クローズアップ
NPO法人ニッポンベンガルフレンズサークル ~バングラデシュと日本、やさしさの架け橋で誰も取り残さない共生社会を目指す~
今回お話を伺ったのは、代表のサラムさん(上段一番左)と副代表のパベルさん(下段左から二番目)。
日本在住37年のサラムさんが代表を務めるNPO法人ニッポンベンガルフレンズサークル。故郷バングラデシュでの支援や女性の職業訓練をはじめ、日本でのフードパントリー・こども食堂開催など幅広く活動しています。代表のサラムさんと副代表のパベルさんにお話を伺いました。
- サッカーチームの仲間たちが、祖国と日本のために活動する支援団体に
- 日本のやり方で、日本に住む人たちを応援したい
- 世代も国籍も超え、一つのファミリーとして食卓を囲む子ども食堂
- お金ではない形で、困っている人たちにしっかり支援を届け、自立を支える
- 誰も取り残さないために、自分たちのできることを模索し、そして続ける
サッカーチームの仲間たちが、祖国と日本のために活動する支援団体に
写真提供:NPO法人ニッポンベンガルフレンズサークル
日本とバングラデシュ国内でさまざまな活動を展開するNPO法人ニッポンベンガルフレンズサークルですが、その前身は、バングラデシュ出身の友人たちで構成されたサッカーチームでした。練習や試合への参加など積極的に集まっていましたが、歳を重ねる中でどう繋がりを維持し続けるか、話し合った末にまとまったのが故郷バングラデシュでの支援活動でした。
「日本からバングラデシュのためにできることを話し合いました。バングラデシュでは年に何度か洪水の被害があります。また貧しい村では学校に通えない子どもも多くいます。全員を支援するのは難しいですが、少しずつでも支援を続けることはできます。2011年から、メンバーで毎月一人500円ずつ出し合い、物資や食料の支援を始めました」と、サラムさん。冬には寒さが堪えるバングラデシュの田舎町で、毎年約200人に毛布を配って回ったといいます。「毛布を買うのに一人500円ではちょっと足りなかったので、飲み会1回分我慢して、と冗談で言って、みんなから寄付を募りました」と、サラムさん。
2018年にはNPO法人として組織化し、バングラデシュでより本格的な活動を開始するとともに、日本での活動も構想し始めました。団体のメンバーはバングラデシュ人30名、日本人5~6名ほどで、各々のペースで活動に参加しながら、2年に1度は全員が集まるといいます。
日本のやり方で、日本に住む人たちを応援したい
写真提供:NPO法人ニッポンベンガルフレンズサークル
日本での活動を模索する中、新型コロナウイルスの感染拡大が起こりました。日本でマスク不足が叫ばれる中、サラムさんは友人から大量のマスクの在庫を持っているとの連絡を受けます。
「日本で困っている人たちにマスクを配ろう」と決意したサラムさんたちはマスクを買い取りましたが、最初は配り方がわからなかったといいます。「地域の団地の会長に相談したところ、調布市の市民プラザを紹介され、そこから社協(社会福祉協議会)に繋いでもらいました。社協の協力も得て、老人ホームや保育園、障害者施設などでマスクを配ったところ、たくさんの人に喜んでいただけました」。
その際に知り合った社会福祉協議会の職員からの提案で、サラムさんたちは、団体の活動としてフードパントリーを開催することを決意します。
「コロナ禍でバングラデシュ人たちが仕事を失った際、社協など日本の人たちに助けてもらったので、私たちも困っている人たちを応援したいと思ったんです。食材をすべてハラルフードにすることも提案されましたが、日本でやるのだから、日本人が慣れた食材を提供したいと思い、日本人に意見を聞きながら食材を選定しました」と、サラムさん。
初回の2024年は、お米や卵、醤油、お餅、油など7品目を150人に配布しました。2年目は150名分の食材に対し、サラムさんたちが一軒ずつポストに投函して回ったチラシを見た人たちが400名も殺到したといいます。「配るものが無くなってしまって、途中からは品数を減らしたり、急遽食材を追加したりして配布しました。困っている人がこんなにいるんだと驚きました。毎回反省を生かしながら、やり方を工夫しています」とサラムさん。
世代も国籍も超え、一つのファミリーとして食卓を囲む子ども食堂
写真提供:NPO法人ニッポンベンガルフレンズサークル
さらに、団体では毎月こども食堂を開催しています。サラムさんをはじめ、学校給食員や栄養士として働くメンバーが安心安全にこだわって作った料理が食べられると評判です。蕎麦打ちなど体験付きの回や、七夕やクリスマスなど季節を取り入れたメニュー、その他バングラデシュなど世界の料理が振る舞われる回もあります。料理を食べるだけでなく、料理を一緒に作る体験など、参加者同士の交流が生まれるよう毎回工夫しています。
「こども食堂を始めた最初の頃は、バングラデシュ人の私たちも日本人のみんなもお互いに怖がっていたのか、少し緊張感がありました。でも日本語で話せばだんだん仲良くなっていけます。今は多くの人が毎月参加してくれていて、日本の仲間、家族のような存在です。私はみんなのおじさんです」とサラムさんは笑顔で語ります。
調布市には大学の国際学生宿舎があり、留学生もこども食堂に参加しています。皆が子ども食堂を自分ごととして捉え、参加メンバーからさまざまなアイデアも生まれていきます。世代も国籍も超え、食卓を囲む一つのファミリーとなっています。
お金ではない形で、困っている人たちにしっかり支援を届け、自立を支える
写真提供:NPO法人ニッポンベンガルフレンズサークル
バングラデシュでの活動について、以前は食糧・物資の寄付が中心でしたが、もっと力を入れたい、と始めたのが、職業訓練校の運営です。バングラデシュではアパレル(縫製)産業が盛んですが、経験がなければ女性は仕事に就きにくいのが現状です。そこで団体で女性たちにミシンの使い方や生地の裁断について教える職業訓練校を開設しました。約3ヶ月のコースを無料で受講でき、成績優秀な生徒には卒業後にミシンをプレゼントします。副代表のパベルさんは「勉強するだけでなく、仕事に繋がるようにしていきたい」と力を込めて話します。これまで卒業生は400人を超え、多くの女性たちが自らの手で人生を切り拓いています。
2025年には本が買えない家の子どもたちのため、子ども向けの図書館を開設しました。
「子ども向けの図書館はずっとやりたかったんです。バングラデシュは大人向けの図書館が多く、本に触れられない子どもが多くいます。子どもたちがどんなことに困っているのか、みんなに聞きながらやっていき、一人でも本に触れる子どもを増やしたい」と、サラムさん。
誰も取り残さないために、自分たちのできることを模索し、そして続ける
多くの外国人が日本に来ている中で、最近サラムさんが気にかけているのが障がい者の存在です。「外国人が増えていて、今後障がいがある外国人の相談も出てくるかもしれないから、そこも考えていかないといけないと思っています。障がいがある人たちはどこの国でも仕事に困りますよね。どうしたら上手くいくか、私たちに何ができるか、よく考えています」とサラムさんは話します。
さらにサラムさんの友人からの声掛けをきっかけに、多文化共生認知症サポーター養成講座の活動も行っています。
「高齢者、特に一人暮らしの方が増えているので、子ども食堂だけでなく、高齢者向けの活動も今後考えていきたいですね。一緒に料理を作って食べるとか、認知症の人も一緒に集まっておしゃべりするとか。認知症サポーター講座では、自分も一緒に勉強しています」とサラムさん。
最後に、団体としてさまざまな活動を展開するモチベーションを聞きました。
「私もパベルさんも、37年日本に住んでいて、自分の国よりも日本に住んでいる年数の方が長くなりました。仕事をしながらの活動なので大変ではありますが、日本やバングラデシュの困っている人たちのために、私たちができることを続けたいんです」と、サラムさん。
「困っている人には声をかけたくなる。何かしたい」という純粋な思いから始まったニッポンベンガルフレンズサークルの活動は、日本とバングラデシュを、そして人と人とをやさしさの架け橋でつなぎます。
*本記事は取材時点での情報をもとに作成しています。最新の情報については、団体へ直接お問い合わせください。