出かける
江戸東京博物館で演芸の楽しさを体験しよう
東京で暮らしていると、祭りやイベントなどで日本の伝統芸能のひとつである演芸を目にする機会があるかもしれない。かつて東京が江戸と呼ばれていた頃と変わらず、演芸は今なお、この街の一部として生き続けている。それでも、実際に体験できる機会はめったにない。チャンスがあれば、それを逃す手はないだろう。
幸運なことに、両国にある江戸東京博物館で、生の演芸を間近で観ることができる。2019年3月までの毎週土曜日( 12月29日を除く)、同博物館では館内の催しとして三種類の演芸の実演会を開催している。事前予約は不要。1日に3回行われるので、都合の良いタイミングで鑑賞することができる。英語の同時通訳も入るので、気軽に立ち寄ってみてほしい。
私が訪れた日の演目は、和妻師KYOKOによる日本の伝統的なマジック、和妻だった。代々、日本のマジシャンの間で受け継がれてきた手品と日本舞踊を交えたKYOKOの和妻に、私の心は一瞬で魅了されてしまった。それは、今まで慣れ親しんできたマジックとは全く異なるもので、単なる文化的な体験であることに留まらず、とにかく楽しいものだった。江戸時代から観衆を沸かせ続けてきた技を見ながら、若者からお年寄りまでが一緒になって笑い、そして感嘆の声をあげていた。
KYOKOが創りだす魔法の世界を間近で観た人は、幼い子どもから大人まで、皆同じように首をかしげる。観客の中から私を含む数人が舞台の上へ招かれ手品に参加したが、すぐ目の前で見ても仕掛けを見抜くことはできなかった。
しかしその後、KYOKOは観客が誰かに和妻を披露することができるようにと、特別に幾つかのトリックの種を明かしてくれた。観客は皆、その場で手品に挑戦することで、コツを掴む。楽しみながら、日本の手品の歴史についても学ぶことができるのだ。さらに、実演会場である館内に再現された歌舞伎座が、実際に江戸の街で演芸を楽しんでいるかのような感覚にさせてくれる。日本の伝統芸能は他国のそれとは全く異なるものなのに、国籍や年齢など関係なく楽しめる。これこそ、まさに本物のマジックと言えるだろう。
この演芸プログラムでは、日によって和妻のほかにも高度な技が必要な傘回しなどを披露する「曲芸」と、紙を精巧な形に切りあげる「紙切り」の実演も行われている。これらのパフォーマンスは、現代の日本においても伝統芸能として親しまれているが、世界的にはあまり知られていない。目の前で観て、そして参加できるこの機会を是非、お見逃しなく。
さらに江戸東京博物館の常設展では、伝統芸能の歴史について学ぶことができる。まだ来館したことがないという人は、江戸から東京へと移り変わる道のりを、江戸東京博物館で学んでみてはどうだろうか。
*演芸の鑑賞は無料だが、江戸東京博物館への入館料が必要となる。
この記事はサミュエル・トーマスが執筆しました。
*この記事は、2018年07月09日に東京都国際交流委員会が運営していたLife in Tokyoに掲載したものです。