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歌舞伎を通して日本文化の華やかな一面を知る -国立劇場-

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日本の伝統芸能の一つとして広く知られている歌舞伎。敷居が高いと感じる人も多いかもしれませんが、決して近寄り難いものではありません。様式化された動きに加え、手の込んだ化粧ときらびやかな衣裳、ドラマチックな舞を披露するこの独特な古典演劇は、江戸時代に大衆芸能として発展しました。その演目の多くは日本の歴史や江戸庶民の生活を題材としています。

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東京で歌舞伎を楽しめる場所と言えば、2013年に改装を終えた銀座の歌舞伎座、銀座と築地の (あいだ) に位置する新橋演舞場、そして皇居の半蔵門からほど近い隼町 (はやぶさちょう) の国立劇場もその一つ。

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歌舞伎_6.JPG提供:国立劇場

その国立劇場で、年に一度の外国人観覧者に向けた特別イベント「Discover Kabuki」が開催されるというので () って () () きました。2017年6月16日に行われたこのイベントでは、「歌舞伎のみかた」という30分ほどの解説を日本語と英語で行い、続いて「歌舞伎十八番の内 毛抜」を上演します。解説では、歌舞伎役者の中村隼人さんとアナウンサーでバイリンガルの木佐彩子さんが、質疑応答を交えながら、歌舞伎鑑賞のポイントを外国人にもわかりやすく説明をしてくれました。二人 (ふたり) がまず説明したのは、「花道」と呼ばれる歌舞伎独特の舞台装置。舞台に向かって左側、観客席を貫くようにまっすぐと伸びるこの細長いステージは、役者の登場・退場を印象的に演出するために使われます。花道には「セリ」といわれる舞台の一部が昇降する仕掛けがあり、中村隼人さんが、実際にそこから登場してみせてくれました。

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舞台を覆う「幕」は、目にも鮮やかな柿、黒、萌葱の三色の縦縞が歌舞伎の定番。拍子木を叩く音で演目の開始が知らされると、観客からは見えない裏方の手によって左から右へと幕が開かれ、舞台が現れます。

歌舞伎_8.jpg提供:国立劇場

舞台下手 (しもて) (観客席から見て左)には、格子窓のある小さな部屋があります。これは伴奏や効果音の担当者がいる部屋で、舞台の進行を見ながら三味線など日本の伝統楽器を奏でます。奏者が曲の出だしや終わりに掛け声を発して調子をとるところが、欧米の演劇の舞台音楽との違いと言えるでしょう。

舞台上手(観客席から見て右)にいるのは、「ツケ打ち」と呼ばれる人。一枚の板に二本のツケ木を打ちつけて「ツケ」と呼ばれる効果音を担当します。足音などの動作や物音を強調したいとき、役者の動きに合わせて木を打ちます。

歌舞伎では、男性が男役と女役の両方を演じます。肩を後ろに引いて落とすことで、男性の広い肩幅を華奢にみせたり、膝をわずかに曲げて足腰を屈めながらしなやかに振る舞うことで、女性らしい外観と体の動きを表現します。

頭のてっぺんからつま先まで、黒の衣裳に身を包んだ人物は「黒衣」と呼ばれる後見役。小道具の持ち運びのほか、衣裳替えの際に活躍します。歌舞伎では、今回の演目「毛抜」のように、使用する小道具が遠くの観客席からも見えるよう、実際より大きく作られることもあります。

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今回の演目は歌舞伎十八番の一つである「毛抜」でした。舞台は平安時代の公家、小野春道 (おののはるみち) の館。家宝を紛失し、さらに婚礼前の娘が、髪が逆立つ奇妙な病に侵されるという災難に見舞われる小野 () 。そこへ娘の婚約者の家臣である粂寺弾正 (くめでらだんじょう) が訪れたことをきっかけに、物語は展開します。弾正は小野 () の一室で宙に浮かぶ毛抜を目撃し、そこからヒントを得て、お家の騒動を智略をもって解決するというあらすじです。

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歌舞伎では古い日本の話し言葉を使うため、現代の日本人でさえ理解するのは難しく、外国人にとってはなおさらのこと。このため国立劇場では、日本語での解説や多言語による案内など、より多くの人に歌舞伎に親しんでもらうための企画を定期的に設けています。特に今回のイベント「Discover KABUKI」では、日本語と英語で解説を行うほか、上演中は舞台上部の掲示板に英語字幕を表示、さらに日本語、英語、中国語(北京語)、韓国語、スペイン語のオーディオガイドも提供していました(通常の歌舞伎公演でも、700円で日本語と英語のオーディオガイドの利用が可能)。あらすじや見どころをほんの少し頭に入れておくだけで歌舞伎の世界をさらに愉しむことができるでしょう!

国立劇場では今回同様、外国人に日本の伝統的な人形芝居である人形浄瑠璃「文楽」を楽しんでもらう特別イベント「Discover BUNRAKU」を、12月18日午後6時30分から開催予定です。

 

国立劇場

千代田区隼町 (はやぶさちょう) 4-1
問い合わせ先:
国立劇場チケットセンター
0570-07-9900
03-3230-3000(一部IP電話等)

この記事はノーアム・カッツが執筆しました。


*この記事は、2017年07月25日に東京都国際交流委員会が運営していたLife in Tokyoに掲載したものです。