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板橋宿:歴史ある旧中山道を歩こう

東京の北西部、板橋区に位置する板橋宿 (いたばししゅく) は、江戸(現在の東京)と京都を結ぶ歴史ある内陸部の街道「中山道」の最初の宿場町だ。江戸時代(1603~1868年)、板橋宿は大名や商人が (みやこ) である京都と江戸を行き来するのに欠かせない宿場であった。中山道に置かれた69カ所の宿場の中でも江戸側の最初の宿であった板橋宿 (いたばししゅく) は、重要かつ最も大きい宿場町の一つで、「上宿」「仲宿」「平尾宿」の3つの地域に分けられていた。江戸から京都へ向かう者には山を越える危険な長旅の最初の宿場であり、京都から江戸に向かう者には武士が将軍家を訪れる前に立ち寄る最後の宿場でもあった板橋宿。そこでは400年以上が経った今もなお、かつての勇敢な旅人たちが通った道を歩き、当時の様子を思い描くことができる。

The Sixty-nine Stations of the Kiso Kaidナ・(Public domain).jpg渓斎英泉 (けいさいえいせん) による板橋宿を描いた浮世絵(版画)。「木曾街道六十九次」の連作の一部。

スタート地点

「板橋宿」を散策するにはいくつかのスタート地点があるが、分かりやすいのはJR板橋駅と新板橋駅(都営三田線)の2箇所だ。

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近藤 (いさみ) の墓

JR板橋駅東口から広場を横切り30秒ほど歩くと、日本で最も有名な侍の一人、「近藤 (いさみ) 」の墓にたどり着く。

1800年代半ば、江戸幕府の将軍に仕え京都の警備を務めた「新撰組」を率いたのが近藤 (いさみ) であった。この当時、江戸幕府による支配から天皇による統治へ戻そうとする動きが活性化しており、それらの勢力が力を得ると近藤は裁判で斬首刑を言い渡され、早すぎる死を遂げた。塩漬けにされた近藤の首は京都の三条河原にさらされ、残りの遺体は板橋駅近くのこの墓所 (ぼしょ) に葬られた。

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東光寺

近藤 (いさみ) の墓から旧中山道を北西方向に15分ほど歩くと、この地域を横断するように伸びる商店街にぶつかる。商店街へ入る前に、住宅街に佇む東光寺へ立ち寄ってみよう。

比較的新しいように見える外観からは想像できないが、東光寺は室町時代(1336~1573年)に建てられたと言われている。中には、都内で最も古い庚申塔とよばれる石碑や、座った姿の珍しい地蔵、亡くなったペットの供養のための観音像などが祀られている。

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いたばし観光センター

東光寺から5分ほど歩くと、いたばし観光センターにたどり着く。この施設には、中山道やかつての板橋宿の暮らしに関する情報が数多く取り揃えられている。

ほとんどの情報は日本語だが、英語の資料もいくつかある。施設の職員は親しみやすく、この地域の興味深い歴史について非常によく精通している。日本語が分からなくても、この地域を描いた浮世絵の写真から当時の様子を伺ったり、歴史ある石碑のレプリカや古地図などを通して文化についても理解することができる。

 

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文殊院

いたばし観光センターから商店街を歩くこと8分。日々を送る地元の人たちでにぎわうこの通りは、現在の板橋の日常が垣間見えるおすすめのルートだ。

大きなスーパーマーケットの奥の角を曲がると、板橋宿を治めた飯田 () の菩提寺である文殊院があり、商店街とは異なる世界が広がっている。境内に鎮座する閻魔 (えんま) 像の迫力ある姿を見逃さないでほしい。閻魔 (えんま) 様は死者の生前の罪を裁く神といわれているが、もしかしたら人々が悪行をしないように日頃から見張っているのかもしれない。

 

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板橋(橋)

文殊院から旧中山道を5分ほど下ると、「板橋十景」のひとつに選ばれた「板橋」にたどり着く。

「板橋」という地名は文字通り、「木の板の橋」であるこの橋に由来している。再建が繰り返されてはいるものの、現在の橋も昔ながらの雰囲気が漂っている。石神井川沿いに1000本もの桜の木が並ぶこの辺りは、東京の隠れた花見スポットでもある。川を覆う美しい桜を愛でに、春に訪れてみよう。

 

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縁切榎と祠

板橋(橋)から2分ほど歩くと、その力を信じて多くの人が訪れる不思議なスポットがある。

縁切榎 (えんきりえのき) と呼ばれるその木は、縁を断ち切る力があると信じられており、昔から地元の人々や旅人たちに崇められてきた。一見、後ろ向きな行為に見えるかもしれないが、重荷となっている縁を取り除けば、人生に新しいものを取り入れる余地も生まれるのだ。初代の木の力を受け継ぐ若い榎の奥には、小さな祠(ほこら)がある。悪縁や悪癖を断ち切り、より良い人生を送りたいという強く願う人々が、祈りを捧げる場所となっている。

あなたも新しい発見を探しに、旧中山道を歩いてみてはどうだろうか。

この記事は、リサ・ワリンが執筆しました。


*この記事は、2019年08月26日に東京都国際交流委員会が運営していたLife in Tokyoに掲載したものです。