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株式会社セブン銀行 やさしい日本語で、ATMでの口座開設をもっとわかりやすく

左から、ATMソリューション部 ATM開発グループ デザイン担当・征矢野さん、
ATMソリューション部 ATM開発グループ 開発担当・鶴見さん
※所属部署は取材当時のものです。
全国に28,000台以上のATMを展開する株式会社セブン銀行は、提携金融機関の各種手続きをATMで行えるサービス「ATM窓口」を提供しています。2026年3月からは、外国人向け口座開設フローの一部画面に「やさしい日本語」を導入しました。
やさしい日本語導入の背景やATMならではの設計について、ATMソリューション部 ATM開発グループの鶴見さんと征矢野さんにお話を伺いました。
「ATM窓口」で外国人の口座開設を推進
――「ATM窓口」にやさしい日本語を導入するに至った経緯を教えてください。
「ATM窓口」とは、ATMで本人確認書類を読み取ることで、口座開設や住所変更などの手続きができるサービスで、2023年から始まりました。口座開設のサービスは現在11の金融機関に導入されており、銀行の窓口へ行かなくてもATM上で手続きを進められます。
外国人のお客様が銀行の窓口で手続きをする際、意思疎通や氏名・読み仮名の確認等に時間がかかってしまうという課題がありましたが、当社の「ATM窓口」をご利用いただくことで、お客様の負担を軽減できるだけでなく、窓口業務の効率化にもつながると考えています。
また、「ATM窓口」では以前から一部の画面で多言語対応を行っていましたが、社内や提携している金融機関から「今後、外国人のお客様の口座開設を推進していくため、案内をよりわかりやすいものにしたい」という声が上がり、外国人向けの案内を見直すことにしました。

ATMソリューション部 ATM開発グループ 開発担当の鶴見さん
――外国人向けの案内を見直す中で、どのような課題が見えてきたのでしょうか。
私たちが所属するATMソリューション部は、利用状況の分析を通してより使いやすいATMサービスの体験を検討しています。もともと「口座開設」の取引では、日本人のお客様を含め、手続きを完了しないまま終えてしまう方が一定数いるという課題がありました。その要因の一つとして考えられてきたのが、本人確認書類の読み取りの際の操作の複雑さです。
そこで、日本人のお客様でも分かりにくい操作は、言語の壁がある方にとってさらに難易度が高いのではないか、という仮説を立て、まずは本人確認のフローから改善に着手することにしました。
誰にでもわかりやすい案内をやさしい日本語で
――多言語化に注力するのではなく、やさしい日本語を選ばれた理由を教えてください。
一番の理由は、サービスを継続的に改善しやすいと考えたからです。
現在当社のATMではセブン銀行キャッシュカードのお取引で9言語、海外発行カードのお取引で12言語、情報変更の手続きは日本語と英語の2言語に対応していますが、すべての画面を多言語化するとなると、実装やその後の画面追加・変更にも多くの時間とコストがかかります。
誰でも使いやすい案内を追求していくためには、やさしい日本語を採用し、継続して改善していくことが、我々にとってもお客様にとってもよいのではないかという結論になりました。
口座開設は、日本で生活や仕事を始める外国人の方にとって最初に必要となる手続きの一つです。外国人のお客様の国籍や言語が多様化している社会背景から、より多くの方に伝わりやすいやさしい日本語を活用することが最適だと考えました。

ATM画面の案内のやさしい日本語への書き換え例
――ATMへのやさしい日本語の導入は、どのように進めましたか。
2025年9月から社内調整を開始し、当社独自のやさしい日本語ガイドラインの作成や、デザイン・開発、提携先との調整などを進め、2026年3月にリリースしました。
外国人のお客様にとって口座開設の操作が複雑であることは、以前から社内で課題として共有されていたので、やさしい日本語の導入に際する社内の意思決定はスムーズでした。
――独自のやさしい日本語ガイドラインは、どのように作成しましたか。
ATMへの導入は当社として初めてだったため、まずは、自治体等の活用事例も参考にしながら、有識者の方にも相談し、ATM向けのやさしい日本語のルールを設定し、ガイドラインとしてまとめました。これまで当社が取り組んできたユニバーサルデザインの一つとして、やさしい日本語の考え方や方針を決めていったほか、金融手続き特有の専門用語などをATMで使いやすい表現へと整理していきました。

ATMソリューション部 ATM開発グループ デザイン担当の征矢野さん
外国人のモニターや社員と進めた、伝わる画面づくり
――やさしい日本語のルールづくりでは、どのような点を意識しましたか。
工夫した点は、大きく二つあります。
一つは言葉の言い換えです。「在留カード」などの名詞は手続きの正確性に関わるためそのまま残し、動詞などはできるだけ分かりやすい表現に置き換えました。
たとえば、「読み取ります」は複合動詞で、日本語学習者向けの教科書ではあまり扱われない表現ですから、「読みます」に言い換えました。語彙や文法はJLPTのN4レベルまでを目安にしつつ、最終的には利用者が迷わず理解できるかを基準に判断しました。
もう一つは、情報を取捨選択し、必要な情報だけを伝えることです。ATMは画面の面積が限られているので、どこまで⾔葉で説明して、何をイラストやアニメーションで補足するのか、画面ごとにこだわって検討していきました。
――表現やデザインのわかりやすさは、どのように検証しましたか。
2025年11月に、国籍や使用言語、日本語能力が異なる8名の外国人の方にご協力いただき、モニターテストを実施しました。
本当にわかりやすい表現になっているかどうかは、日本語を母語とする私たちの感覚だけでは判断がつきません。お客様となる外国人の方に実際に在留カードを使って本番に近い環境で操作していただき、内容を理解して迷わず進められるかどうかを判断しました。
――モニターからの評価を通じて、発見はありましたか。
ルビをつけたことで、言葉の読み方と意味が結び付き、分かりやすくなったというポジティブな意見をいただきました。ルビのサイズや見え方について何度も調整を重ねたことが評価につながったのではないかと考えています。一方で、「(2画面のうちの)上の画面の案内に気づきにくい」など、言葉以外の部分に関するわかりにくさについてもご指摘いただき、非常に参考になりました。
その後は、当社の外国人社員にも、サービスをよく理解しているメンバーとして意見をもらいながら、さらなる改善を進めていきました。
やさしい日本語で、さらなるサービス向上を
――やさしい日本語をATMに導入し始めて、どうですか。
データ分析では、本人確認フローの離脱率において改善傾向が見られています。今後はやさしい日本語の対象範囲をさらに広げ、取引完了率を従来の約1.5倍まで高めることを目標としています。
やさしい日本語のガイドラインを作成したことで、すでに別のシステム改修でも活用されているほか、社内の別の事業部からも関心が寄せられています。今後もこうした取り組みは拡張していくと思うので、ガイドラインについても社内で広く展開していきたいですね。
――今後の展望について教えてください。
今後は、大きく二つの方向で展開していきたいと考えています。
一つは、口座開設フロー全体への展開です。今回対応した本人確認画面だけでなく、規約確認やお客様情報の入力画面にも対象を広げる準備を進めています。
もう一つは、口座開設以外の取引への展開です。外国人のお客様が言葉の壁を感じやすいほかの手続きにもやさしい日本語を広げ、より安心してサービスをご利用いただける環境を整えていきたいと考えています。
やさしい日本語を導入するにあたり、まず⾃分たちがどういうポリシーで取り組むかをしっかり決めてガイドラインを作ったことで、迷った際に立ち戻ることができる軸ができました。この軸があることで、今後やさしい日本語の対象を広げる際にも、迷わず取り組みを進められると思います。
今回は外国人のお客様に向けたサービスにてやさしい日本語を活用しましたが、金融手続きに難しさを感じるすべてのお客様に向けたサービスの向上においても、やさしい日本語の考え方は応用できると考えています。