クローズアップ
チェコセンター東京 ~ 豊かな文化を誇るチェコの魅力を発信する ~

日本に住んでいるチェコ出身者は420人ほど(2020年)ですが、チェコに関する講座や絵画展、コンサートなどは数多く行われています。広尾の閑静な住宅街にあるチェコセンター東京は、チェコ外務省の外郭団体として、チェコの文化を広める活動を積極的に行っています。スタッフの稲岡由香さんとヤクブ・ヴァーレクさんにお話をうかがってきました。
世界26都市にあるチェコセンター

日本では東欧と紹介されるチェコですが、実は地理的には中欧に位置しています。人口は約1,069万人(2020年)で東京23区とほぼ同じくらい。国土の広さは日本の5分の1ほどで、北海道に例えられることが多いそうです。「チェコはドイツ・ポーランド・オーストリア・スロバキアに囲まれた内陸国です。ヨーロッパの中央にあるので、古くから『文化の交差点』として豊かな文化が育まれてきました。長い歴史の中で周辺国の影響を受け、さまざまな苦難を味わってきた国でもあります」とスタッフの稲岡さん。
チェコセンターの役割は、チェコの文化を世界中に広めること。外交活動の中心的役割を担っています。「チェコセンターは世界26都市に支局があります。2006年に、アジアで第1号のチェコセンターとして東京支局がオープンしました。チェコの文化を発信するとともに、チェコと日本との文化交流の機会をつくっています」と教えてくれたのはスタッフのヴァーレクさんです。世界のチェコセンター支局を合わせると、年間イベント数1700、イベント参加人数9,900万人、SNSのフォロワー数19万人を誇るそうです。
中世の街並みが残る美しい国

チェコの首都プラハは、中世の街並みが残る美しい古都です。2度の大戦の爆撃をほとんど受けませんでした。世界の主要な都市に高層ビルが立ち並び、個性を失っていくなかでプラハは貴重な街といえます。稲岡さんがチェコと出会ったのは、高校生のときの家族旅行でした。人形が好きなお母様の希望で、マリオネットに会いにチェコを含む中欧3か国へ。「初めて降り立った海外がチェコでした。想い描いていた中世ヨーロッパがそこにあり、教会や建物のレリーフや石畳の美しさなど、日本とまったく違う世界に魅了されました。その印象が強く残っていて、大学でチェコ語の門をたたきました」
チェコ語はどんな言葉かご存じでしょうか。ロシア語やポーランド語と同じ、スラブ語族に属する言葉です。世界の言語の中でも難易度が高いことで知られています。チェコセンター東京では、チェコ語講座を春、秋、冬の年3回開催しています。初級から上級まで10クラスあり、毎期約90名が学んでいます。センターではそのほか、チェコ語能力検定試験の開催や、在日チェコ大使館との共催で、チェコ語弁論大会も実施しています。
チェコの3つの大学に日本語学科がある

チェコには日本語学科のある大学が3校あります。プラハ・カレル大学、マサリク大学、そしてパラツキー大学です。ヴァーレクさんはパラツキー大学の日本語学科を卒業しています。「私が入学したときは同じ学年に180人が在籍していました。チェコの大学は入学するのは難しくありませんが、進級試験が難しく、卒業できたのは40名ほどでした。日本への関心は年々高まっていると感じます。アニメの影響が大きいと思いますが、武道や茶道など、日本の伝統文化に興味のある人たちもいます。私は小学生のときに見たアメリカのドラマ『将軍』で、三浦按針を知ったことがきっかけになりました。江戸時代に異国人でありながら将軍のアドバイザーになり、日本の武士として生きた人がいる。そのことに興味を持ち、日本語学科に入りました」と教えてくれました。
一方、稲岡さんはこう話します。「私の出身校の東京外国語大学のチェコ語学科は、だいたい1学年が20名ほどです。チェコの人口比率からいっても、日本に興味のある方が多いのに驚かされます。」
知らないうちにチェコと出会っている

豊かな文化を有するチェコ。日本人にもなじみ深い文化人がたくさんいます。たとえばクラシック音楽が好きな人にとってチェコといえば、『新世界より』を作曲したドヴォルザークや、『モルダウ』を作曲したスメタナ、『シンフォニエッタ』を作曲したヤナーチェクでしょうか。チェコのアートといえばアール・ヌーヴォーを代表するミュシャがいます。日本でも知られている映画『カッコーの巣の上で』や『アマデウス』は、チェコ出身のミロス・フォアマン監督が手がけました。
また、チェコの伝統産業といえばガラスですが、日本の国技である大相撲の優勝力士にボヘミアンガラスの優勝杯が贈られることはよく知られています。外国の使節として優勝力士を表彰する伝統を、1970年の大阪万博を機に最初に始めたのがチェコだそうです。スポーツ選手にも有名選手がいます。1964年東京オリンピックの体操で金メダルを獲得したチャスラフスカ選手は、首都プラハの出身です。「東京の恋人」といわれたほど人気を集めたので、年配の方なら記憶のある人も多いことでしょう。実は私たちの身近にはチェコに関係するものが数多くあるのです。そして昨年(2020年)、チェコと日本は交流100周年を迎えました。
チェコはビール大国、ビールの飲酒量世界一

「チェコ人の性格は、アメリカ人と日本人の間くらいに入ると思います。オープンな性格というより、少しシャイなところがあります。日本とチェコが似ているところは、国の伝統を大切にしながら新しいものを生かすところ。違うところは、チェコは個人主義で、日本は集団主義だと思います。どちらも良い面、悪い面があります」とヴァーレクさん。チェコの名物について稲岡さんに聞いたところ「ビールです。チェコはビール大国なんです。一人あたりの年間ビール消費量は138リットルとダントツの1位(2018年The Brewers of Europe / Evropa v datech調べ)。しかも26年連続の1位です」と教えてくれました。2位のオーストリアにも大差をつけています。ちなみに日本は40.2リットル(2018年キリン調べ)なので、日本の3倍以上も飲んでいることになります。
そんなチェコに日本で出会える「チェコフェスティバル」が年1回、東京と関西で開かれています。駐日チェコ共和国大使館・チェコ政府観光局・チェコセンター東京の主催で、毎年秋に開催しているので、2022年を楽しみにしてください。
*本記事は取材時点での情報をもとに作成しています。最新の情報については、団体へ直接お問い合わせください。