やさしい日本語

活用事例

企業

株式会社ダンク 「やさしい日本語」× ユニバーサルデザインを社会に広げたい

「やさしい日本語プロジェクト」の立ち上げ

 株式会社ダンクは、1994 年に広告校正・校閲のプロフェッショナル集団としてスタートし、様々な分野の広告編集を手掛けてきました。現在、編集やデザインのもつ「分かりやすく伝える力」と「やさしい日本語」を活かしてサービスを提供しています。ダンクの皆さんが取り組む「やさしい日本語プロジェクト」についてお聞きしました。

やさしい日本語_Leaflet_14-1
左から、株式会社ダンクでやさしい日本語プロジェクトのメンバーとして活動する、田中さん、森さん、桑島さん。

 

 ダンクがやさしい日本語と出会ったのは、お客さまから「やさしい日本語で編集をお願いできますか?」と問い合わせを受けたことが始まりでした。
 当時は知識がなく、お断りをしましたが、やさしい日本語を調べていくうちに、編集のあり方や、多様な情報発信の手段につながる興味深いテーマだと確信しました。

 

 編集では「分かりにくいものを分かりやすくする」伝え方を大切にします。やさしい日本語はその方針と親和性があると感じたのです。
 世の中の媒体は、紙面(しめん)でも WEB サイトでも、伝えるためになるべく多くの情報を詰め込みがちです。やさしい日本語はその逆。情報を絞り込み、シンプルにすることで分かりやすく伝えます。
 いかに分かってもらうかという点では、ダンクが得意とする編集、デザインの本質と同じです。
 こうしてやさしい日本語プロジェクトが新しい事業として立ち上がりました。

 

「やさしい日本語」× ユニバーサルデザインでよりわかりやすく 

 やさしい日本語プロジェクトは、初めのうちは試行錯誤が続きました。やさしい日本語は、機械的に書き換えるだけではうまくいきません。また、あれもこれも伝えようと情報を多くしても分かりづらくなってしまいます。
 言葉を削るのは勇気がいる作業です。少ない文字や文章で伝わるように編集する必要があります。

 

 重要なのは、語彙も文法もシンプルにした文章と理解を助けるイラストとのバランス、認識しやすく情報に強弱をつけた配置です。そして、伝えたい情報と利用者が知りたい情報を的確に理解することが重要だということも分かってきました。
 やさしい日本語を用いたデザインは、誰もが理解できる状態を目指す「ユニバーサルデザイン」の本質といえます。

 

 やさしい日本語による編集が形になったものの一つに、NHK 放送博物館のコインロッカーと傘()ての利用案内があります。
 導入を進めた NHK 放送文化研究所の冨樫さんにお話を伺いました。

 

 「博物館では、外国人はもとより日本のお年寄りや子どもにも分かりやすいユニバーサルデザインを目指し、やさしい日本語を館内の表示に取り入れようと考えていました。その手始めとして、まずはコインロッカーと傘()ての使い方を分かりやすくしてみようとデザインを依頼したのです。
 館内(かんない)でイベントを企画・運営する担当者などが『この表示のしかたはおもしろい』と興味をもたれるなど、認知が広がっていくのを感じます。やさしい日本語が自然と目に入るよう館内の展示物にも工夫していきたいです」
(NHK 放送文化研究所 冨樫さん)

 

 現在はコロナ禍で来館者を制限しているため、本格的な使用はこれからですが、周囲の反応は上々です。

 

やさしい日本語_Leaflet_14-2やさしい日本語_Leaflet_14-3
コインロッカーの使用法をやさしい日本語を用いてデザインした例。次にすべきことがイラストで分かりやすく示されていて、文字も極力使用していないことが分かります。

 

 できるだけ簡単な言葉に絞り、使う際の手順をイラストにして直感的に分かるようにしました。注意が必要なところは強調し、ロッカーから離れたところに掲示していた利用案内はシールにしてロッカーの扉に貼り、自然と目線がいくように配置も工夫しました。

 

「やさしい日本語」をコミュニケーションのインフラに

 作り()がどれだけ一生懸命でも、実際にエンドユーザーが理解できていなければ意味がありません。そこで、これまでにやさしい日本語を使ってデザインしたものを外国人に見てもらい、理解できるか確認を行いました。また、併せて日常で分かりづらいと感じる表現やコミュニケーションをするうえで困っていることなどもヒアリングしました。

 

 「やさしい日本語は概ね理解しやすい」という結果になりました。ただ、文化や考え方、価値観の違いから、人によって表現の捉え方は様々だということも見えてきました。

 

 例えば、「服用」という言葉は熟語で理解できず、「服」という漢字に引きずられて薬を飲む意味だと連想できない。「ポイ捨て」の「ポイ」などの擬音語が分からない。このような外国人にとって分かりづらい言葉はイラストやデザインで補うべきだと分かってきました。

やさしい日本語_Leaflet_14-4やさしい日本語_Leaflet_14-5
実際に外国人にヒアリングをした結果、熟語は難解であることが分かった一例。「最寄り」という単語の「最」は外国の方には聞き慣れないため、「一番」という聞き慣れた言葉に言い換えを行います。

 

 言葉の問題の先には生活習慣・文化の問題があります。ヒアリングを通して感じたのは、時間感覚の違いなど、考え方や価値観の違いを感じる点が多くあったことです。
 やさしい日本語は、言語ツールであると同時に、相手の文化や考え方に対する理解を深めるという重要な役割を果たしています。

 

「やさしい日本語」の可能性を広げて 

 ダンクにとってやさしい日本語は、日本人がすぐに始められる多言語対応のツールであり、事業戦略としても広げていく価値があるものだと言います。
 ダンクでは、やさしい日本語のセミナーを開き、やさしい日本語の背景や必要性、具体的にどのようなものにすればよいのかなど、基本な考え方について、活用事例(書き方の事例)を交えて伝える取組も始めています。

 

 「やさしい日本語はもはやコミュニケーションのインフラです。外国の人たちから『やさしい日本語でお願いします』と指定されるような、第 2 の言語になってほしいと考えています。
 やさしい日本語には正解がないと言われるが、伝わることが答え。これからも、テキスト・イラスト・配置と、ユニバーサルデザインでやさしい日本語をカスタマイズし、伝わるツールとして社会に広げていきたい」(森さん)

 


 

ダンクの「やさしい日本語」での編集例

 ダンクの特徴である図解やイラストを多用することで、粗大ゴミの出し方をやさしい日本語化した例。直感的に行動できるようになっています。

 

やさしい日本語_Leaflet_14-6やさしい日本語_Leaflet_14-7

 

ダンク ホームページ

https://www.dank-yasanichi.jp/

 

【取材日:2021年 2 (がつ) 2 ()

PDFで見る