社会福祉法人 三鷹市社会福祉協議会(みたか社協) やさしい日本語で市民と一緒に進める、誰もが安心して暮らせる福祉のまちづくり

東京都三鷹市で、地域福祉の向上を目指して活動する三鷹市社会福祉協議会(以下、みたか社協)。「誰もが安心していきいきと暮らせるまちづくり」の実現に向け、市民や福祉施設、福祉団体、ボランティアグループ、企業、町会・自治会、行政とともに、さまざまな事業を展開しています。
みたか社協では、コロナ禍をきっかけに、外国籍市民への支援として、やさしい日本語の普及と活用に取り組むようになりました。ホームページや広報誌では、やさしい日本語で事業内容を説明、職員や市民ボランティアを対象とする研修も実施しています。
取り組みの詳細について、総務課総務係の佐藤さんと黒澤さんにお話を伺いました。
外国籍市民を含む、すべての市民に利用してもらえる社協をめざして
――外国籍市民の支援に取り組むようになった経緯を教えてください。
2019年度末に開始した新型コロナウイルス感染症に関わる生活福祉資金特例貸付制度がきっかけとなりました。このとき、三鷹市内に住んでいる外国籍市民にも貸付を行ったのですが、かなりの人数の方が窓口を訪れたんです。とりわけ、飲食店で働いていたアジア圏出身の方が多く、お金以外にも支援が必要な場合は、地域福祉コーディネーターや市の生活就労支援窓口につないだりもしました。そこから、貸付やホームスタート事業(子どもが生まれたばかりの家庭の支援サービス)の外国語版パンフレットを作成し、事業を周知する取り組みが始まったんです。
私は20年以上、みたか社協で働いていますが、外国籍の方を支援する機会はあまりありませんでした。けれども、コロナ禍で実施されたこの貸付制度には国籍要件がなかったため、一気に多くの外国籍の方が相談に来られたんです。翻訳機などを使って、できる範囲でなんとか対応しましたが、これがきっかけとなり、いざというときに利用できるサービスがあることを、外国籍の方にも、もっと知っていただかなければという意識が生まれました。

みたか社協だより(2024年7月31日発行)
――その後、地域福祉活動計画の中に「やさしい日本語の普及」が明記されたそうですね。
みたか社協として、より本格的に外国籍市民の方々にアプローチしていくため、社協の事業の基本となる活動計画に、外国籍市民の支援に対する実践目標を掲げることになりました(『みたか社協2023 地域福祉活動計画Ⅶ』)。そして、「①市民や関係機関にやさしい日本語の普及啓発を行う」、「②外国籍市民に必要な社協の広報物をやさしい日本語で発行する」の2つが、具体的な取り組みとして記載されました。社協の職員や市民を巻き込みながら外国籍市民の支援を進めていくにはどうすればよいかと考えたとき、やさしい日本語が一番取り組みやすいのではないか、ということになったのです。
社協の職員全員で取り組んだ、やさしい日本語のホームページ
――具体的にどのように やさしい日本語を活用しているのか教えてください。
ホームページに外国籍市民向けのページをつくり、みたか社協の事業内容をやさしい日本語で説明した記事を公開しています。記事の制作に関しては、総務課の広報担当が取りまとめるのではなく、各係に任せました。担当している事業の中で何を取り上げるか、どのような内容にするか、そして やさしい日本語の文章をどうつくるかについても、それぞれの係の職員で相談しながら進めてもらいました。職員全員が やさしい日本語を意識するきっかけになるよう、みんなでページの作成に取り組んだのです。
みたか社協の職員は、ふだんから利用者に対応するときに、できるだけわかりやすく話すことを意識していると思います。ただ、文字にするときの意識は、これまであまり十分ではなかったのではないかと感じました。そこで、やさしい日本語の記事の制作に入る前に、職員向けのやさしい日本語研修をオンラインで実施、みたか社協が運営している学童保育所の職員も含め、100名を超える職員が参加しました。

―― やさしい日本語のページをつくる際、苦労したことはありましたか?
やさしい日本語の文章をつくるのは、やはり難しかったですね。社協の事業の説明には福祉分野の専門用語がつきものですし、日本人でも難しい言い回しが多いため、どのようにやさしくしたらよいのか悩みました。「やさにちチェッカー」で確認しながら作業を進めましたが、わかりやすくしてみたものの、これで本当に伝わるのだろうかと、不安に感じました。 結局、細かなところまで説明しようとすると、かえってわかりにくくなってしまうと気づいたため、思い切って必要最低限の情報に絞ることにしたんです。「もっと知りたい人は、電話かメールをしてください」と記載して、窓口に来ていただくきっかけになるよう工夫しました。完成するまでに時間がかかりましたが、職員みんなで試行錯誤しながら制作できたことは、とても良かったと思っています。
―― やさしい日本語のページの公開後、何か反響はありましたか?
残念ながら、当事者からの反響は聞けていないんです。でも、ふだん私たちの事業に関わってくださっている市民の方から、「社協でこんな取り組みをしているんだね」「外国人住民が増えているんですね」といった反応がありました。やさしい日本語をきっかけとして、外国籍市民に向けた取り組みの必要性を意識していただくことにつながっているのではないかと感じます。
さまざまな人が利用する社協として、やさしい日本語に取り組むことの意義
―― 実は、もともとご高齢の方や障がいのある方にやさしく伝える工夫をされていたそうですね。
私は以前、高齢者や障がい者など、判断能力が十分でない人が安心して暮らせるよう支援する権利擁護センターを担当していました。同センターでは、少しでも理解の助けになるよう、サービスの利用契約書などはふりがなを振ったものを用意し、わかりにくい部分については、内容をかみ砕きながら説明するようにしています。やさしい日本語は、外国人以外のこうした利用者にとっても助けになるものだと思うので、今後、書類のやさしい日本語化にも少しずつ取り組んでいきたいです。
みたか社協の広報誌でも、年に1回程度、やさしい日本語の記事を掲載しています。外国人だけでなく、障がいのある方にとっても、わかりやすく、読みやすい情報を提供していきたいと考えています。

―― 市民ボランティアの方に向けた研修も行われていますね。
みたか社協では、地域の見守り活動など、市民ボランティアの方々と一緒に福祉のまちづくりを行っていて、そうした方々に向けた研修を何度か実施しました。やさしい日本語を知っていただきたいのはもちろんですが、自分たちの活動をPRするチラシやパンフレットなどをつくる際に、やさしい日本語を役立ててもらえたらと考えたんです。
―― 市民のみなさんは、やさしい日本語についてどのように受け止めていますか。
地域福祉活動計画について、設定した目標に対して実際どのような取り組みができたのかを年度ごとに市民のみなさんと一緒に評価するのですが、その中で市民の方から、「やさしい日本語って本当に必要なんですか?」と問われたこともあります。けれども、市内の外国籍市民が増えていることや、高齢者や障がい者にも伝わりやすくなることを説明したうえで、「だからこそ社協としてやさしい日本語に取り組んでいきたいんです」とお話しすると、「それはいい取り組みだから、やった方がいいですね」と納得していただけました。

―― みたか社協では、やさしい日本語に取り組んだことで何か変化はありましたか。
ホームページの記事制作を職員全員で行ったことをきっかけに、窓口対応はもちろん、施設内の表示や広報物をつくる際にも やさしい日本語を意識するようになりました。
今後の課題は、職員一人ひとりの意識が薄れることなく持続させていくことだと感じています。これから新しく入職する職員もいるので、今回、実際にやさしい日本語に挑戦したことでわかった難しさや活用のコツを共有しながら、定期的に自分たちがやっている事業をやさしい日本語で表現したり、みんなで考えたりする機会を作っていきたいですね。
