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在日ジョージア大使館 ~日本で知名度が高まるジョージア。母国の文化を日本語で積極的に発信。~

在日ジョージア大使館
在日ジョージア大使館 ティムラズ レジャバ臨時代理大使(左)と ダヴィド ゴギナシュヴィリ博士(右)
 

相撲やラグビー、バレエファンの (かた) なら、ジョージアはすっかりおなじみの国だと思います。かつて日本ではジョージアのことを「グルジア(ロシア語由来)」と呼んでいましたが、2015年に公式に呼称が「ジョージア(英語)」に変更されました。実はジョージア語では国名を「サカルトベロ」と言います。「カルトベリ人の地」という意味だそうです。いくつもの呼び名があるのは面白いと思いましたが、日本も海外では英語で「JAPAN」と使い分けていますから、ジョージアと同じだとあらためて気づきました。
在日ジョージア大使館 ティムラズ レジャバ臨時代理大使とダヴィド ゴギナシュヴィリ博士のお二人にお話をうかがいました。

 

ヨーロッパとアジアの中間地点に位置するジョージア

在日ジョージア大使館
大使館の入口にはジョージアの地図がはってあります。ワインをはじめ、たくさんの特産品が描かれています。
 

ジョージアは東京から西へ約7,800キロの距離にあります。面積は北海道より少し小さく、人口は四国4県とほぼ同じ約370万人です。「小さい国ですが、ヨーロッパとアジアの境にあり、多くの民族が行き交う交通の要衝に位置しています」とレジャバ臨時代理大使。ジョージアは、厳しい歴史的背景を持つ国です。周辺の大国から領土を守るための攻防を繰り返しながら、国民が一丸となって文化や宗教を守り通してきました。公用語はジョージア語で、ジョージアの文字もあります。「実は文化はとても明るいです。ジョージアの多声音楽はユネスコの無形文化遺産ですし、ダンスも充実しています」と教えてくれました。
西には暖かい黒海に面したビーチリゾートがあり、北側にはヨーロッパで一番大きなコーカサス山脈がそびえます。雄大な自然と、そこから産出される豊かな実りを楽しみに、多くの観光客が訪れます。2019年には930万人を突破し、人口の2.5倍にも上りました。日本からジョージアへいく人も年々増え続け、約1万人に達していたそうです。新型コロナウイルス終息後には、さらに注目をあびることでしょう。

 

ツイッターでジョージアをPRし、フォロワーは約4万5千人に

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レジャバ臨時代理大使の日本語で発信するユーモアあふれるツイートに、フォロワーが日々増え続けています。
 

首都圏に住んでいるジョージア出身者は、わずか30人ほどです。しかし、ジョージアの知名度は日本中 (にほんじゅう) でどんどん高まっています。大手外食チェーンが「シュクメルリ」というジョージア料理を定食として提供したこともあり、幅広い人たちにジョージアの豊かな食文化が知られるようになりました。レジャバ臨時代理大使は「日本では、力士の黒海と臥牙丸 (ががまる) でジョージアを知った人が多いと思います。そして、大関になった栃ノ心 (とちのしん) の功績は計り知れないです。大事なことは、その後にどうつなげていくかです」といい、自らツイッターでジョージア観光や料理のことなど、さまざまな情報を発信しています。レジャバ臨時代理大使は4歳のときに家族で日本へ移住し、トータルで20年間ほど住んでいるそうです。日本の文化や言葉も理解しているため、単なる情報発信にとどまらないひねりの効いた投稿が評判となり、フォロワーが増え続けています。「ジョージアのいろいろな文化を紹介すると、皆さんがいい反応をしてくれます。それによってこちらももっと紹介したくなる。双方向のよいコミュニケーションツールになっていると思います」と話します。

 

ジョージアのポテンシャルの高さに魅力を感じ、日本から移住する人が増えている

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二人 (ふたり) とも自宅では和食をよく作るとのこと。お客さまが来たときにジョージア料理でおもてなしをするそうです。
 

「ジョージアと日本が似ているところは、伝統と文化を大切にしながら、技術革新などをバランスよく進めているところだと思っています。ジョージアの国民は、日本をあこがれの国として見ています」とレジャバ臨時代理大使。一方、最近では多くの日本人がジョージアへ移住しているそうです。ゴギナシュヴィリ博士によれば「2020年に『Remotely from Georgia』プログラムを導入し、リモートワーカー専用のビザ(※)を出しています。インターネット環境が整備されていること、さまざまな手続きが簡略化されていること、また生活費も安くてすむことから、世界中のノマドワーカーやリモートワーカーの (あいだ) で人気を集めています」。移住というと今までは年配のリタイア組の人たちが中心でしたが、大きな変化が起きています。「パソコンひとつで出来る仕事が増え、場所にとらわれず世の中がつながってきています。ジョージアは新しい世の中のニーズに応えたいと思っています。多文化共生にいい土壌がジョージアにはあります」とゴギナシュヴィリ博士。世界銀行によるビジネスをしやすい国ランキングで、ジョージアは世界7位となっています。ビジネスをする人たちにとっても、目が離せないといえます。

※リモートワーカー専用ビザのお問い合わせはジョージア大使館へ。
https://japan.mfa.gov.ge/en/contact

 

約8,000年もの歴史をもつ世界最古のジョージアワイン

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ぶどうの種類も味も色も、豊富なワインがそろっています。
 
在日ジョージア大使館
クヴェヴェリと呼ばれる。この (かめ) (つち) に埋めてワインを作ります。
 

ワイン発祥の地としても知られるジョージア。その歴史は、約8000年前までさかのぼります。長い歴史の中ではワイン作りが困難な時期もありましたが、ぶどうを守り脈々と作り続けて現在に至ります。ワインはジョージア人のアイデンティティといえます。「ジョージアのワインはクヴェヴリという甕を用いて作ります。甕を地面に埋めるんですが、甕の中で出来てしまうので小さなスペースで大丈夫。田舎に行くと、家ごとに独自のワインを作っています。固有のぶどうが500種類ぐらいあって、いろいろなワインがつくれます」とゴギナシュヴィリ博士。この良質なワインを生み出す製法が、2013年ユネスコの無形文化遺産として登録されました。日本の和食がユネスコの無形文化遺産として登録されたのと同じ年です。レジャバ臨時代理大使いわく「和食とジョージアワインの相性はとてもいい」とのことです。

 

ジャージアは長寿の国で、お年寄りが尊敬されている。

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ゴギナシュヴィリ博士が留学生として日本に来たのは、20歳を超えてから。日本はルールや決まりが多い国だと思ったそうです。
 

ジョージアの天然水はコーカサス山脈からもたらされ、高品質でミネラルたっぷり。国内に数百もの湧水スポットがあるそうです。豊かでおいしい水があり、ヨーグルトやくるみなどをたくさんとる健康的な食生活で、長寿の国だと聞いたことがあります。「都市部を見ると100歳を超える人は少ないですが、山へ行くと長生きの人が多いです。いろいろな要因がありますが、馬に乗る、 (つち) を耕すなど、アクティブな生活を送っていること、それにストレスが少ないのも大切な要素です。もう一つ、ジョージアではお年寄りがとても尊敬されていて、重要な役目を果たしています。たとえば村で何か決めなければならないときは、お年寄りに聞いてその意見を尊重します。歳をとっても貢献できることがあるという感覚がとても大切だと思います」とゴギナシュヴィリ博士。思い出したように「日本に来たばかりのころにプールに行ったら、細かいルールがあって驚きました。このコースは歩くコース、逆回りは駄目などなど。先輩に尋ねたら、狭くて人の多い日本では、ルールがないと大変なことになると教えてもらいました。納得しました」。日本も長寿国です。環境は違いますが、ジョージアとの共通点を見つけるのは、楽しいです。

*本記事は取材時点での情報をもとに作成しています。最新の情報については、団体へ直接お問い合わせください。