Tokyoらいふ
日本の涼 打ち水
*この記事は、東京都国際交流委員会が運営していたウェブサイトに掲載したものです。
ある夏の日の夕方、帰宅途中のラウルさんは、ご近所の菊江さんと孫の初音ちゃんと顔を合わせました。玄関先に出てきた二人は、手おけとひしゃくを持っています。

菊江
あら、ラウルさん、おかえりなさい。
ラウル
菊江さん、初音ちゃん、水の入ったおけなんか持ってどうしたんですか?
初音
あのね、私とおばあちゃんね、今から「打ち水」をするのよ。
ラウル
打ち水?
菊江
庭先や家の前の道路に水をまくことを打ち水というの。江戸時代から続く、夏の暑さをしのぐための知恵なのよ。
ラウル
ああ、わかりました!まいた水が蒸発する時に地面の熱を奪い、周囲の気温が下がるというわけですね。
菊江
その通りよ。ちなみに打ち水は、水がゆっくりと蒸発する時間帯、つまり朝か夕方の日が高くない時に行うのが一番効果的と言われているわ。
ラウル
それは納得です。太陽が照りつけている地面に水をまいても、すぐに蒸発してあまり効果がないだろうし、湿度が高くなって余計にムシムシしそうです。
初音
ねえねえ、お兄ちゃんも一緒に水をまこうよ。私のひしゃくを貸してあげる。
ラウル
ありがとう、初音ちゃん。じゃあ、やらせてもらうよ。…うん、これはいいな!水をまいていると気分がすっきりするし、心地よい涼しさを感じます。
菊江
そうでしょう!打ち水をする習慣は、道路が舗装され、扇風機やエアコンが普及したことで徐々に失われていったのだけれど、近年、ヒートアイランド対策として、再び注目されることになったのよ。
ラウル
ヒートアイランド現象は世界中の都市で観測されているけれど、日本でも東京をはじめとする都市部で深刻な問題になっていますよね。
菊江
ええ。そこで、みんなで一斉に打ち水をして路面温度の上昇を抑え、ヒートアイランド化した都市の気温を下げようという試みが行われるようになったの。この「打ち水大作戦」と呼ばれる社会実験は、2003年の夏に東京でスタート、今では夏の恒例行事として全国各地で行われているのよ。
ラウル
打ち水大作戦ですか!なんだか楽しそうですね!
打ち水大作戦に興味を持ったラウルさんですが、ひとつ心配なことがあるようです。
ラウル
みんなで打ち水をするには大量の水が必要ですよね?なんだか、気がひけるなぁ…。
初音
大丈夫だよ!だって打ち水でまくのは、一度使ったお水だもん。
菊江
そうそう。水道水は使わずに、雨水や使用済みの水をまくのが打ち水のルールなの。たとえば、お風呂の残り湯や食器をすすいだ残り水、子ども用のプールで使った水やエアコンの室外機から出る水なんかね。
ラウル
それを聞いて安心しました!ところで、打ち水大作戦に参加するにはどうしたらいいんですか?
菊江
自治体や町会、商店街などが開催する地域の打ち水イベントに参加してもいいけれど、家族や仲間と身近な場所で打ち水をするのもありなのよ。
ラウル
じゃあ、大学の仲間を誘ってやろうかな。早速SNSで呼びかけてみます。ああ、でも、おけとひしゃくがないな…。
初音
バケツや洗面器に水を入れて、手でパシャパシャすればいいよ!
ラウル
なるほど!誰でも気軽にできるのが打ち水大作戦のいいところなんだね。
初音
私もお兄ちゃんのお友達と一緒にお水をまきたいな。
ラウル
もちろんだよ!必ず初音ちゃんも誘うから待っていてね。
■打ち水大作戦
https://uchimizu.jp/
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