やさしい日本語

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一般社団法人スローコミュニケーション 「わかりやすさ」を作り「わかりやすさ」に関わる人たちを支援する

「わかりやすさ」をすべての人に届けるためにニュースを発信

 知的障害のある方や情報理解に難しさを抱える人たちに向けて必要な情報をわかりやすく届けるとともに、情報を発信する側にもわかりやすい情報提供のあり方を伝えるなど、知的障害のある方へのコミュニケーション支援を行っているのが、一般社団法人スローコミュニケーション(以下、スローコミュニケーション)です。

 

 発端は、知的障害のある方の親の会である全日本()をつなぐ育成会(現、全国()をつなぐ育成会連合会)が発行していた、知的障害者に情報を提供する新聞「ステージ」でした。
 知的障害のある方の社会参加や就労を進めるために、彼らが必要としている情報をわかりやすく伝えたいという思いと、当事者も制作に加わり 20 年近く積み重ねられてきたノウハウを引き継ぎ、「わかりやすい文章、わかちあう文化」をテーマに研究と啓発活動を続けています。その活動について、副代表の打浪(うちなみ)文子(あやこ)さんにお話をお聞きしました。

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お話を伺ったスローコミュニケーション副代表で、立正大学社会福祉学部准教授の打浪(うちなみ)さん。



 スローコミュニケーションでは、週に 1 回、知的障害のある方に向けて、ホームページとアプリ上で「わかりやすいニュース」などを発信しています。
 取り上げるニュースの選定やわかりやすい表現について、知的障害のある方の意見も聞きながら、障害のある方の生活にダイレクトに関わるものや、その週でもっとも知りたいであろうテーマを選んで、一緒に「わかりやすい」記事を作ります。
 当事者からもよく、「このニュースを取り上げて」という声が上がってくるそうです。彼らが「知りたい」と思った時に情報を提供できることが大切なのだと打浪(うちなみ)さんは感じています。

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ニュースは、国内、海外、障害のこと、解説の 4 種類のカテゴリーに分けられ、音声でも提供しています。


 わかりやすいニュースにとって特に重要なことは「情報の絞り込み」です。打浪(うちなみ)さんは、以下の事例でその説明をしてくれました。

 

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自民党総裁を決める総裁選のニュースを、必要な情報のみに絞り込んでわかりやすくしています。

 

 心がけていることは、情報の優先度を整理して、「この文章で伝えたいこと」を絞り込むことと、そのニュースの背景まで丁寧に説明することです。それにより、知的障害のある方にも、よりわかりやすく情報を伝えることができます。

 

情報発信のための「わかりやすさ」を作るコツを伝授 

 スローコミュニケーションは、わかりやすい情報提供をしたい企業や行政、福祉事業所などに、情報発信のあり方をアドバイスしたり、文書や資料をわかりやすくしたりなどのサポートも行っています。
 情報を発信する側への働きかけとして、『「わかりやすさ」をつくる 13 のポイント』という冊子を制作しました。知的障害のある方や言葉の理解が難しい人向けに「わかりやすい」文書を作成するためのポイントと解説、例文が、イラストとともにまとめられています。

 

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冊子『「わかりやすさ」をつくる 13 のポイント』(https://slow-communication.jp/info/1428/

 

 「知的障害のある方と言っても、一人ひとり状態や特徴、程度が違いますし、『わかりやすさ』にも段階があるんです」と打浪(うちなみ)さんは言います。
 「写真と数行(すうぎょう)の文という形が最も伝わりやすい障害の重い(かた)から、ふりがなを入れ、見せ方の工夫をすれば理解できる(かた)まで様々です。ですから、情報を届けたい相手によって、アウトプットするものも変わってきます」(打浪(うちなみ)さん)

 

 「具体的に説明する」「文章は適度に短くする」「漢字の連続を避ける」などは、やさしい日本語と共通するポイントです。加えて、知的障害のある方特有の注意点としては、障害の特性に合わせて表現を変えていくことが重要です。


 たとえば、言葉のみの説明では理解が難しい「視覚優位」という特徴を持つ人のために、文章だけでなくイラストや写真などを多用したり、一度に複数のことを処理できない、すぐ忘れてしまうなどワーキングメモリー(短期記憶)に問題がある人のために、指示語をなるべく使わず、前後の文で重複する部分を作ったりといったことです。(「のりしろ」をつくるという言い方をします)

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13 のポイントの一つである、のりしろのつくり方を説明しています。

 

知的障害のある方と一緒に「わかりやすさ」を 

 コロナ禍で世の中の変化が著しい中、知的障害のある方の中には、ステイホームによりエネルギーが上手に発散できず辛い状況に陥ってしまった人もいれば、ソーシャルディスタンスが推奨され、床にシールが貼られるなど人との距離が”見える化“されたことで、落ち着いて生活ができるようになった人たちもいるそうです。
 このような社会の変革によってもたらされた良い面は、引き続き継続させていきたい、と打浪(うちなみ)さんは考えます。

 

 「うまく情報が伝わらなかったり、あるいは思いをどう表現していいかわからなかったりすることが、知的障害のある方たちの困難をより大きくしています。情報の受発信のハードルが小さく低くなるように、これからも彼らにとって必要な情報を提供し、日々の生活の助けになるものを一緒に作っていきたいです」(打浪(うちなみ)さん)

 

 スローコミュニケーションでは、今後もいくつかの行政と、行政情報のわかりやすい版の制作や(それに合わせて)当事者も参加できるワークショップなどを企画しています。
 たとえば、神奈川県横浜市とは各種パンフレットのわかりやすい版の制作、愛知県豊田(とよた)市とは成年後見制度のわかりやすい版の制作やワークショップの開催を予定しています。

 

 「外国人向けのやさしい日本語を普及する活動も全国に広がりつつあると感じています。そこに、知的障害のある方には、さらにこういう表現をするとわかりやすくなるといった情報を加味できればいいなと思います。そして、やさしい日本語や『わかりやすさ』を活用する取組が全国に広がっていく支援ができたらと考えています」と、打浪(うちなみ)さんは展望を語ってくれました。

 

 「最後にもう一つ、より多くの当事者の(かた)と一緒に働ける環境を作れたら嬉しいです。彼らが理解しづらいことを、『これがわからない』『こうしてほしい』『こうだとわかりやすい』と提示してくれることが仕事として成り立つ、そんな社会が実現できたらいいですね」(打浪(うちなみ)さん)

 


 

スローコミュニケーションの「言い換え検索」機能

 スローコミュニケーションのホームページでは、わかりやすい文章をつくるための「言い換え検索」機能も提供しています。

 

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 文章を入力すると、難しい言葉が赤色で表示されます。また、知的障害のある方にとって難しい言葉の言い換え例が提示され、表現を分かりやすくする際の参考になります。

スローコミュニケーション ホームページ

https://slow-communication.jp/

 

【取材日:2020 年 12 (がつ) 28 日】

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