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東京に根付くイタリアのカトリック教会
カトリック碑文谷教会の聖堂内にある木製の信者席に座り、ステンドグラスの窓から厳粛な雰囲気の聖堂へと光が差し込んでくるのを見ていると、「ここはヨーロッパではないか」と錯覚してしまうのも無理はない。
東京にあるカトリック教会には現代的なものが多いが、1954年、目黒区の静かな住宅地に建てられたカトリック碑文谷教会は、ロマネスク様式の教会だ。
デザインと建築は北イタリアのヴェローナにあるサン・ゼーノ教会から着想を得ており、ヨーロッパの中でもとりわけ多くのイタリア人から資金援助を受け、建てられた。
伝統的な信者席は、美しいステンドグラスが施された窓に合わせて配置されており、ステンドグラスにはイエス・キリストの生涯や、聖書や教会の歴史に関する象徴的な図案が描かれている。
壁は大きな壁画で装飾され、天井には丁寧に描かれたフレスコ画が広がっている。その下には枝付き燭台を思わせる円形のシャンデリアが吊り下がる。また、聖堂の正面に掲げられた大きな十字架がある祭壇には、イタリア産大理石が使われている。
カトリック碑文谷教会のはじまりは、サレジオ修道会の司祭たちが東京で布教する拠点をここに構えた1948年3月に遡る。もともとは聖堂と司祭館を含む二階建てだったが、地域の子どもたちの遊び場を提供するために敷地が拡張された。1949年に新しい幼稚園が併設され、より多くの人々が教会を訪れるようになると、更に広いスペースが必要となり、現在の建物になった。
サレジオ修道会を設立したドン・ボスコこと聖ヨハネ・ボスコは、19世紀のローマカトリック教の司祭であり、教育者であり、そして著述家でもあった。
彼の教えに従い、カトリック碑文谷教会は青少年の育成に従事し、子どもたちのための活動に力を注いでいる。規模の大きな幼稚園や日曜学校の運営に加え、青少年向けのさまざまなクラブ活動も行っている。
教会によると、毎週日曜日には100~150人の子どもたちが教えを学びに集まり、ミサの後にはゲームをするという。午後になるとサッカーや美術などのクラブ活動を楽しむそうだ。クラブ活動のある日曜日だけでなく、子どもや家族皆が屋外での活動を楽しむことができるようにと、グラウンドは平日も開放している。
教会は地域に貢献する礼拝所として、大人向けにも数多くの活動を行っている。壮年男性によるヨゼフ会、婦人会の他、困っている人々に手を差し伸べる社会福祉のボランティアグループなど、グループ活動の運営にも携わっている。
信徒への指導(司牧、パストラルケア)は、アキレ・ロロピアナ神父に委ねられている。イタリア出身で40年間司祭を務めている神父は、日本語、英語、イタリア語の三ヶ国語を流暢に話す。日曜日に捧げられるミサは、午前7時、午前9時、午前10時30分、午後6時の4回だ。
日本では西洋式の結婚式が人気なことから、碑文谷教会は、カトリック教会での挙式を希望しているカップルに、門戸を開いている。結婚式を控えたカップルが、ロロピアナ神父をはじめとする司祭たちや、式の準備を行うスタッフと顔を合わせることで、カトリック碑文谷教会は単なる式場ではなく、思い入れのある場所になっていく。
カトリック碑文谷教会は信者以外の人でも、気軽に訪問できる教会だ。「教会は、朝6時から午後5時30分まで毎日、開いています。祈りを捧げに来る人だけでなく、見学するためだけの方々も多くいらしています。どなたでも自由にいらしてください。もし、前もって知らせていただけたら、主のお言葉をお話しすることができますし、飾ってある絵画についてのご説明もいたします」とロロピアナ神父は言う。
カトリック碑文谷教会へのアクセスは、バスか電車で。バスならば、JR山手線の目黒駅西口より、東急バスで「大岡山小学校」行きに乗車し、バス停「サレジオ教会前」にて下車(所要時間は約15分)。電車ならば、東急東横線の都立大学駅下車、徒歩15分。木々に囲まれた尖塔を目印にして歩こう。
この記事はノーアム・カッツが執筆しました。
*この記事は、2018年10月22日に東京都国際交流委員会が運営していたLife in Tokyoに掲載したものです。