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板橋区赤塚 乗蓮寺の「東京大仏」
大仏様といえば奈良や鎌倉のイメージだが、実は東京にも立派な大仏様がいらっしゃる。板橋区赤塚の乗蓮寺に鎮座する『東京大仏』は、青銅製としては日本第3位の大きさを誇り、『新東京百景』にも選出された。周囲には、郷土資料館や区立美術館を備えた赤塚城址公園、赤塚植物園などがあり、のんびりと散策するにはぴったりだ。
乗蓮寺は1400年前後に創建された由緒ある寺院。もとは中山道の板橋宿にあったが、高速道路建設に伴い移転を余儀なくされ、赤塚城二の丸跡地である現在の地に収まった。東京大仏が建立されたのは1977年のこと。戦災や震災に見舞われることのないようにとの願いを込められてつくられた。
乗蓮寺は、徳川幕府の歴代将軍から朱印地として認められてきた歴史を持つ。朱印地とは、幕府が発行する公式文書「朱印状」により、課役・年貢を免除された寺社領のこと。8代将軍吉宗が鷹狩りをする際に雨宿りしたことをきっかけに、将軍家の休憩所にもなった。見渡すと、境内の至るところに徳川家の家紋"三つ葉葵"があることに気づく。
山門の手前にあるのが閻魔堂。閻魔像に加え、亡者の衣服を剥ぎ取る奪衣婆や、地獄で審判を行う十王が祀られ、色とりどりの折り鶴が無数に供えられていた。
石段を登り、仁王像に見つめられながら山門をくぐると、右手に東京大仏の泰然とした姿が現れる。青銅製の阿弥陀如来坐像は、重さ約32トン、高さは約12.5m。拝むとき視線が合うように、大きな頭はやや前かがみに作られている。真下に立って見つめていると、無念無想の境地に至る大仏様の迫力に、思わず圧倒されてしまう。
境内を散歩していると七福神に出会ったり、戦国武将・藤堂高虎が朝鮮から持ち帰ったと伝えられるユニークな石像に出くわしたりすることも。「あ! ここにも!」と、散策ならぬ探索を楽しむのも一興だ。参拝客が供えた小さな"お願い地蔵"も、発見するたびどこか温かい気分にさせてくれる。
春は桜、秋は紅葉に囲まれ、年末年始は参拝客で大いに賑わう乗蓮寺だが、普段の雰囲気は実にゆったりとしている。開放的な境内には、"大仏線香"の煙が静かに上がり、水場には三つ葉葵の手桶が整然と並んでいる。穏やかな時間が流れる乗蓮寺の"大仏さん"は、何事にも動じないいつもの姿で、今日も東京の行く末を見守っている。
住所/板橋区赤塚5-28-3
拝観時間/8時~16時 ※入門は15時45分まで
駐車場あり
*この記事は、2017年04月19日に東京都国際交流委員会が運営していたLife in Tokyoに掲載したものです。