NPO
生活情報ネットあ・つ・み 「やさしい日本語」で届ける生活情報 そして交流・共生へ
地域密着の生活情報紙「わたしのまち」
生活情報ネットあ・つ・み、月刊「わたしのまち」を発行し、行政サービスや生活に役立つ情報をやさしい日本語で地域社会へ届ける活動を長年にわたって行っています。
編集・発行に携わる中島さん、平塚さん、村上さん、山本さんに、お話を伺いました。
立ち上げのきっかけは、1997 年に横浜市海外交流協会(現横浜市国際交流協会:YOKE)が実施した外国人日本語学習者への日本語と生活に関するニーズ調査でした。行政が発信する情報が外国人に伝わっていないため、必要な情報が届かず、毎日の生活に支障をきたしている外国人が多く存在するという現状が明らかになりました。そこで、YOKEが在住外国人向けに発行している多言語情報紙「よこはま yokohama」の日本語版の発刊から携わったメンバーが発起人となり、2003 年に活動を始めました。
生活に必要な情報を、届けるべき人に届けたい。この思いを形にするため、日常生活に密着した地域の生活情報紙「わたしのまち」を発行しています。常に新しい情報が手に入るよう月刊とし、予防接種や健康診断、各種イベントなど、地域の生活情報をやさしい日本語にして伝えています。
「あ・つ・み」の名前は、活動エリアである横浜市青葉区・都筑区・緑区の頭文字。地域密着の生活情報を届けるため、3区の広報担当も全面協力してくれています。
「やさしい日本語」は紙面づくりの大事なツール
「わたしのまち」はできるだけ多くの人にとって分かりやすい紙面にするため、発刊当初からやさしい日本語で発信しています。多言語に展開するには限界があるため、簡単で読み取りやすい日本語にすることが最も効果的なのです。具体的には、外国語としての日本語学習でいう初級文法の範囲で一文を短めに書くよう努めています。生活上必要な言葉には漢字を使い、全てルビを付けます。また文節分かち書きにすることも大切にしています。
さらに、やさしい日本語は、外国人だけでなく、高齢者や日常生活で複雑な日本語を理解することが苦手な人にも分かりやすく好評だと平塚さんは言います。
「ご高齢の人からも『わたしのまち』は文字が大きくて、文も簡単だから読みやすいと評判がいいんですよ。やさしい日本語は外国人だけでなく、地域と多様な人々をつなぐコミュニケーションツールでもあるのです」(中島さん)
印刷から Web へ 伝わり方も時代に合わせて変化
メンバーは月 1 回集まって編集会議を開催し、テーマや掲載する記事を決定します。メンバーそれぞれが 3 区から情報を集めてやさしい日本語に書き換え、メールで互いにチェックし合いながら原稿を仕上げます。
2018 年 3 月までは印刷物で発刊。地域の子育て支援拠点や日本語教室、駅の PR ボックスなどに配架していました。現在はホームページに PDF データを掲載することで、誰でも、どこからでもアクセスできるようになりました。
デジタルデータになったことでフルカラーの紙面となり、目立たせたい文字に色を付けて強調したり、カラーのイラストを使ったりと、より分かりやすくなっています。
一方で、紙で発行していた時より読者の反応が分かりづらくなったという一面も。Web の情報は自らアクセスする必要があり、データをアップしただけでは情報を本当に必要としている人たちに受け取ってもらえたかどうか分かりません。
「必要な人に情報を届ける課題が大きくなっていると感じます。対面だと反応も分かるのですが、Web は印刷物とは違い、自ら情報を探す必要があります。日本語がある程度できる外国人は自分からアクセスして情報を取りに行くこともできますが、初級者だとそれも難しく、掲載していても素通りしてしまう。生活している地域の中で、必要な情報を得ることができれば、一番良いと思います。そのためには、もっと『やさしい日本語』というものが、広がっていってほしいと思います」(村上さん)
「やさしい日本語」を共通言語にして交流
外国人が日本で自ら情報を取得できるようにするために、やさしい日本語によるコミュニケーションの浸透が不可欠だと山本さんは言います。
「私自身、子育てをしていた頃、ドイツに 7 年いたのですが、生活や子育てなどの情報が分からず不安なとき、周囲のドイツ人たちがとても親切に、繰り返し分かるまで話しかけてくれて救われた経験があります。やさしい日本語は、日本で生活するためのやさしいコミュニケーションの第一歩だと感じています」(山本さん)
18 年間の情報紙発行を通じて見えてきたのは、やさしい日本語で生活情報を届ける先にある「やさしい日本語を通じた交流の大切さ」でした。
「イベントなどでやさしい日本語を使う機会を増やすのが一番。救急車を呼ぶ方法の練習や、地震・浸水などの災害の講座、街歩きで交番に道を聞いたり、落とし物を届けたりなど、いろいろな学びや体験を企画してきました。日本人と外国人が一緒に参加し、やさしい日本語を共通の言葉にする中、分かりあったり、つながったりができていくのです」(平塚さん)
やさしい日本語は、外国人と日本人の壁を取り払い、地域でつながっていく強力なツールになります。中島さんは、救急車を呼ぶ体験イベントで、ガーナの人が「ともだち、ともだち、だいじょうぶ!?」と呼びかけた時の様子が忘れられないと語ります。
「一気に場の空気がやわらいだのを感じました。壁がなくなった瞬間でした。そのほかにも、水害の勉強会でロシアの人から『ぼくたちにできることはなんですか』と問いかけられたことがあります。外国人は、決して何かをしてもらおうと待っている存在ではない。地域の中で一緒に生活し、助け合う存在だと改めて気づかされました」(中島さん)
「わたしたちの活動の原点は『日本語が難しくて困っていませんか?』と呼びかける姿勢。これはずっと変わりません。ただ、行動のあり方は時代とともに変化します。これまでは、外国人へいかに情報を届けるかという視点で、やさしい日本語による情報発信を続けてきました。これからは、やさしい日本語を使って交流を促し、お互いを理解し、共に生きるという姿勢が、より重要になってくるのではないかと感じています」(中島さん)
生活情報ネットあ・つ・みのやさしい日本語発行物
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https://yasashiinihongo-atsumi.jimdofree.com/
【取材日:2021 年 3 月 23 日】