やさしい日本語

活用事例

すかいらーくホールディングス 外国人スタッフと一緒に作った結果、採用サイトがやさしい日本語に

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人財本部人財採用グループ クルー人事採用チームリーダーの芝山英也さん

「ガスト」や「バーミヤン」「ジョナサン」などを展開する、外食大手のすかいらーくホールディングス。国内にはグループ店舗が約2900店ほどあり、そこでは約1800名ほどの外国人が働いています。しかも、その国籍は中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ネパールと多彩です。

 

今後日本の労働人口が減っていくなかで「積極的に外国人を含む多様な人材に活躍いただく」という方針のもと、2022年4月、自社の採用情報サイト「Skylark Career」に外国人採用ページを設置。そこから、さらに外国人に寄り添ったわかりやすいサイトを目指して早々にリニューアルに取りかかり、2023年5月に現在のスタイルになりました。

 

リニューアルしたサイトは研修の様子や面接の流れを動画で紹介しているほか、出身国の国旗とともに外国人スタッフの写真を多数掲載し、生き生きと働いている様子を伝えています。さらに、やさしい日本語を用いて、福利厚生や具体的な仕事内容をわかりやすく案内しています。

 

その一例を挙げると…

・ご飯が 1食356円で 1日2回まで 安く食べられます。

・家から 店までの 電車のお金が 1か月 最大で 2万円まで もらえます。             

・働いた 次の日に 給料が もらえる制度が あります。

 

このように一文が短く、ひらがなと平易な漢字を使った短い文で構成。ふりがなをつけ、難しい敬語は使わない、といったやさしい日本語のポイントを押さえたものになっています。

 

 

各店舗を訪問し、外国人スタッフにヒアリング

 

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「Skylark Career」の外国人採用ページ

「ただ、正直申し上げると『やさしい日本語を使おう』と意識したわけではないのです。外国人のみなさんに寄り添ったものにする、というのを最大のテーマとしてリニューアルを進めていったら、結果的にやさしい日本語になったんです」

 

そう語るのは、サイトのリニューアルプロジェクトを牽引したすかいらーくホールディングス人財本部人財採用グループクルー人事採用チームリーダーの芝山英也さん。じつは、サイトのリニューアルにあたって、専門家の監修を受けたわけではないそうです。プロジェクトメンバーが手分けをして各店舗を訪問。店舗で働く外国人スタッフや、一緒に働いている店長に意見を聞きながら表現の一つひとつをブラッシュアップしていったのだそう。

 

「最初はすべてひらがなで書かれた文章だったんです。でも、ひらがなだけより簡単な漢字を織り交ぜたほうがわかりやすいという意見があって見直しました。われわれが『わかりやすいだろう』と思うことと、外国の方にとっての『わかりやすい』は違うんですよね」

 

現場の声をヒアリングしていくなかで、さまざまな発見や気づきがあったと芝山さんは言います。

 

「そもそも、『すかいらーく』と言っても伝わらないんです () (わらい) () 。そのため、『ガスト』『バーミヤン』『ジョナサン』など、普段、目に触れているであろう店舗名を前面に出しました。あと、たとえば、『注文を受ける』は『注文を聞く』、『料理を運ぶ』は『料理を持っていく』など、こまかな表現を一つひとつ調整していきました。」

 

また、サービス業では大切にされる丁寧な () () 回しも見直しの対象に。「お店」や「お仕事」など、接頭語の「お」は外国人の方にはわかりにくいということで、すべて削除したそうです。

 

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2023年12月現在、1800人ほどの外国人スタッフが働いています

「長く働いてくださっている外国人スタッフの多くは、店舗で働くなかでどんなときに日本語に困ったかを経験しています。そのため、こちらが何を知りたいのかすぐにわかってくれて、スムーズにヒアリングができたと思います。私たちが『こうしたほうがわかりやすいんじゃないか』と考えていたことと違ったりもしました。直接、会って話を聞いたのは本当によかったと思います」

 

 

リニューアルで閲覧数が4倍に!

「これ、わかる?」

「もっと、伝わりやすい () () 方はあるかな?」

メンバーと現場スタッフとの間で、そんなやりとりを重ね、新しい「外国人採用」ページが完成しました! 

 

それまで月間2000〜3000PVだったアクセス数が、リニューアル後は月間8000〜9000PVと4倍にまで増加。アクセス数の増加は応募数に影響を与え、採用にもつながっているといいます。

 

また、2023年7月には、やさしい日本語を用いた求人サイトとしてネットニュースで取り上げられ、SNSでも話題に!なんと、1か月で39万件のアクセスを集め、「わかりやすくていい」「すばらしい」といった称賛の声が寄せられたそうです。

 

「もっともっと、外国人の方に寄り添ったものにしていきたいと思っています。たとえば、働く場の雰囲気がよりわかりやすい動画を入れたり、『すかいらーくでアルバイトをしませんか?』というメッセージを拡散できるようなボタンを埋め込んだり。さらにブラッシュアップしていけるよう、新しい取り組みも検討しているところです」

 

リニューアルプロジェクトによって実践的にやさしい日本語に実践的に取り組んだ経験は大きかったようで、今後の展開について、次のように話してくれました。

 

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現在も外国人スタッフに対するさまざまなサポート体制を検討しています

「現在、店舗で使っているマニュアルですが中国語やベトナム語などで多言語化はしているんです。でも次回、更新するときにはこのリニューアルプロジェクトで得た“やさしい日本語の目線”で内容の見直し進めていきます。その (ほか) 、ポスター・リーフレットなども、外国人向けのものを新たに制作していく予定です。」

 

もともと、社内環境整備方針として、「職場環境・ 働きがい」を大切な価値観として掲げているすかいらーくホールディングス。外国人採用に関しても、仕事の悩みに限らず、生活の困りごとの相談にのる「グローバル人財相談窓口」を設置したり、中国、ベトナム、スリランカ出身の社員を含む「外国人採用インストラクターチーム」が新人トレーニングにつき添ったりと、サポート体制を充実させています。

 

こうした価値観が根づく会社に、やさしい日本語の目線が加わった意味は小さくなさそうです。

 

「外国人スタッフのみなさん、本当に一生懸命、働いてくださって、弊社にとって欠かせない“人財”です。だからこそ『ここで働いてよかったな』『明日も頑張ろう』と思ってくれる人が一人でも増えてほしいと考えています。さらに大きな話になってしまいますが、われわれの取り組みが『日本で働いてよかった』ということにつながったらうれしいですね」