クローズアップ

タンザニア・ポレポレクラブ ~タンザニアの村人とともに、キリマンジャロの森をよみがえらせる~

タンザニア・ポレポレクラブ 代表 藤沢俊介さん

タンザニア・ポレポレクラブ
代表 藤沢俊介さん

*この記事は、東京都国際交流委員会が運営していたウェブサイトに掲載したものです。

5月のクローズアップでは、タンザニア・ポレポレクラブをご紹介します。
タンザニア・ポレポレクラブは、森林の減少が続く東アフリカのタンザニアで、村人たちが取り組む植林活動を支援している市民グループです。タンザニアでは、増え続ける人口とそれに伴う (まき) や炭の需要増大などにより、毎年 (まいとし) 41.2万haの森林が失われていると言われています。「森林破壊を防ぐための植林は、地元の人々が主体となり持続的に行うことが大切だ」と語る代表の藤沢俊介さんに、現地での活動内容やキリマンジャロ山の森林の現状について伺いました。

Q. タンザニア・ポレポレクラブが設立された経緯をお聞かせください。


A. 植林関係の仕事で初めてタンザニアを訪れ、森林の調査をしていた時のことです。キリマンジャロ山の山麓にあるテマ村の人々が植林に取り組んでいることを知り、活動の中心になっていた5人のリーダーたちに会ってみると、彼らは開口一番言いました。「お金はいらないから、自分たちと一緒に知恵を絞ってほしい」と。お金があれば、資材があれば、技術があれば、人材がいればといった要望は、調査に回るといくらでも出てきます。でもこの5人は、失われた森を取り戻すための活動を地道にコツコツと、限られた規模ながら自分たちで行っていたのです。その姿を見て、ぜひ彼らと一緒に植林に取り組んでいきたいと思い、1997年にタンザニア・ポレポレクラブを設立しました。

©タンザニア・ポレポレクラブ ©タンザニア・ポレポレクラブ

キリマンジャロ山で植林に取り組む村人たち(左)、同じ場所のその後の状況(右)
©タンザニア・ポレポレクラブ

 

Q. タンザニアの森林の現状と、現地でどのような活動をされているのか教えてください。

A. タンザニア全体では、年率1.2%の割合で森林が減少しています。このままいけば80数年後にはすべての木がなくなってしまうのです。森林の減少は、薪炭材の不足や水源の枯渇、土壌の流出といった影響を及ぼし、そこに暮らす人々の生活を圧迫しています。こうした環境の荒廃を食い止め、人々の生活を守るために、ポレポレクラブは現地のNGOと協力し、 植林活動、活動の自立支援、生活の向上・改善の3つを柱として活動しています。

Q. 3つの活動はどのようにリンクしているのですか。

A. ポレポレクラブは植林への協力からスタートし、その後、植林活動そのものを自立させていくための取組みを始め、さらに活動に取り組んでいる人たち自身の生活を向上・改善させるという取組みに着手していきました。僕らも100年先までの協力を約束することはできませんし、外部からの支援に頼らず活動できるようになるのが一番です。そこで収入を向上させ現地の人々の力で持続的な活動ができるよう、養蜂や養魚、搾乳量が多い改良牛の飼育といったプロジェクトの導入を支援してきました。また、グループ貯蓄にも取り組み、コツコツと積み立てた貯蓄を新しいプロジェクトを立ち上げる際の投資に使えるようにしています。では、植林活動のための資金が賄えるようになればいいかというと、植林に取り組む人々の生活が明日食べるものにも事欠くようでは、息の長い活動は望めません。彼らの生活の改善向上と環境を守る活動は車の両輪ともいえる関係にあり、並行して取り組むべきものなのです。

©タンザニア・ポレポレクラブ ©タンザニア・ポレポレクラブ

植林で森が豊かになるほどより多くの収入をもたらしてくれる養蜂は、一石二鳥のプロジェクトです。
©タンザニア・ポレポレクラブ

 

Q. 現地のカウンターパートはどのような団体なのでしょうか。

©タンザニア・ポレポレクラブ

TEACAのリーダーたちと。2012年の現地調査の際に。
©タンザニア・ポレポレクラブ

A. テマ村の村人は、雨が減り水源が枯れ、作物の収量が減っていくのは、村の周囲の森から木が減ったせいだと考え、裸地化 (らちか) した土地に木を植え始めました。最初にお話しした5人のリーダーたちが旗振り役だったその植林活動から生まれたのが、地域住民によるNGO、 TEACA(Tanzania Environmental Action Association)です。ポレポレクラブは小さな市民団体ですから資金援助には限りがありますし、彼らに何かを指導するということでもない。一緒に知恵を絞り、道を探していくという形でTEACAに協力することが僕らの役割だと考えています。

 

Q. 最近、力を入れている活動について教えてください。

A. 地域の人たちには、森を守ってきたのも守れるのも自分たちという自負があります。しかし、タンザニア政府は「森林破壊の原因は住民にある」として、世界遺産であるキリマンジャロ山の森林保護を目的に国立公園の範囲を拡大、森への出入りを禁じました。その土地に長く暮らしてきた住人の生活をかえりみない自然保護政策は間違っており、国立公園を拡大しても森林は守れないことから、僕らはこの政策に反対しています。ポレポレクラブが目指しているのは、地域住民が使っていた森は国立公園から外し、キリマンジャロ山の森は地域の人たちが主体となって管理していくという森林条例を制定すること。今はこの件にかかりきりです。

©タンザニア・ポレポレクラブ ©タンザニア・ポレポレクラブ

子どもたちが森の大切なものを遊びながら学べる「村の自慢カルタ」
©タンザニア・ポレポレクラブ

 

Q. 日本にいる私たちが手伝えることはありますか。

©タンザニア・ポレポレクラブ

「関わり方はいろいろある。
それぞれの得意を持ち寄って
やってもらえたら」と語る
藤沢さん。

A. タンザニアの村人たちの「森を守りたい」という気持ちを側面から支えることはできると思います。例えば、より自分たちの森に誇りを持ってもらうため、村のお年寄りから教えてもらった森に関する古い知恵や知識を集めたガイドブックを作成したのですが、その内容を村の子どもたちに伝えるためのカルタを日本で作っています。このカルタの紙を切ることもイラストを () くことも、キリマンジャロの森を守る取組みへの関わり方のひとつです。ポレポレクラブは「多くの市民の人たちと進めていく市民活動」という思いから、団体の名称を「クラブ」にしました。「百万回の議論より一つの行動を!」が僕らのモットー。何か手伝いたいと思っている人はぜひアクションを起こしてください。