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認定NPO法人 シャプラニール=市民による海外協力の会 ~ 「誰も取り残さない」をミッションに、在住外国人に向けて活動の幅を広げています ~

認定NPO法人 シャプラニール=市民による海外協力の会
シャプラニールのスタッフ、菅野 (すがの) 冴花 (さえか) さん(左)と宮原麻季さん(右)。二人 (ふたり) とも12年前にJICAの青年海外協力隊員として、ネパールで活動していました。
 

1972年に設立された認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会(以下:シャプラニール)は、今年で50周年を迎えました。「誰も取り残さない」というキーワードのもと、国際協力NGOとして開発から取り残された人々に焦点を当て、主にバングラデシュやネパールで活動を続けてきました。2021年からは在住外国人向けのフードパントリーや、ネパール人向けのオンラインイベントなども開催しています。

 

市民を巻き込みながらミッションの解決に取り組む

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シャプラニールの事務所は、バングラデシュ、ネパール、日本の3か所にあります。
 

シャプラニールとは、バングラデシュの言葉・ベンガル語で「睡蓮の家」という意味を持ちます。設立から50年という歳月の中で、支援活動も変化してきました。
海外活動グループチーフの宮原麻季さんは「シャプラニールは1972年にバングラデシュで活動を開始しました。現地の人たちが始めた活動を側面から支援していくということを続けてきましたが、80年代から90年代になるとショミティ(ベンガル語でグループの意)という村のグループへの直接アプローチという形に転換しました。そして現在は持続可能性という観点からも、現地のスタッフや、そこで生きる人たち自身が中心となって活動できるようにすることが大切と考えて、パートナーシップ方式(現地中心)の支援体制になりました」と話します。「現地の人にとって本当に役に立つ支援とは何か」を問い続けています。
そして、シャプラニールの経験が他の地域でも活かせるのではないかと検討し、1996年からネパールでの活動も開始しました。

 

国境のシームレス化が起きている

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もともとアジアで何かしたいと思っていましたが、ご縁があってネパールと関わり始めたという宮原さん。今ではネパール愛が (つよ) いそうです。
 

現地で求められる支援も、変化してきたといいます。
「私自身は12年ほど前からネパールに関わり始めましたが、最初に行ったときと今とでは大きく変わりました。驚くほど発展しています。バングラデシュもネパールも貧困層が多かったですが、今は格差が非常に大きくなっており、かなりお金持ちの人たちもいます。発展していく中で社会活動はどんどん生まれていますが、どうしても取り残されてしまうさまざまな人々がいます。その人たちの権利もどう守るのかが私たちのミッションであり、『誰も取り残さない』というところに通じていくのだと思っています」
宮原さんはもうひとつ、国境という枠組みが近年シームレス化していると感じているそうです。「生産者の生活向上」を目的にシャプラニールはフェアトレード活動を続けていますが、貧困の理由をたどっていくとそこにも変化があるそうです。
「昔は農村だから稼ぐ機会がないため、一生懸命働いても貧困になっていました。出稼ぎの場所もちょっと都市へ働きに行くくらいでした。今は稼ぎのいいところがあれば、飛行機に乗って国外に出稼ぎに行くというのが一般化してきていると思います」

 

2021年、国内での在住外国人に関する取り組みを開始

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「日本に住むネパールの人たちは、子どもに関わるテーマに高い関心があります」と菅野 (すがの) さん。
 

日本国内の在住外国人が増える中、シャプラニールのフィールドが海外にあったことで、海外から日本を見ることができたといいます。ネパールやバングラデシュの出稼ぎ事情を現地から見ると、日本は行きたい国の1番ではないそうです。「富裕層の人たちが最も行きたい国は、英語の通じるオートラリアやイギリス、アメリカなどです。貧困層は陸路でインドへ行きます。インドよりすこし収入が見込めるのがマレーシアや中東諸国で、その上に日本がくるようです」と、宮原さん。

在住外国人の中には様々な理由で困難を抱えている人も。その数が増えるにつれ、シャプラニール支援者の (かた) からも「何かできないか」という声が多く寄せられるようになりました。これまでずっと国外のネパールやバングラデシュ現地での活動をしてきたシャプラニールですが、2021年、これまでの活動から状況が把握しやすいネパール人を中心とした、国内での在住外国人に関わる取り組みを開始しました。在住ネパール人からの相談も増えてきたことから、昨年から始めたのが、ネパール語で情報提供を行うオンラインイベントです。これまで7回実施されていますが、そのテーマは多岐にわたります。この事業を担当する海外活動チームの菅野冴花 (すがのさえか) さんに聞きました。
「在留資格、子どもの教育については非常に関心が高いです。例えば教育では、日本の学校の仕組みとネパールの仕組みを比較するように紹介し、日本で選択できる教育システム(公立校、インターナショナルスクール等)についていろいろな人の事例を交えて紹介しました。子どもの将来を考える上で、選択肢を多く提供できるようにしました」
参加者からは「ネパール語で相談できるので、すごく安心する」という声が届いているそうです。

 

フードパントリーのもう一つの目的は、生活相談

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初めての試みであるフードパントリーをスタート。試行錯誤しながらも定期的に開催しています。
 

国内支援の一つとしてフードパントリーを2021年12月に初めて企画し、今年の3月、7月と定期的に開催していますが、その会場では相談会も実施しています。
菅野 (すがの) さんは「生活困窮者に食料をお渡しするのが目的ですが、もうひとつの大きな目的はその人が抱えている生活の困りごとなどを聞き対応することです。つまり生活相談をする場を増やす、というものです」。継続していく中で、相談に乗ってもらえる場所があると、認知度を上げていくことが大切だといいます。3月にフードパントリーを実施した際に、「日本で生活しているけれど、日本の人が僕らのような外国人にこんなサポートをしてくれるなんて知らなかった。自分が支援を受けていいのか分からなくて、緊張して来たんだ」という人がいたそうです。
「都内のネパールの人たちは、コミュニティにつながっている人と全くつながっていない人がます。働いているレストランとアパートの往復だけで、日本の社会を全く知らないという人も実は多くいます。先ほどの緊張して足を踏み入れるのも怖かったという人たちと、どうつながることができるのか。まだ試行錯誤しているところです」
その点は、在住外国人に関わる取り組みを行うなかで感じている課題にもつながるといいます。
「日本に暮らしているのに、日本人や日本社会と接点がない、つながれない外国人が多いです。お互いに何か接点を持てたら、もっと外国人が日本で生活しやすくなると思います。お互いを知るような機会を作っていけたらいいなと思います」
その上で、私たち市民ができることとして、「生活をしている中で、よく見てみると、周りに外国人の方が働いていますし、いろいろなところに暮らしています。「外国人だから」という壁を取り払って、見かけたらちょっと声をかけてもらえるといいのかなと思います」と話します。

 

仲間として一緒に活動しませんか

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フェアトレードの商品は、東京の事務所で購入できます。
 

誰も取り残さない。このミッションに基づいて、シャプラニールは中長期ビジョンとして以下の4つを掲げて活動しています。

  1. 子どもの明日を守る
  2. 災害に強い地域をつくる
  3. 社会からの孤立を防ぐ
  4. 市民同士のつながりを促す

中でも市民とのつながりをとても大切にしています。
ボランティアやイベントなど市民のみなさんの様々な関わり方や参加の機会を通して、「現地と日本社会をつなぐこと」も大切にしているそうです。
市民の皆さんへのメッセージを聞きました。

宮原さん「わたしたちは国内活動を始めたばかりなので、ぜひ一緒にやりませんか。いろいろな人たちと連携してこそ、成果が出ると思います。仲間として一緒に活動できたらうれしいです」
菅野 (すがの) さん「いろいろな世代の人と一緒に活動していきたい、という思いがあります。幅広くいろいろな市民の方に関わってほしいです」

 

シャプラニールでは、ボランティアやイベントなど、市民のみなさんが参加できるさまざまな機会が提供されています。HPからご確認ください。
HP: https://www.shaplaneer.org/

*本記事は取材時点での情報をもとに作成しています。最新の情報については、団体へ直接お問い合わせください。