クローズアップ
特定非営利活動法人 ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン ~安心して暮らせる家をすべての人に~

プログラム・コーディネーター 徳地宜子さん(左)と
広報担当 町村紗織さん(右)
*この記事は、東京都国際交流委員会が運営していたウェブサイトに掲載したものです。
7月のクローズアップは、ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン(以下、ハビタット・ジャパン)のご紹介です。ハビタット・ジャパンは、住まいを専門とする国際NGOハビタット・フォー・ヒューマニティ(以下、ハビタット)の日本支部として、国内外で住環境を通して貧困問題を解決するための活動を展開しています。今回は、ハビタットの理念や活動内容についてコミュニケーション事業部 広報担当の町村紗織さんに、また、4月に地震が発生したネパールでの支援活動について、現地から一時帰国されていたプログラム・コーディネーターの徳地宜子さんにお話を伺ってきました。
ハビタットはどのような理念を掲げて設立された団体なのでしょうか。

町村さん ハビタットが目指しているのは、「誰もがきちんとした場所で暮らせる世界」です。家がない、あるいは家があっても適切でない住環境に暮らす人々は、世界に約16億人いると言われています。適切な家で暮らせないために家族の健康や安全を守れず、心休まる家がないので仕事への意欲もわかず、家計が安定しないから子どもたちは学校に通えない。そして、不安と隣り合わせの生活の中で、子どもたちは将来の夢を抱くこともできません。この貧困の悪循環から抜け出すきっかけとなるのは、安心して暮らせる家です。安心して暮らせる家があるからこそ、人は人らしく生きることへの希望を持つことができ、それが生活を営む活力となります。だからハビタットは家を通して、人々が自立した生活を営むサポートを行なっているのです。


安心して暮らせる家は、希望ある未来への一歩。
ハビタットは、世界約80カ国で住環境の改善に取り組んでいます。
©ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン
ハビタット・ジャパンはどのような活動を行なっているのですか。

町村さん ハビタット・ジャパンが活動を始めた当初から行なっているのが、グローバル・ビレッジ・プログラム(GV)という、住宅の建築に参加するボランティアを海外に派遣するプログラムです。学生を中心に毎年1,000名近くが参加し、その家に住む予定の家族(ホームパートナー)と一緒に汗を流して建築作業を行っています。GVの参加者たちは安らげる家があることが当たり前ではない世界を知り、一方、貧困の中に暮らす現地のホームパートナーは、日本からボランティアが来てくれたことに元気づけられる。さらに労働力を提供することで建築費が抑えられるなど、GVにはさまざまな利点があります。
また、ハビタット・ジャパンは、世界各地の自然災害や紛争で被害を受けた地域で、緊急支援活動も行なっています。東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県と宮城県でも今年3月まで復興支援活動に取り組みました。


GVには建築作業の経験がなくても参加が可能。
ボランティアにとっても、現地の人たちにとっても貴重な体験となります。
©ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン
4月25日に発生したネパールの地震でも、建物の崩壊で大きな被害が出ました。

徳地さん 私はこのとき、地震防災のプロジェクトを進めるためにネパール入りしていて、首都カトマンズに滞在していました。かなり大きく揺れましたが、日本人の私の感覚では震度5弱くらい。ネパールの建物が地震に弱いとわかっていても、ここまで被害が出るとは正直思いませんでした。でも蓋を開けてみたら、多くの住宅が倒壊し、8,000人以上の人が亡くなられたということで、これが防災意識や対策の違い、建物の強さの違いなんだと強く感じました。また、壊れかけた自宅のすぐそばに即席の家を建てる人たちや、食事を作りにいつ崩れてもおかしくない家の中に戻る人たちもいて、5月12日に発生した余震でも100人以上が亡くなりました。大きな地震の後は余震を警戒して危険な建物には近づかないというのは日本では当たり前のことです。でも、ネパールの人たちにはそうした理解が十分にないため、二次被害が起きてしまったのです。


れんが造りの建物は地震に弱く、被害が集中しました(左)。
右は、テントを張って避難生活を送る人たち。
©ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン
ハビタットがネパールで行う支援活動について教えてください。

徳地さん ハビタットは世界各国の被災地で、被災者の状況や現地のニーズに合わせ、シェルターキットの配布を行っています。ネパールでも、10,000世帯以上への支援を決定しました。緊急支援としてビニールシートを配布する団体は多いのですが、ハビタットが得意とするはその先の支援です。トタン、スチールの骨組み、鉄筋などの建材を含むテンポラリー・シェルターキット、住宅の修繕に使用する工具や資材が入ったホーム・リペアキットを配布、さらにフェーズの移行に合わせて、恒久的に住むことができるコアハウスの建築へと、中長期的な視野で住居の問題の解決を見据えて支援を行っていきます。


ハイチで配布されたホーム・リペアキット(左)と、トタンを屋根にして作った
テンポラリー・シェルター(右)。これらの工具や建材は、新しい家の建築にも役立ちます。
©ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン
ハビタット・ジャパン独自の支援として予定されていることはありますか。


徳地さん 被災した住宅を専門家のチームが巡回訪問し、その家の危険度を診断するプロジェクトを実施します。ハビタットがシェルターキットを配布するのと並行してこのプロジェクトを行うことで、家を建て直す必要がある人にはテンポラリー・シェルターを、修理して住むことができる人にはホーム・リペアキットを、ピンポイントで必要な人に必要な支援を届けることができます。また、ネパール政府が被災者に支給する支援金に関する情報提供も同時に行う予定です。こうした情報を届けることで、間接的にですが、生活再建を金銭面でも支援していきたいと思っています。
地震発生前から予定していた地震防災のプロジェクトについて教えてください。

徳地さん レンガを積み重ねて使ったネパールの住宅は、地震の揺れであっという間に崩れてしまいます。そこで私たちがネパールで広げようと考えていたのは、荷物の梱包に使われるプラスチック製のバンドを用いた、PPバンド耐震補強という方法です。この耐震補強の目的は、一言で言うと「命を守る家」を作ることです。メッシュ状にしたPPバンドで構造壁を挟むことによって、一気に建物全体が崩れるのを防ぎ、逃げ出す時間を作り出すことができるのです。ハビタット・ジャパンは、これを研究開発する東京大学と協力し、このプロジェクトを行っています。PPバンドが画期的なのは、非常に安価で、ネパールの低所得者層でもなんとか手が届きそうという点にあります。先ほどお話した被災住宅の危険度診断事業は、どんなところにどんな被害があったのかという調査を兼ねるので、今後はそのデータを基に、PPバンドのプロジェクトを進めていきたいと思います。
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プロの大工さんでなくても、簡単な研修を受ければ |
最後にメッセージをお願いします。


町村さん 地震発生から1カ月程度で報道も少なくなり、ネパールの現状に注目が集らなくなってきていることを残念に思いますが、ハビタット・ジャパンでは、全国33大学にある学生支部のメンバーたちが、駅前で街頭募金を行うなど頑張ってくれています。ハビタットは中長期にわたる支援活動を得意とする団体ですので、皆さまにも引き続きご支援いただけると嬉しいです。
■ネパール地震 支援募金の受付け
https://habitatjp.org/support
■7月17(金)の「ハビタット・カフェ(ハビカフェ)」で、ネパールナイトを開催します。
https://habitatjp.org/archive/category/news