やさしい日本語

活用事例

NPO

大阪市手をつなぐ育成会 「やさしい日本語」を活用し知的障害のある人に「伝わる」支援を

知的障がいのある人を助ける情報を「やさしい日本語」で発信 

 大阪市()をつなぐ育成会は、知的障がいのある人とその家族に対し、心豊かでいきいきとした毎日が送れるよう様々な支援を行っている団体です。昭和 34 年に、知的障がいのある子どもを持つ親が集まり結成した「親の会」からスタートし、現在は全国に 55 ある手をつなぐ育成会の中の一団体として、市内で7カ所の事業所を運営。障がいのある人とその家族に寄り添いながら活動を行っています。

 

 やさしい日本語を用いて情報を発信している大阪市()をつなぐ育成会。事務局長の飯塚さんに、どのようなことを意識してやさしい日本語を活用されているのかお聞きしました。

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大阪市()をつなぐ育成会の飯塚さん。

 

 平成 25 年、障がい者差別解消法が施行され、民間企業にも障がいによる差別解消の努力義務が課せられるようになり、市民からもやさしい日本語を広めたいという意見が届きました。当事者団体が率先して模範となるべきだろうと考え、やさしい日本語での情報発信に積極的に取り組み始めました。

 

 大阪市()をつなぐ育成会では、行政が 3 年ごとに作成することになっている大阪市障がい福祉計画について、大阪市と協働して「わかりやすい版」を作成しました。行政主導で障がい福祉計画の「わかりやすい版」を作成している例は少ないと飯塚さんは話します。

 

【大阪市障がい福祉計画わかりやすい版 _ 書き込み後】

 

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行政からの文章は、やさしい日本語の作成ルールにある日本語能力検定 4 級・5 級(小学生低学年程度でも理解可能な日本語)の難易度を基準にしています。

 

 行政からの案内をやさしい日本語にした例としては、国政選挙も挙げられます。選挙の一般的な手順を解説したリーフレットを作成することで、知的障がいのある人に選挙への理解を深めてもらい、投票につなげられるよう支援しています。

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やさしい日本語を使って、投票のしかたを丁寧に解説し、選挙への参加を促しています。

 

 「投票所へ行って選挙をする方法は分かっても、候補者が何を話しているのかが分からないという問題がありますし、投票という行為自体にも課題はあると思います。選挙公報にも知的障がいのある人に伝わるようにやさしい日本語を使用したり、投票自体も、◯×で書くようにしたりなど、ハードルを下げる気配りが必要なのではないでしょうか。このような細かい配慮も、大きな意味でやさしい日本語ではないかと思います」と飯塚さんは言います。

 

これからもあらゆる人に「情報提供のバリアフリー」を 

 大阪市()をつなぐ育成会ではやさしい日本語が浸透してくる前から、知的障がいのある人に向けて実際にものを指したり、イラストや図を使用したり、ジェスチャーを交えたりして、言葉だけでなく、様々なアプローチで伝える努力をしてきました。例えば、お腹が痛いということを、実際にどの当たりなのか指で差してもらったり、時計の文字盤を見せて時間を伝えたりしています。

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イラストを見て状況や伝えたい内容を判断できるよう工夫しています。

 

 さらに今、これまで現場レベルで積み重ねられてきた伝える努力にやさしい日本語が加わり、「二重否定やあいまいな表現を避ける」「文末表現を統一する」など、文章表現のルールが明確化されたことが、情報を伝える側への助けとなりました。文字ベースでの取組も増え、障がいのある人により分かりやすく情報を届けられるようになってきています。

 

 たとえば、新型コロナにより生活様式も変わってきている今、全国()をつなぐ育成会連合会ではポスターを作成し、注意喚起をしています。

 

【ポスター】

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文字による情報伝達が難しい人にも伝わることを念頭に、イラストとやさしい日本語で表現しています。

 

 「ちょっとした表現のルールが頭にあるだけで、だれでもやさしい日本語を使うことができる」と飯塚さんは言います。

 

 「外国にルーツがある人の場合、変換アプリがあれば情報伝達には事足りるケースもありますが、知的障がいのある人や高齢者などに対しては、言葉を変換するだけではなく、イラストや写真を添えて視覚に訴えるといった、伝えるためのちょっとした配慮も重要です」(飯塚さん)

 

 「多様性を受け入れる社会になりつつある昨今(さっこん)では、もっと一般の人にもやさしい日本語の考え方が広まって、どんどん使ってもらえたらと思います。そのためにも、一般の人でも取り組みやすい仕組みができればいいですね」(飯塚さん)

 

「やさしい日本語」に正解はなく「伝わる」ための試行錯誤が重要 

 大阪市()をつなぐ育成会では、やさしい日本語をより活用するために、広報紙で「わかりやすい版」の作り方の紹介や、市民向けへの啓発も積極的に実施しています。

 飯塚さんがやさしい日本語を広めるために作成した研修資料を紹介します。

 

【研修資料パワポ】

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やさしい日本語について研修用にまとめたパワーポイントの一部です。分かち書きのポイントや「伝える」ことと「伝わる」ことの違いを理解してもらえる内容となっています。

 

 全国組織の()をつなぐ育成会が、お互いにノウハウを共有し情報交換しながら、それぞれの行政に働きかけ、やさしい日本語を拡げていければと、飯塚さんは考えています。

 

 「やさしい日本語に正解はなく、何をもって『やさしい』と言えるのか、その基準は相手によって違ってきます。伝えたい相手は、知的障がいのある人、外国にルーツがある人、認知機能が低下した高齢者、小さな子どもなど様々です。相手の表情、状況によって、発信する側が臨機応変に対応していく必要があります。大切なのは、『どうしたら相手に伝わるか』ということ。相手の反応を見ながら、マニュアルや手段に限定されず、試行錯誤を続けることです。相手の立場を思いやる気持ちが、最も重要なのです」(飯塚さん)

 

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【取材日:2021 年 1 (がつ) 7 ()

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