東京には、その土地々々に根づいた昔ながらの商店街がある。店員と常連客の間では親しみある会話が交わされ、店内では粋な掛け声が飛び交うことも。地元の人々に寄り添い、日々の生活を支えていることから、"商店街があるまち"を居住地に選ぶ人も多い。中でも、肉、魚、野菜の生鮮三品や、惣菜店が充実していることで有名なのが、大正末期から続く十条銀座商店街だ。JR十条駅の北口を出ると、早速ロータリーの反対側に賑やかな入口が見える。道行く人の流れに誘われ、いくつかのお店を訪ねてみた。
十条銀座商店街でもっとも古い鮮魚店、『魚鈴 本店』は明治末期創業。鮮魚、刺身のほか、エビ団子やごぼう天などの加工品も好評だ。高級魚でも手が届きやすい庶民価格で販売しているのも嬉しい。半身にしてほしい、などお客さんのリクエストにも柔軟に対応してくれる。会話を交わしながら買い物ができるのも、街の魚屋さんのいいところだ。
魚鈴 本店
住所/北区十条仲原1-3-7
TEL/03-3900-3274
営業時間/9時30分〜20時
定休日/年中無休(お盆、年始除く)
精肉店として始まった『鳥大』は、今では惣菜店としても有名。1番人気のチキンボールはなんと1個10円(一人50個まで)ということもあり、夕方になると行列ができる。朝引き(朝に絞めた鳥をその日に捌いた鶏肉のこと)にこだわった鶏肉は新鮮そのもの。種類豊富な唐あげのほか、厚焼き玉子や揚げ餃子と言ったお惣菜が所狭しと店頭に並ぶ。週末には遠方からわざわざ足を運ぶ人も多いとか。
鳥大
住所/北区十条仲原1-4-11
TEL/03-3905-1414
営業時間/10時~20時
定休日/日曜・祝日は不定休
老舗うなぎ店の蒲焼がテイクアウトできることで人気の『和孝』。東京では珍しく、店内に生け簀が設置されている。約一週間泥を吐かせて臭みを抜いた静岡産のうなぎは、備長炭でじっくり焼き上げるため、ふっくらと肉厚な食感だ。香り高いぶどう山椒をぱらりとふって、口いっぱいにほおばりたい。もちろん店内で日本酒を傾けながら、うなぎをじっくりと味わうこともできる。※写真は「寿」¥3,000(税込み)
和孝
住所/北区十条仲原1-25-13
TEL/03-3908-2205
営業時間/ランチ11時30分~15時(L.O. 14時30分)
ディナー 平日17時~21時(L.O. 20時30分)、土・日・祝日 17時30分~21時(L.O. 20時30分)
定休日/火曜(祝日の場合翌日)
『だるまや餅菓子店』は、珈琲もあれば、日本茶もワインもあるという一風変わった甘味処。本当に美味しいものしか口にしないというご主人が、全国から集めた厳選素材を最高の形で提供する。京都の純氷を使ったかき氷の名店として知られており、甘いものに目のない地元民に加え、こだわりに共感したファンが各地から訪れる。
だるまや餅菓子店
住所/北区十条仲原1-3-6
電話/03-3908-6644
営業時間/10時~18時30分(L.O.)
定休日/火曜
オープンして約4年になる『A1肉骨茶』は、その名のとおりマレーシアの郷土料理"バクテー"の専門店。現地ではポピュラーな料理だが、日本では取り扱っている店が少なく、専門店は全国でもここだけ。どうしてもこの味が忘れられないと、リピーターが後を絶たない。店内は家族や友達連れはもちろん、女性ひとりでも入りやすい雰囲気だ。じっくり煮込んだスペアリブと旨味が凝縮された薬膳スープを、ぜひご堪能あれ。
A1肉骨茶
住所/北区上十条2-30-9
電話/03-6325-7789
営業時間/11時~21時30分(L.O. 21時)
定休日/無休
映画のポスターで埋め尽くされた細い階段を下りると、35mmの映写機を備えた『cinecafe soto』の入口が現れる。小さな映画館に併設されたカフェレストランは、映画を観終わったあと、会話も楽しんでもらいたいというオーナーの思いで建てられた。映画上映はもちろん、落語やトークショーなどイベントも充実。大人の隠れ家として、静かな盛り上がりを見せている。
cinécafé soto
住所/北区上十条2-27-12 スズキビルB1F
電話/03-3905-1566
営業時間/11時~23時(L.O.22時)
定休日/不定休(月に1日程度臨時休業あり)
『あおぞら衣料品店』は、東京でも有数の激安ショップ。少し縫製がほつれていたり、ボタンのつけが甘かったり、普通のお店には並ばない難あり商品が集められている。ほとんどの服が299円だが、中には100円のお値打ち品も! 幅広い年代の女性たちが、掘り出し物の宝探しに興じる。ちなみにこの春は、パーカにジャケットを合わせたレイヤードスタイルがおすすめだそう。
あおぞら衣料品店
住所/北区十条仲原1-5-10
電話/03-6479-6731
営業時間/11時~19時
定休日/無休
『篠原演芸場』では、時代劇を中心としたお芝居や、和装メインの舞踊ショーが楽しめる。12の劇団がそれぞれの月を担当。さらに演目や衣装を毎日変えるため、一度として同じ公演がないのが特徴だ。残念ながらセリフの翻訳はないものの、侍の立ち回りや花魁などのあでやかな舞を眺めるだけで、江戸時代にタイムスリップした気分が味わえる。
篠原演芸場
住所/北区中十条2-17-6
電話/03-3908-1874
料金/大人1,600円、小人(4歳~小学生)900円
居酒屋も多く、夜はネオンがきらめく街に表情を変える十条銀座商店街。仕事から帰ってきた人々を、家族のように迎えてくれる。東京の商店街は、いつも人々に温もりを与えてくれている。
*この記事は、2017年04月24日に東京都国際交流委員会が運営していたLife in Tokyoに掲載したものです。