クローズアップ
学生団体おりがみ ~学生だからできる活動の創造で、つなぎ、広げるボランティアの輪 ~
「共生社会」 を目指して文化・環境・スポーツ・国際・福祉・教育の6つの分野でボランティア活動を創造する学生団体おりがみは、80大学、約400名の学生によって構成されます。今回は国内の学生を中心に国際ボランティアの面白さを広める国際チームの大学4年生の永田かのんさん、2年生の佐々木唯那さんに、活動についてお話を伺いました。
東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに団体が発足
佐々木さんは海外の文化に興味があり、勉強するだけでなく体験したいと、国際チームに入ったそうです。
「おりがみ」は、東京オリンピック・パラリンピックに学生の力で関わることを目指し、2014年に発足した学生団体です。団体名は、「おり」=オリンピック・パラリンピック、「が」=学生、「み」=みんなで盛り上げようという言葉の頭文字を取って付けられました。
ゴミ拾いなど身近なボランティアから徐々に活動の幅を広げ、“「おもしろそう」からはじまる共生社会” をビジョンに、文化・環境・スポーツ・国際・福祉・教育という6つのチームに分かれて活動しています。中には関心のある複数のチームを兼任しているメンバーもおり、2~3チームが連携して活動するなど、分野を越境したさまざまなボランティア活動を創造しています。
国際チームは約30名のメンバーで、国際ボランティアに関連したイベントやプロジェクト活動をしています。異文化理解、国際支援、その活動を通して得られる感動という3つのステップをサイクルとして経験することで、国際交流や国際ボランティアのハードルを下げることを目指しているといいます。「活動内容は自分たちでアイデアを出し合って決めていくので、自分のアイデアが採用されると嬉しいです」と、佐々木さん。
料理イベントを通じて外国人留学生の「第二の家」となるようなコミュニティを作る
江戸川区で活動するボランティア団体との交流の中で、「江戸川区の大学に通う留学生が日本人ともっと交流したがっている」という話を聞いたことをきっかけに、プロジェクトが発足しました。写真提供:学生団体おりがみ
国際チームの活動の1つが、「江戸川 Second Home Project」です。外国人にとって「第二の家」となるようなコミュニティを作るため、留学生たちと一緒に、江戸川区にあるシェアハウスでイベントを開催しています。
「江戸川区には外国人が多く住んでいます。その中には相談できる人がおらず、孤独を感じている人もいると聞きました。留学生をはじめ、在住外国人の方々が、同じ境遇の外国人や同年代の日本人大学生と交流したり、困ったときに相談したりできる場や機会を作ろうと思い、企画しました」、と永田さん。
プロジェクトは「和菓子を作る会」や、留学生が先生となる「○○料理を作る会」など、料理イベントを中心に開催しています。
「ただ座って話をするのではなく、一緒に料理をすることで会話が生まれるきっかけになったらいいなと思いました。お互いの文化を知ることにも繋がると感じています。留学生にも企画段階から一緒にイベントを作ってもらっています」と、永田さん。韓国・中国などアジア出身の人を中心に、毎回30名ほどが集まって料理を楽しんでいます。
佐々木さんは「留学生の日本語レベルは様々です。まだ日本に来たばかりで、簡単な単語しか喋れない人もいます。会話の難しさを感じながら、ボディランゲージを使ってコミュニケーションを取っています。盛り上がるのは日本のアニメに関する話題です。日本に興味を持ってくれているのを感じられて、嬉しかったです」と、振り返ります。
日本国内からできる国際協力の形を模索
小道具を作ったり、ノンバーバルに伝わる笑顔を意識したりして、子どもにも分かりやすい動画づくりを工夫したといいます。写真提供:学生団体おりがみ
「YOUTH OWN COLOR プロジェクト」では、日本国内からカンボジアの子どもたちの笑顔のためにできることを模索しました。「カンボジアを訪れたメンバーが、貧困による労働などを理由に学校に行けない子どもたちを目の当たりにし、子どもたちのために何かしたいという思いでプロジェクトを始動しました」と、永田さん。プロジェクトの開始時には、カンボジアの小学校で英語を教えた経験のある大学生を講師に招き、カンボジアの子どもたちの現状を知るワークショップを開催。その後、カンボジアの子どもたちに向けて、歯磨きの仕方と手洗いの仕方を解説する動画を作成しました。そして、千葉県で開催された「SDGs学生フォーラム」に参加した際には、プロジェクトを通して知ったカンボジアの文化や現状を同世代の学生たちに伝える活動を行いました。現在は、作成した動画をカンボジアの子どもたちに届けてくれる支援団体を探しています。
その他にも国際チームは国際医療への支援を身近に感じてもらうため、「Globicine プロジェクト」を行っています。謎解きやペットボトルキャップアートなどの体験を通して、日本の子どもたちに自分たちが当たり前に受けている医療を受けられない国があることや、そうした国のためにできることを知り、考えてもらいます。「情報を伝えるだけでなく、楽しみながら学べるというのを大切にしています」と、佐々木さん。2025年末に子ども食堂での開催を目指し、準備を進めています。
気軽に参加できる形で、国際交流のハードルを下げる
上野のアメ横や博物館に行ったり、朝食を食べたりして1日を一緒に過ごしました。写真提供:学生団体おりがみ
「なかよしプロジェクト」では、国際交流を身近にするべく、外国人留学生との交流イベントを企画しています。「文化を知らないことで、外国人に対して壁を感じてしまう人も多いと思います。お互いの文化を知ることで壁をなくし、仲を深めるきっかけづくりをしていくことを目指しています」と、佐々木さん。
2025年8月には、留学生に向けた上野観光ツアーを開催。カナダ・アメリカ・フランスなどからの留学生が20名ほど参加し、日本の文化を知ってもらうために都内の観光スポットを案内したといいます。
「事前にレストランにベジタリアンの人でも食べられる料理があるか確認するなど、それぞれの文化や価値観に合わせた準備を行いました。留学生からはカラオケに行きたいというリクエストがあって、一緒にカラオケを楽しみました。何かするたびに、日本語で“ありがとうございます”と言ってくれて、日本に関心を持って日本語を勉強してくれていることを感じられて嬉しかったです」と、佐々木さん。
様々なプロジェクトを通して、メンバーは文化の違いを体感しています。「包丁で食材を切る時に、 “猫の手” をフランスの方が知らないことに驚きました。日本では当たり前に感じていることが当たり前ではないと知って、文化の違いを感じて面白かったです」と、永田さん。佐々木さんは「ベトナムの人たちは家族や地域との繋がりを大切にしていて、家族に毎日電話している姿を見たのが印象に残っています」と、話します。
学生だからできることを通じて、ボランティアに関わる人を増やす
万博会場ではメンバーが未来社会について考えるパネルディスカッションにも参加しました。写真提供:学生団体おりがみ
団体としてこれまでさまざまなイベントなどに関わってきましたが、最近は大阪・関西万博に も参加し、紙飛行機プロジェクトと伝統文化未来共創プロジェクトの運営に携わりました。
「学生だからこそできること、学生にしかできないことがあると思っています。それを体現できたのが大阪・関西万博 だったのではないかと思います」と、会場で運営ボランティアをした佐々木さんは振り返ります。
国際チームのこれまでの活動について、お2人は次のように振り返ります。
「昨年度は国際チームのメンバーが今よりも少なく、10人ほどでした。実際に海外でボランティアをしたがっているメンバーもいるので、ハードルを高く感じる人もいたのかもしれません。同期のメンバーと相談して、もっと気軽に参加できる企画を考えたところ、新しいメンバーもたくさん入ってきてくれました」と、永田さん。
「国際ボランティアは、英語ができる人がやるもの、と敬遠されがちです。他国の文化にわくわくしたり、興味を持ったりする面もあるはずなので、もっと身近に感じてほしいです」と、佐々木さん。
「団体全体としては、これからも学生だからできることを大切に、様々な企業や団体と一緒に活動の幅を広げ、ボランティアに関わる人を増やしていきたいです」と、お2人は話します。
学生視点だからこそ生まれる視点を活かし、ボランティアの楽しさ・面白さを広める学生団体おりがみの活動は続いていきます。