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蒲田の黒湯温泉巡り
東京には、沸かした湯を利用する一般的な銭湯 だけでなく、温泉を使った入浴施設もたくさんあります。温泉とはその名の通り「温かい源泉」を意味するもの。しかし温泉は水に含まれるミネラル成分によっても定義づけられるため、必ずしも温かいわけではありません。
例えば、東京都大田区の蒲田にはたくさんの公衆浴場があり、そのほとんどが「黒湯」温泉であることで有名です。ミネラルなどを豊富に含む「黒湯」は文字通り黒い色をした温泉水で、肌がすべすべになるほか、体を温める効果があるそうです。「黒湯」の独特な性質は、区に隣接する東京湾の海底に蓄積した火山灰や腐植質(植物が分解されてできた有機物)に起因しており、地下およそ100メートルに達する深い地中から湧き出る「黒湯」の温度は、常時18~20℃。入浴施設では、湯船に適した温度に温められて使用されています。
蒲田温泉
最初に向かったのは蒲田駅から徒歩15分。アパートや小さなお店が立ち並ぶ細い通りにある入浴施設、「蒲田温泉」です。その日は肌寒い風が吹く、絶好の温泉日和。「蒲田温泉」と日本語で書かれた大きな赤い看板が目に飛び込み、すぐに見つけることができました。
中に入ってまず驚いたのは、レトロな雰囲気でありながら清潔感のある、手入れの行き届いた施設であるということ。待合室に薄型テレビといった今どきの機器はなく、まるでタイムスリップしたかのようです。蒲田温泉の創業は1937年。番台近くに並ぶお土産用Tシャツにも、誇らしげに「蒲田温泉」の文字と創業年がプリントされていました。
黒湯を探して浴室に入ると、2つの湯船はいずれも黒い湯で満たされていました。1つは熱めの湯で、もう1つはぬるま湯です。蒲田温泉では一旦入浴料を支払えば、一日中、何度でも浴室に出入りすることができるため、休憩をはさんでリラックスしたり、2階の大広間で食事をしたりしてから、再び入浴することも可能。タオルや貸し浴衣(軽い綿の着物)が付いたセット料金も用意されています。
ゆ~シティー蒲田
次は蒲田駅方面に戻って「ゆ~シティー蒲田」を訪れました。より現代的なこの施設は、広い浴室にジャグジーや細かな泡で肌をやさしく刺激するバイブラ風呂を設けています。嬉しいことに、黒湯の露天風呂も。外の空気に触れながら、ミネラル豊富な黒湯につかる機会を逃すわけにはいきません。
ゆ~シティー蒲田も、2階に広々とした食事処を設けています。畳を敷いたスペースやカラオケもあり、スタッフの話では歌謡ショーやカラオケ大会、マジックショーが開催されることもあるそうです。Wi-Fiは無料で利用可能。施設内には英語の案内表示もあり、海外から訪れる客も利用しやすくなっています。
改正湯
最後に訪れたのは「改正湯」です。創業は1929年と古いものの、改装されて現在は広々とした入浴施設になっています。浴室に入ってまず目を奪われたのは、巨大な富士山の壁絵(東京の銭湯でおなじみのもの)です。壁絵の下の大きな水槽では、色とりどりの金魚や鯉が泳いでいました。
改正湯では、黒湯に炭酸湯を加えた黒湯炭酸泉というオリジナルの温泉が楽しめます。また、きめ細かい泡でお湯が白く見える「シルク風呂」という名の湯船も。シルク風呂の細かい気泡は、毛穴の奥から汚れを取り除く効果があるそうです。
今回ご紹介した3つの施設は、水風呂も含め、いずれも東京都浴場組合の規定料金 460円で入浴が可能です。さらに追加料金でサウナ(蒲田温泉は無料)や電気風呂(蒲田温泉、ゆ~シティー蒲田)も利用可能。タオルやシャンプー、石鹸などを持参する手間を省きたい方は、いずれの施設でもお安く購入することができます。
蒲田で東京ならではの温泉につかり、気分転換してみてはいかがでしょうか。
この記事はノーアム・カッツが執筆しました。
*この記事は、2018年01月22日に東京都国際交流委員会が運営していたLife in Tokyoに掲載したものです。