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特定非営利活動法人 在日モンゴル人会 ~ 日本に暮らすモンゴル人を支援するとともに、モンゴルと日本の文化・ビジネス交流を図る ~

特定非営利活動法人 在日モンゴル人会
左から理事長のガンボルト・バルジャンニヤムさん、YouTubeでニュースを担当するセデ オチル・ゲレルテ オドさん、ポッドキャスト担当のジグジデ・トゥメルチデルさん。
 

大相撲で活躍するたくさんのモンゴル出身の力士たち。その姿を見ているので、日本人はモンゴルの人たちを身近に感じているのではないでしょうか。仕事や留学、技能実習生として来日するなど、日本には約13,000人(2019年度)のモンゴル出身者が住んでいます。在日モンゴル人会は、日本にいるモンゴルの人たちを支援するために2016年に発足しました。

 

モンゴルと日本、住む環境は大きく違う

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右がモンゴルの国旗で、赤は正義を青はモンゴルの空を表し、左側に描かれている紋様はソヨンボという伝統的なシンボルです。
 

モンゴルの首都ウランバートルは、高いビルやマンションが並ぶ都会ですが、車で20~30分も走ると360度ぐるりと広がる大草原が現れます。馬にまたがり高原を駆けめぐる人。のんびりと草を食べる牛や羊たち。モンゴルの伝統的な移動式住居であるゲルもポツン、ポツンと見ることができます。大自然の中でゆったりと暮らす人々。モンゴルにはそんなイメージがあります。
国土は広く、日本の約4倍。しかし、人口は約336万人(2020年)で、日本の人口の約38分の1です。世界で最も人口密度の少ない国といわれています。海から離れた大陸性気候のため、年間を通して非常に乾燥しているのが特徴です。雨もあまり降りません。梅雨の時期に東京に来たモンゴルの人が「たくさんの雨が降る中を、傘をさして歩くのがすごく楽しい」といっていたそうです。夏に40度を超える地域がある一方で、冬には-40度を下回るところもあるそうです。

 

在日モンゴル人会の名誉会長は横綱白鵬関 (はくほうせき)

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ガンボルト・バルジャンニヤム(バルジカ)さん。モンゴルでは名前が長いので、みんな短くした呼び名を持っています。最近は短い名前も多くなったそうです。
 

在日モンゴル人会が2016年に発足して、6年目になりました。名誉会長は横綱白鵬関 (はくほうせき) です。事務所には、白鵬関 (はくほうせき) の大きな写真が飾られています。 (おお) 横綱として活躍する姿は、モンゴル人の誇りだといいます。現在の理事長は、バルジャンニヤムさん。バルジカさんと呼ばれています。「東京には約7,000人のモンゴル人がいます。生活情報の提供や相談会を開いたり、日本とモンゴルの文化交流やビジネス交流もしています。現在会員は100人ほどですが、情報を受け取る人はもっとたくさんいます」とバルジカさん。会の活動は幅広く、日本語スピーチコンテストを開催したり、モンゴルへマスクと消毒液の寄付をしたりと多岐にわたります。実はバルジャさんのお父さんは、モンゴルでは知らない人がいないほど有名なホーミー(※)の歌手です。バルジカさん自身もホーミーを歌うとともにプロの馬頭 (きん) (※)奏者でもあります。現在は日本でミュージシャンとして活動しながら、在日モンゴル人会の理事長も務めています。

※ホーミー:モンゴルの伝統的な歌唱法。
※馬頭 (きん) :モンゴルの民族楽器。

 

YouTubeで週1回ニュースを配信

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不動産会社で働くセデ オチル・ゲレルテ オド(ゲレル)さん。ニュースを読むために、話し方を何度も練習したそうです。いつかはニュースに日本語の字幕を入れることが目標です。
 

在日モンゴル人会では、今年から新しく2つの情報発信を始めました。ひとつは2月からスタートした「AMJニュース」で、YouTubeで配信しています。毎週1回、その週にあった日本のニュースをモンゴル語で紹介しています。「ニュースは難しいので、モンゴル語にすることで届きやすくなります。3,000人くらいの人が見てくれていますが、そのうちの約60%は在日モンゴル人で、40%くらいは日本に興味のある人です」と、バルジカさん。ニュース担当のスタッフは4人で、ゲレルさんはその一人です。「どのニュースにするかをみんなで決めて、原稿を作り、収録します。スタッフは全員がボランティアです。働いている人や留学生もいるので、週末に集まって制作しています」。ファッションもニュースキャスターを意識して、とてもおしゃれです。本格的なので、モンゴルで放映されているニュース番組かと思うほどです。ニュースで取り上げることが多いテーマは、日本のルールや教育、病院、ビザや法律など。日本に早く慣れてもらうために情報を届けています。もちろん相撲のことも取り上げます。

 

ポッドキャストではジャパニーズドリームの体験者が語る

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人材派遣会社を経営するジグジデ・トゥメルチデル(チュギ)さんは、ポッドキャストの担当です。食事はやはりふるさとの料理が食べたいそうです。奥さんが作るモンゴル料理を毎日食べているので「幸せです」。
 

「AMJニュース」に入らないものは、ポッドキャストで配信しています。ニュースは1回の配信が10~20分くらいですが、ポッドキャストは1時間ほどのインタビューが中心です。企画を模索中だそうですが、現在はジャパニーズドリームを実現したモンゴルの方を招いてさまざまな話を聞いています。クラシックバレエで成功している人、日本で医者になった人などが登場しています。「日本でどうやって成功したのか。どんな勉強を、どのようにしてきたのか。先輩が伝えることで、後輩たちは元気をもらえます。次に向かうヒントにもなります」とゲレルさん。ポッドキャストの担当は別のメンバーがいて、3週間に1度程度配信しています。モンゴルの先輩から後輩へのメッセージ。日本の中で熱い交流が行われているのです。ポッドキャストもすべてモンゴル語なので、モンゴル語を知らない人は見てもわからないのがとても残念です。

 

モンゴル相撲 (ずもう) は子どものころからの身近な遊び

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在日モンゴル人会の事務所が、あっという間にスタジオに早変わりです。照明も録画も編集も、すべて手作りです。
 

「日本は安全で、頑張った人にはチャンスがたくさん与えられる国だと思います」とバルジャさん。モンゴル人と日本人が似ているところは「優しいところ」で、似ていないところは「モンゴル人は時間を守ることが苦手なところです」と笑います。ゲレルさんは「日本の (かた) はまじめだと思います。モンゴルでは高校生からアルバイトをすることはありません。日本人は一生懸命働きます。こうしたところはモンゴル人も真似をした方がいいと思います。子どものころに教わったことは一生忘れないと聞いていますから」といいます。ところで、モンゴルの人はなぜ、あんなに日本の大相撲で活躍できるのでしょう。「モンゴルにも相撲があります。もともと男の子たちの遊びです。子どものころから、スポーツというより楽しい遊びなんです。楽しいからどんどん上達するのかもしれません」とチュギさんが教えてくれました。

*本記事は取材時点での情報をもとに作成しています。最新の情報については、団体へ直接お問い合わせください。