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せたがや国際交流センター(クロッシング せたがや) ~ 日本人と外国人が交流できる拠点として ~

2020年6月にオープンした「せたがや国際交流センター」は、東京で一番新しい国際交流協会です。コロナ禍という想定外の状況に見舞われながらも、オープン以来、着実に事業を積み重ねています。やさしい日本語で巡るまち歩きツアーや、多文化理解講座といったイベントも積極的に実施していて、どの企画も満員御礼になるほどの人気だそうです。
外国出身者も地域社会の中で活躍できるまちへ

せたがや国際交流センターには、「クロッシングせたがや(以下同)」という愛称があります。「世田谷に暮らす様々な人が交流できる、交流の輪が広がる交差点のような存在でありたいという思いを込めてつけられました」とマネージャーの岡田さん。この施設ができたきっかけは、2018年に制定された『世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例』を受けて、2019年に『世田谷区多文化共生プラン』がつくられたこと。「多文化共生プランは、『外国人のみなさんが地域社会の中で活躍できるようにし、誰もが安心して暮らせるまちの実現に取り組みます。多文化共生の意識づくりで、外国人等への偏見や差別を解消します』というものです。このプランに基づいて様々な取組を進めるために、せたがや国際交流センターがつくられることになりました」と岡田さん。
東京2020大会に向け、世田谷区民と外国人が交流できる場所をつくろうと、開設に向けて準備を進められたそうです。
三軒茶屋周辺にはたくさんの外国人がいる

クロッシングせたがやは、三軒茶屋のランドマークであるキャロットタワーの2階にあります。アクセスがよく、誰でも気軽に訪れやすい場所です。「世田谷区にも外国人が増えてきました。東日本大震災以降は、右肩上がりです。とくに三軒茶屋周辺は若い人たちが多いようです」と岡田さん。世田谷区には22,000人(2021年1月現在)を超える外国人が住んでいます。国籍別に見ると、最も多いのが中国、そして韓国・朝鮮、3位にアメリカが続きます。10位までの国にはイギリスやフランスなどが含まれ、欧米系の人が多いのが世田谷区の特徴のひとつです。また、区内には大学が多く、たくさんの留学生もいます。
国際交流や多文化理解を深めるお手伝い

クロッシングせたがやは、世田谷区に暮らす外国人のみなさんに次の3つのサービスを行っています。
- しりたい。さがしている。:暮らしに役立つ情報などを知ることができます。
日本語が得意でない人にもわかりやすいように、「やさしい日本語」を含め、多言語で情報を発信しています。 - ともだちがほしい。:地域で活動している団体を紹介します。
多文化共生や国際交流の活動をしている団体や学校を紹介する展示コーナーもあります。 - こまった。わからない。:困ったことがあれば、相談する場所を紹介します。
新型コロナに関連した給付金や、ワクチン接種の問合せなど、様々な困りごとにおけるサポートもしています。
また、地域で活動している団体の方、国際交流や多文化共生に興味のあるみなさんにも、さまざまなサービスを提供しています。「国際交流や多文化理解を深める、イベントや講座などもやっています。」と亀井さん。多彩なイベントや講座が大人気と聞いて、世田谷区民の意識の高さを感じました。
人気の多文化理解講座は、募集の当日に埋まることも

やさしい日本語で外国人とコミュニケーションをとる「にほんご交流会」や、世田谷区内をやさしい日本語でめぐる「まち歩きツアー」は特に好評だったそうです。どちらのイベントも、外国人参加者と日本人参加者がほぼ同じ比率になるよう工夫することで、高い満足度を得ています。参加者からの声には、「コロナで日本人と話す機会がなくなってしまった。にほんご交流会に参加して知らない人と話せてよかった」「世田谷に住んでいるけれど、家と学校の往復だけだったから、まち歩きツアーでいろいろな観光スポットが見られてよかった」などの感想が聞かれたそうです。また、概ね月1回開催している「多文化理解講座」の講師には外国人も日本人もいて、テーマも「やさしい日本語で伝えてみよう」「食を通した異文化交流」など多岐にわたります。「これらの講座は、募集とともに定員に達することもあります。キャンセル待ちの講座も多いです」と亀井さんが教えてくれました。
ホームページにSNS、メールマガジンにニュースレター、情報発信も活発

クロッシングせたがやでは、情報発信も活発に行っています。毎月配信するメールマガジンには、現在200名ほどの人が登録しています。そのほかホームページやFacebook、TwitterなどのSNSも活用しています。そして、ひと月に1回発行する外国人向けのニュースレターには、日英と日中の2種類があります。翻訳を担当しているのは区民ボランティアです。ボランティアの募集は、メールマガジンなどで呼びかけるそうです。最近は、外国人スタッフも新たに加わり、活動の幅を広げていく企画をしているようです。国際交流の拠点として、誰でも気軽に訪れることができるクロッシングせたがや。そのアクティブな活動には、これからの多文化共生のヒントが隠されています。
*本記事は取材時点での情報をもとに作成しています。最新の情報については、団体へ直接お問い合わせください。