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密やかな都会のオアシス、等々力渓谷
東急大井町線の等々力駅から南に歩いて約3分。谷沢川に架かる『ゴルフ橋』下から始まる遊歩道周辺が、東京23区唯一の渓谷として知られる『等々力渓谷』です。等々力不動尊の敷地を含むこの渓谷一帯は、清涼な川と豊かな緑に囲まれた美しい景観を残すことから、東京都の「名勝」に指定されていて、都会の納涼スポットとして密かな人気を集めています。
遊歩道に入ると、空気が少しひんやりすることに気づくはず。あたりには欅や白樫などの樹木が茂り、川のせせらぎや野鳥のさえずりが聞こえてきます。遊歩道には散策する人だけでなく、スケッチをする人や、大きなカメラを構えて写真を撮る人の姿もちらほら。多くの人が思い思いにときを過ごしています。
谷沢川を下流へ進むにつれ、次第に水の透明度が増していきます。これは、等々力渓谷にある約30カ所以上の湧き水のおかげなのだそう。澄んだ水が、暑い夏でも涼を感じさせてくれます。
川沿いをしばらく進み環状八号線の玉沢橋をくぐると、『等々力渓谷三号横穴』の標識が目に留まります。この辺りで発見された横穴式古墳群は、古墳時代末期から奈良時代(約1300年前)に築かれた有力者の墓。中でも三号横穴は、当時の形態を留めていることから東京都指定史跡となっています。
歴史に思いを馳せながら歩を進めると、渓谷の南端に現れたのは、桜の名所としても名高い等々力不動尊。春には100本近くの桜、秋には美しい紅葉を見ることができます。お参りをしておみくじをひいたら、傍にある甘味処の『雪月花』や『四季の花』でひと休み。夏はかき氷やソフトクリーム、冬は甘酒やおしるこなど、季節の甘味を楽しむことができます。
不動尊から渓谷に降りたところにあるのは、「霊水」として信仰されている『不動の瀧』。不動尊が創建されたときに湧き出たと伝えられるこの滝には、今でも各地から修行をする人が訪れるのだそう。この滝の音が鳴り響き"轟いた"ことから、"等々力"という地名がついたという言い伝えもあるそうです。
不動尊の対岸にあるのは、渓谷の窪地を活かして造られた日本庭園と趣のある書院。庭園の上には日当たりのよい広々とした芝生広場もあり、ひとり読書にふける人や、友達同士でお喋りに興じる姿が見られます。
渓谷を一周してスタート地点のゴルフ橋近くへ戻ってくると、入口付近でスケッチをしていた人の絵が色付けの段階に入っていました。喧騒を離れ、気軽に自然と触れ合える等々力渓谷。都会に住む人々のオアシスとして、今日も静かに時を刻んでいます。
等々力渓谷公園
住所: 世田谷区等々力1-22、2-37~38番外
アクセス:
大井町線「等々力駅」下車徒歩3分
東急バス、都営バス「等々力」下車徒歩5分
等々力渓谷公園 ホームページ
等々力不動尊
住所: 世田谷区等々力1-22-47
等々力不動尊 ホームページ
*この記事は、2017年08月28日に東京都国際交流委員会が運営していたLife in Tokyoに掲載したものです。