クローズアップ

一般社団法人 光 JSみらい ~アミーゴたちで見守り、照らす、子どもたちの未来~

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光JSみらいの代表を務める梅本祥子さん

外国にルーツのある子どもたちの将来の選択肢を広げるため、オンラインでの日本語学習支援、次世代の育成、多文化共生社会の促進や意識啓発などの事業を展開する、「光JSみらい」。
「言葉でつながる 人とのつながり」を理念に、日本語学習を必要とする全国の外国ルーツの子どもたちと保護者を学校外からサポートします。団体設立前は、小学校の教員や、ブラジルでの教員ボランティアを経験してきたという、代表の梅本祥子さんにお話を伺いました。

 

 

学校の中と外、両方経験したことでの気づき

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光JSみらいの「JS」はJapanese language Schoolの略称。
子どもたちの光り輝く未来を願って「光JSみらい」という名前が付けられました。

一般社団法人 (ひかり) JSみらいは2022年に設立され、日本語を第一言語としない、外国ルーツの子どもたちにオンラインで日本語学習支援を行ってきました。元々小学校の教員だった代表の梅本さんは、勤めていた学校でも外国ルーツの子どもたちと多く接してきましたが、教員の仕事は忙しく、一人ひとりの子どもに細やかな日本語のサポートを行うことは難しかったといいます。その後2年間、JICA(国際協力機構)の教員ボランティアとしてブラジルで子どもたちに日本語を教える中で、日本語教育の重要性を実感したそうです。「日本語を学んでどんどん吸収する子どもたちの姿をブラジルで見て、将来の可能性が広がっていくのを感じました。学校に戻ったときに、日本にいる外国ルーツの子たちもしっかり日本語教育を受けられたら、選択肢が広がるだろうな、と思ったんです」と、梅本さん。

ブラジルの人々の温かさ、陽気さに魅了され、移住を考え始めた梅本さんでしたが、移住に向けて教員を辞めた2020年にコロナ禍に直面し、計画が頓挫。ちょうどその頃に知人から誘われ、外国ルーツの子どもたちにオンラインで日本語を教え始めたそうです。
「教員のときには見えていなかった、家庭内での子どもたちの凄まじい努力を目にしました。学校外、そして教員ではない今の私だからこそ、何かお手伝いできることがあるんじゃないかと思いました」。
教員経験と海外生活経験を活かし、外国ルーツの子どもと家族をサポートする組織として、仲間たちと「光JSみらい」を立ち上げました。

家庭と二人三脚で進める、学習支援

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外国ルーツの子どもたちの中には、親や兄姉 (きょうだい) 以外に深く話せる大人が周りにおらず、職業の選択肢が狭まってしまう子も多いといいます。
写真提供:光JSみらい

団体で行う授業は、日本語教師や教員経験者が担当しています。オンラインで行うことで、日本語教室がない地域など、全国から問い合わせがあるといいます。経済的に余裕のない家庭には、サポーターからの寄付により、低額で学習の機会を提供しています。

授業を主に受けるのは、来日直後の子どもや、日本に長く滞在しながらも、授業など勉強の場面で使う学習言語が身に付いていない中高生です。
「お子さんによっては、第一言語が確立していないケースもあります。外では日本語を、家庭内で両親の話す言語(継承語)を使用しながらも、話し言葉しか身についていなくて、読み書きはどちらもできない。そうすると国語だけでなく、算数や理科など他の教科も理解しにくくなります」と、梅本さん。

特に算数は国によって解き方が異なるため、家庭でフォローできず、子どもがつまずいてしまうことがあります。ただ日本語を教えているだけでは、子どもは授業に追いつけない、そんな課題感から、日本語学習だけでなく、授業や宿題のサポートなど学習全体の支援を、家庭を巻き込みながら行います。
「私たちは伴走しサポートしますが、家庭との二人三脚が前提です。ご家庭に一緒に子どもの教育に向き合う姿勢を持ってもらうことが大切です。それとともに、情報がないとか、必要性を感じていないご家庭をいかに日本語学習につなげていくかというところも、今後さらにフォローすべきところだと思っています」と、梅本さんは話します。

学校外だからできる、一人ひとりに寄り添ったサポート

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やりたい宿題やプリントを持ち込めるオンライン補習タイム「みらいタイム」や、日本語学習者向けYouTube動画の配信も行っています。
写真提供:光JSみらい

活動を続ける中で、学校外だからこそできるサポートの大切さを梅本さんは改めて実感しています。
「オンライン学習支援を通して出会ったブラジルルーツの男の子は、最初の1か月、何も話してくれなかったんです。パソコンがフリーズしているんじゃないかと何度も疑いました。でも2か月目に少しずつポルトガル語で話し始め、3か月目に入ると急に日本語で“僕は宿題をやって行かないんじゃない、できないんだ”と言って、泣き出したんです」。
彼は3歳で来日し、以前も日本語を学んでいましたが、自分の日本語に自信が持てず、学校でもほとんど話していなかったそうです。宿題をやろうとしても一人ではできず、先生に「なんでやってこないんだ」と𠮟 (しか) られるのをとても悔しく思っていたようです。

「一度 (こころ) を開くと、泉が湧いたように様々な思いを話し始めて、“漢字のテストで満点を取ってみたい”という憧れも打ち明けてくれました。“じゃあ満点を取ろう!”と目標を決め、その子の好きな歴史と関連付けながら一緒に漢字を勉強したら、見事満点が取れたんです。学校でのフォローももちろん大切ですが、学校外の私たちだからできることがあるのかもしれない、と彼が気づかせてくれました」と、梅本さんは語ります。

みんな「アミーゴ(友達)」な多文化共生の地域づくり

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地域密着の国際交流イベント「ブラジルクエスト」。
毎年9月に行われており、茨城県や群馬県のブラジル人コミュニティからも学生たちが参加しています。
写真提供:光JSみらい

現在団体は、日本語学習支援に加え、多文化共生社会の促進、意識啓発、次世代の育成という4本の柱で活動しています。いずれも日本語学習支援を続ける中で必要性を感じ、始めた事業です。

多文化共生社会の促進のために定期開催しているのが、拠点とする江戸川区の地域住民と外国ルーツの住民が交流するオフライン交流会です。ブラジルの遊びをしたり、時にはお酒を飲んだりして交流するそうで、ブラジルの明るい雰囲気や文化に惹かれた人たちが集まり、楽しい時間を過ごします。
「国際交流の言語バーをやったこともありますが、広く浅く誰でも来られる () にしようとしたら、人が集まらなくて。そこで、大好きなブラジルを爆発させてみたら、たくさんの人に来てもらえるようになったんです。まずはコアな人たちで土壌を作り、そこから広げていくことの大切さを知った経験です。少しずつアミーゴ(友達)の輪を広げていけるといいですね」と、梅本さん。

さらに年に1度、街を巻き込んだイベント「ブラジルクエスト」を主催。小岩駅周辺のお店でブラジルの歴史や文化を知るワークショップやライブが開催され、参加者はスタンプラリーをしながら街を巡ります。
「行きつけのお店で“こんなイベントをやってみたい”と何気なく話したら、次々に知り合いを紹介され、実現しました。小岩の地域の皆さんはとても世話好きで温かくて、ラテンの雰囲気と似ていると思います」と、梅本さん。駅前のステージでブラジルの音楽やダンスが披露されると、地域の人々も一緒に踊り出すなど、大盛り上がりだったとか。

多彩な将来の選択肢があることを子どもたちに知ってほしい

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大好きなブラジルの魅力は「人の温かさ」だと語る梅本さん。

そのほかにも、専門家や当事者の話で理解を深める機会を提供する意識啓発事業、ブラジル人学校への出張授業や企業と学生の交流を通してキャリアの選択肢を増やす次世代育成事業を行っています。
「交流会に来た人が外国ルーツの子どもたちの存在を知って学習支援のボランティアになってくれたり、意識啓発のウェビナーの参加者が今度は交流会に来てくれたり、それぞれの活動が補完し合う形でネットワークが広がっていると感じます」と、梅本さん。

活動の中でも特に力を入れているのが、子ども・若者の将来の選択肢を広げることだといいます。
「私たちの取り組みを知って参加してくれるのは積極的な一部の子たちで、コミュニティの外になかなか出られない子も多いと思います。残念なのは、子どもたちの将来の選択肢が狭まってしまうこと。親が工場 (づと) めだから自分も工場で働くもの、と思っている子もいます。 (ほか) にも色々な選択肢・可能性があることを子どもや若者に知ってもらうとともに、彼らを受け入れられる社会にしていきたい。そのために、人と人の繋がりを広げながら、より多くの人が参加したいと思える活動を作っていきたいです」。

外国ルーツの子どもたちが将来の色々な選択肢や可能性を知り、挑戦できるように。子どもたちを見守り応援するアミーゴたちの輪が広がっています。

 

*本記事は取材時点での情報をもとに作成しています。最新の情報については、団体へ直接お問い合わせください。