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ママ支援団体 RMJ(Relaxing Place for All Moms in Japan) ~国籍・人種に関係なく、寄り添いお互いに助け合える居場所づくりを通じて、すべてのママやパパが安心できる社会を目指す~

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ママ支援団体RMJを立ち上げた、室井萌さん。1児のママでありながら、団体代表、シンガー、琵琶奏者、薬事関連のITサポート、日本語教師、英会話教室のアシスタントティーチャーなどさまざまな顔をお持ちです。

ママ支援団体 RMJ(Relaxing Place for All Moms in Japan)は、ひとりでも多くのママたちの寂しさが癒されるように、オンラインで相談できる子育て支援センターの運営や交流会の開催など、葛飾区を中心に活動しています。外国出身のママとの出会いをきっかけに、たった一人でRMJを立ち上げた室井萌さん。2022年3月の団体の設立から約2年を経て、その輪はどんどん広がっています。団体を設立した思いや現在の活動についてお話を伺いました。

 

孤独を感じているママたちと友だちになりたい

「自分がママになるまでは、子育てがこんなに孤独なものだと知りませんでした。自分が必要だったように、他のママたちにも仲間や居場所を作りたいんです」と話す、室井さん。

現在、RMJが団体として繋がるママは約60人、その3~4割は外国籍のママだといいます。室井さんが「最初は想定していなかった」という団体設立のきっかけは、地域で孤立してしまっていた外国籍のママとの出会いだったといいます。
「子育て支援センターを実施する近所の保育園に妹が勤めているんですが、日本語が話せず孤立してしまっているフィリピン出身のママがいることを利用者さんから聞いたそうなんです。会って話を聞くと、彼女はまったく友達がいなくて、毎日ベランダから『誰か友達になれそうな人いないかなぁ』と外を眺めていたそうです。友達を探しているママたちは、彼女のほかにも近所にたくさんいるだろうと思いました。外国籍のママたちは特に友だちづくりをしにくいでしょうし…彼女たちと友だちになりたい、と思ったんです」と、室井さん。
室井さん自身も、コロナ禍当時は挨拶を交わす程度だったという隣の部屋に住むモンゴル出身のご家族と、『もう少し仲良くなりたいのになれない…』、そんなもどかしさを抱えていたそうです。
「日本人のママ、外国籍のママ、みんなが気軽にママ友になれたらいいのに…当時そんなことを考えていました」。

 

ないなら自分で作るしかない、と団体を設立

「お互いが気軽に話せたり、相談できたりする関係を作りたい」と、室井さん。
地域のイベントにも団体として積極的に参加しています。区役所や自治会と共催でイベントを行なうこともあります。

「フィリピン出身のママと仲良くなってからは、日本語が苦手なママたちをつなげられたらいいのにな、と考えていました。 ただ、わたし一人でできることにも限界がありますし、外国籍のママたちのサポートやママ同士の交流をしている団体が区内にあれば…と区のボランティアセンターに聞きに行ったら、『そういった団体はない』と。ないなら自分で作るしかないな、と思ったんです」と、室井さん。
とはいえ、団体を立ち上げることは想定していなかったため、半年くらいもやもやと悩む日々が続いたといいます。そんなときに「コープみらい くらしと地域づくり助成事業」の案内を見つけたそうです。
「まだ何も始まっていない段階ではありましたが、企画書を作成し、応募しました。わたしがこれからしようとしていることは社会的にいいことで、必要とされることなのか、知りたかったんです。助成が採択されたことで、安心して活動を始めることができましたし、助成していただいたからには団体としてしっかり歩み始めなければならなくなります。コープさんから背中を押ししてもらったことが、活動をしていく自信になりました」。
2022年3月にRMJを立ち上げ、本格的に活動がスタートしました。

 

ママたちの不安や孤独に寄り添う

オンライン子育て支援センターのちらし
外国籍のママからの要望で郵便局に付き添い、用紙について説明したとき。「もう次からは大丈夫!」と自信を持ってくれたそう。

RMJではママたちのサポートとして、現在主に2つの活動を行なっています。
1つが365日いつでもLINEで相談できる「オンライン子育て支援センター」の運営です。子育ての悩みを保育士さんに相談したり、ちょっとした愚痴や雑談のメッセージを送ることができます。このサービスは日本人ママも外国籍ママも利用することができます。
「このサービスを始めたのは、わたし自身が必要だと思ったからなんです。子育ては孤独だということを、子どもを持つまで知りませんでした。わたしも最初の頃は地域の子育て支援センターに行かないで家にこもっていたタイプなので、育児の悩みやちょっと寂しいとき、LINEで気軽に言ったり相談できたらいいなと思っていました」。
子どもが泣き止まない、ご飯を食べない、といった子どもの状況に関する相談など、最初の (とし) には1年間でおよそ900通のLINEが寄せられたといいます。

 

2つ目の外国籍ママへの対面支援では、日本語に不安のあるママの申請手続きの補助や付き添い、通訳等の要望に応えます。
「書類の申請などはハードルが高いので、区役所に付き添ったりもします。病院の予約などは電話も難しいですし、オンライン予約もぜんぶが日本語ということが多いので手伝います」。
子育てをしながら不安や孤独を抱えるママたちに寄り添う活動を続けています。

 

友だちだから自然と生まれる、助け合い

RMJは子育てについて の情報交換の場にもなっています。
子育て広場は人種や国籍、年代も関係なくみんなが交流できる場になっています。

「RMJは名前のとおり、ママたちが寄り添ってお互いに助け合いながら、心安らげる場所をみんなで作れたらと思って始めた団体です。わたしたちは外国人サポートグループではなく、お互いに助け合う関係でいたいと思っています。実際は日本語の苦手なママに通訳などのサポートをしていますが、そうしたサポートは二次的なもので、ママ同士仲良しだったら、困っているママがいるとき普通に助けると思うんです。だからこそ、メンバー同士が仲良くなれることを最優先にしています。RMJを通じてみんなにママ友ができたり、言葉が通じなくてもつながれるようになったらいいなと思います」。
そうした思いから、RMJでは月に1回以上はメンバーのママやパパたちが交流する場を設けています。実際にRMJを通じて、メンバーの皆さんの友だちの輪が広がっているといいます。「これまで地域のイベントは外から眺めるだけでしたが、わたしがその輪の中に入って、みんなとピクニックをしているのがうれしい」と話すメンバーも。
「また、子育てで仕事を辞めたり休んだりしているママたちが、メンバー間の助け合いの中で『自分のできることや得意なことが誰かの役に立っている』と、お互いに貢献感を得られているのも事実です。わたし自身もそうしたママたちに助けられています」。

ママたちの連帯により生まれるエンパワーメント

一年の初めには、毎年メンバーのママたちの目標を発表し合います。
2024年のママたちの目標

「設立3年目の今年はNPO法人化したいと思っています。法人化することで、団体として企業から通訳や翻訳などの業務委託をしてもらえたら、外国籍のママたちの活躍の場を創出することができます。そうすれば、ママたちの自信につながりますし、社会からのママたちの印象も変わると思うんですよね」と話す、室井さん。初めは室井さん一人で行なっていた運営も、少しずつ他のメンバーと分担できるようになり、年間スケジュールをみんなで考えたり、イベントの企画を他のママが担当したりしているそうです。そうした中、RMJのママたちの輪は今後さらに広がっていきそうです。
「実は今、相模原市に住んでいるママが横浜地域でRMJをやりたいと言って、一緒に準備を進めているところなんです。関西に住むママから『関西での活動はないですか』とお問い合わせを頂いたこともあります。RMJの活動やつながりを必要としているママたちに届けるためにも、いろいろな場所にRMJができたらいいなと思っています」。

 

子育てや仕事で忙しい中でも、精力的に活動する室井さん。活動の原動力をお聞きすると、次のように話します。
「ママたちを見ていると、本当に才能に溢れる人たちばかりなんです。ママであることは彼女たちの一面に過ぎません。『ママ』という括りでなく、一人ひとりを見てもらえる社会になったらいいなと思います。そんな社会への想いを持って、活動しています」。
RMJを通じて出会ったママ・パパたちの友だちの輪。そのつながりによって一人でも多くのママやパパたちの子育ての不安や寂しさが癒されるとともに、RMJ(Relaxing Place for All Moms(and dads) in Japan)が少しでも増えていくことを願います。

*本記事は取材時点での情報をもとに作成しています。最新の情報については、団体へ直接お問い合わせください。