クローズアップ
NPO法人 せいぼじゃぱん ~子どもたちの未来を守るために給食を届ける!~

NPOせいぼじゃぱん
デクラン・サマーズさん(左)と廣澤玲子さん(右)
*この記事は、東京都国際交流委員会が運営していたウェブサイトに掲載したものです。
10月のクローズアップは、NPO法人せいぼじゃぱんのご紹介です。アフリカのマラウイを拠点として活動するせいぼじゃぱんは、現地の子どもたちに学校給食を届けることで、世界で最も貧しい国のひとつとされるマラウイを豊かな国に変えていこうとしています。今回は、せいぼじゃぱんの廣澤玲子さんとデクラン・サマーズさんに、パートナー団体「せいぼマラウイ」とともに行っている学校給食支援活動のお話に加え、私たち日本人にはあまりなじみのないマラウイという国についてもいろいろとお伺いしてきました。
せいぼじゃぱん設立の経緯をお聞かせください。

せいぼじゃぱんは2015年1月に設立された特定非営利活動法人(NPO)で、「おなかを減らしているすべての子どもたちに給食を!」という目標を掲げています。ごはんを食べなければ集中して学ぶことは難しく、学ぶことができない子どもたちは将来の夢を抱くことができません。しかし、きちんと食事をとり集中して学ぶことができた子どもたちは、将来その国の発展に貢献する人材に育つはずです。私たちは、世界中の飢えで苦しむ子どもたちに給食を届けることで、子どもが自分の力を発揮できる社会を実現したいと考え、学校給食支援活動に取り組み始めました。実際に現地での活動がスタートしたのは2016年2月。東アフリカのマラウイ共和国で保育園への給食支援を始め、現在は小学校にも学校給食を届けています。マラウイが最初の活動地となったのは、現地にパートナー団体「せいぼマラウイ」があり、連携して給食支援活動を行うことができるからです。


せいぼは、子どもたちの笑顔を守るために活動しています。
© せいぼじゃぱん
活動地のマラウイはどんな国なのでしょうか。

アフリカ大陸の南東部に位置するマラウイ共和国は、タンザニア、モザンビーク、ザンビアに囲まれた小さな国です。国土は北海道と九州を合わせたくらいの広さで、その20%をユネスコの世界遺産にも登録されているマラウイ湖が占めています。人口は約1,700万人。その8割が小規模農家で、主食であるトウモロコシや輸出品であるタバコ、紅茶などを栽培しています。マラウイは世界で最も貧しい国のひとつであり、一人当たりの平均年収が336ドル(2014年)と非常に低く、多くの人々が十分な食料を手に入れることができないのが現状です。一方でマラウイは、アフリカ諸国では珍しく戦争や紛争の経験がない国で、人々が優しく穏やかなため「ウォームハート」と呼ばれています。お腹が減っていても具合が悪くても、マラウイの人たちはいつも笑顔で決して惨めな顔を見せません。そこは私たちも憧れる部分です。

あたたかな心を持ったマラウイの人たちの魅力について語るサマーズさんと廣澤さん。
マラウイの経済状況は子どもたちにどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

マラウイでは、1,000人の子どものうち64人が5歳の誕生日を迎えることができません。5歳未満の死亡率が極めて高く、その半数は栄養失調で亡くなります。「世界一歩くのが遅い国」というランキングで1位になったこともあるマラウイですが、そこにはのんびりとした国民性というだけでなく、若いときに必要な栄養がとれず身体機能の発達が不十分であるという理由も隠されているのです。また、マラウイで保育園に通える子どもは35%程度にとどまり、小学校になると多くの子どもたちが通学し始めますが、その半数は卒業することなく学校を辞めてしまいます。さらに、日本では考えられないことですが、一度も学校に通えない子どもが10%も存在します。こうした子どもたちに学校へ来るきっかけを与えるためにできることは何か。それが、私たちが今取り組んでいる学校給食というわけです。
せいぼじゃぱんの給食支援活動について教えてください。

私たちは、せいぼマラウイと連携しながら、まずは保育園への給食支援をスタートさせました。現在は40保育園、約1,600人の子どもたちに給食を届けています。また、2016年4月からは、青年海外協力協会(JOCA)が実施していた「マラウイ学校給食プロジェクト」を引き継ぐ形で小学校への給食支援を開始、今年9月には2校目となる新たな小学校への給食支援活動をスタートさせるなど、せいぼの活動は大きく広がり始めています。
マラウイの一般的な給食は「パーラ」と呼ばれるトウモロコシと大豆を粉にして煮たお粥のようなもので、中でも私たちは、ビタミンとミネラルを多く含む「リクニパーラ」を提供しています。保育園や小学校の敷地に設置した調理場でこのパーラを作ってくれるのは、周辺のコミュニティのボランティアです。また、給食支援を開始するにあたっては、調理釜、配給用のカップやお皿、手洗い用のバケツなども用意しています。


レンガ造りのキッチンで地域のボランティアにより給食が作られています。
© NPOせいぼじゃぱん
活動を開始以降、どのような手ごたえを感じられていますか。

私たちは保育園で給食支援をスタートするにあたり、在籍している子どもたち以外に栄養不良の子どもを何名受け入れることが可能か各保育園に確認し、孤児や特に貧しい子どもたちを無料で入園させてもらえるようお願いしました。こうして保育園に通い、給食を食べることができることになった子どもたち、「せいぼキッズ」の数は今や43人にのぼります。彼らの成長記録を見ると、本当に少しずつですが良い変化が現れ始めています。


トウモロコシと大豆の粉末で作られた「リクニパーラ」の給食を食べる子どもたち
© NPOせいぼじゃぱん
現在、課題と感じられていることはなんでしょうか。

せいぼが給食支援を始めてから、「自分たちの地域にも保育園を作るから給食を届けて欲しい」という要望がたくさん出てきました。私たちの活動は寄付金で行っているためすぐに対応することは難しく、今後、限られた資金でどのようにバランスよく支援を広げていくかは大きな課題です。給食代は一人1日15円、つまり3,000円で子ども一人の1年間分の給食費をまかなえます。この価格で済んでいるのは、せいぼマラウイとの連携で余計な人件費などが一切かからないためですが、マラウイでは現在、給食の原材料であるトウモロコシの値段が高騰しており、どこまで1食15円を維持できるかも課題となっています。また、新たに出てきた問題点としては、保育園の建物が実にまちまちだということがあります。干し草や段ボールで作られた簡易的な建物の保育園では、給食用の調理場の方が立派になってしまうのではないか、あるいは雨季に持ちこたえられるのだろうか、と心配になってしまいます。私たちは給食支援団体ではありますが、こうした点も確認したり、改善したりする必要が出てくるかもしれません。


レンガ造りの保育園もありますが、草や段ボールでできた保育園もあります。
© NPOせいぼじゃぱん
せいぼじゃぱんの今後の活動目標をお聞かせください。

2015年1月の大洪水とその後繰り返し起きた干ばつでマラウイの食糧難は深刻化しており、ユニセフマラウイの報告では、三人に一人が飢えに直面しているとのことです。私たちは現在2つの小学校で給食支援活動を行っていますが、これを12の小学校に通う計12,000人の子どもにまで早急に拡大してほしいと、マラウイの教育省からリクエストされています。2016年中にこの要望に応えるためには、できるだけ早く日本で資金調達を行なわなければなりません。そのためにも、私たちの活動をより多くの方に知ってもらうためのPR活動を積極的に行っていくのはもちろんのこと、マラウイという国を日本のみなさんにもっと知ってもらえるよう、さまざまな発信をしてきたいと考えています。