、市に相談しました。

佐藤

近年、近隣区の団地から小金井市内に転居されるネパール人の方が増えています。しかし、窓口で就学の相談を受けても、言葉が伝わらず十分に案内できないことが多く、学務課でも難しさを感じていました。

天利 (あまり)

この話を受けて、市民活動団体などと市が協働して事業を行う、小金井市の「協働事業提案制度」についてお伝えしました。そして今回の取り組みは、KISSAからの提案による「市民提案型協働事業」としてスタートする運びになりました。

 

やさしい日本語活用事例_小金井市_ガイドブック① やさしい日本語活用事例_小金井市_ガイドブック②

小金井市「外国人保護者のための小学校・中学校ガイドブック」より抜粋
英語版・中国語版に加え、やさしい日本語版を作成
小金井市外国人保護者のための小学校・中学校ガイドブックについて:小金井市公式WEBへようこそ

 

――ガイドブックを制作する中で、どのような難しさがありましたか。

山脇

教育委員会と何度もやり取りをし、内容を確認してもらいながら制作しましたが、言葉の使い方には難しさがありました。
たとえば、「制服」と書いたところを「標準服」という表現に修正されたことがありました。行政として正確な言葉を使いたいという意図があってのことでしたが、外国人保護者に「標準服」と伝えても、それが何を指しているのか分かりにくいですよね。
外国人保護者と子どもが一緒に準備できるように、学校で使うものは、できるだけ説明だけでなく写真を載せる工夫もしました。

佐藤

行政では、これまで使ってきた表現や正式な言葉を使う必要がある場合もあります。必ずしも、やさしい日本語に置き換えられるものばかりではありません。置き換えが難しい言葉は無理に変えず、正式な言葉にやさしい日本語を添える形で対応しました。

兼堀氏

小金井市「外国人保護者のための小学校・中学校ガイドブック」より抜粋。「標準服=学校がすすめる洋服」とやさしい日本語で補足を入れて対応

 

ごみ出しや交通ルールなど、防災以外への「やさしい日本語」活用を検討

――ガイドブックの制作を通して、どのような気づきがありましたか。

山脇

市と協働したことで、校長会での紹介や学校への配布、市報での周知、シンポジウムの開催など、KISSAだけで取り組むよりも広く届けられたと思います。 また、ガイドブックを完成させたことだけではなく、制作プロセスそのものにも、外国人保護者が抱える困難を周囲がより理解するという点で大きな意義があったと考えています。

佐藤

学務課としても、外国人保護者が窓口に来たときに、ガイドブックを使って説明できるのは助かっています。

 

――今後、小金井市ではやさしい日本語をどのように広げていきたいですか。

山脇

小学校・中学校ガイドブックの制作をきっかけに、今年度は市からの提案で、協働事業で「小金井市やさしい防災ガイドブック」の制作をしています。まずはこちらを完成させたいですね。

やさしい日本語活用事例_小金井市_やさしい防災ガイド① やさしい日本語活用事例_小金井市_やさしい防災ガイド②

取材後 (ご) に、実際に完成した「小金井市やさしい防災ガイドブック」より抜粋。
やさしい日本語版・英語版・中国語版・韓国語版・ネパール語版があります。
小金井市やさしい防災ガイドブック:小金井市公式WEBへようこそ

 

天利 (あまり)

現在、市の職員を対象にしたやさしい日本語の研修を検討しています。今年度中に実施できればと考えていますが、まだ検討段階です。

兼 (かね) 堀

外国人対応については、現在各部署がそれぞれ対応しています。今後、やさしい日本語をひとつの手段として知ってもらい、外国人住民とのコミュニケーションに生かしていければと思います。

外国人住民とのコミュニケーションが必要なのは災害時だけではありません。ごみの出し方や騒音、交通ルールなど、普段の生活の中でもやさしい日本語を活用できる場面はあると思います。防災に限らず、さまざまな分野と連携しながら広げていければと考えています。

兼堀氏

市民部 コミュニティ文化課・協働文化係の兼 (かね) 堀さん