2021年度 多文化共生コーディネーター研修(第5期)報告書

東京都内には、多くの外国人住民が暮らしており、今後さらに増えることが予想される中、国籍や民族の異なる人々が地域社会の構成員として、共に生きていく多文化共生社会を実現することが重要になっています。
東京都は「多様性を都市づくりに活かし、全ての都民が東京の発展に向けて参加・活躍でき、安心して暮らせる社会の実現」を目指し、平成28年2月に「東京都多文化共生推進指針」を策定しました。この指針に基づき、地域における外国人の多様なニーズにきめ細かく対応し、多文化共生社会の実現に資する専門人材である「多文化共生コーディネーター」のための研修を実施しています。
本研修における「多文化共生コーディネーター」とは、外国人住民に関わる基本的な法制度と教育・医療・防災等、多文化共生の諸課題に関する知識を有し、そうした課題の解決に向けて、関係部署・団体間の連携や協働を進め、企画立案する能力を有する人を指します。

令和3年度第5期となる研修は、令和3年9月30日、10月7日、10月21日、10月28日の4日間(9時30分から17時15分まで)にオンラインで開催され、受講者は141名、4日間全科目修了者は43名でした。
「多文化共生のこれまでとこれから」「出入国在留管理行政」「コーディネーターについて考えるワークショップ」「子どもの教育 A」「情報提供・生活相談」「就労・労働」「災害対応」「医療・保健」「日本語教育」「子どもの教育 B」「福祉・居住」「意識啓発」「社会参画」の13科目を学び、「演習」で各自コーディネーターとして抱える課題解決のプランシートを作成し、発表、意見交換をしました。また、各日とも「振返り」を設け、その日の講義を整理し、意見交換を行いました。「振返り」後には、全体監修の山脇氏と4人のファシリテーターを含め受講者有志が自由に参加する交流会も行いました。

全体監修 明治大学 山脇 啓造 氏
全体監修明治大学 山脇 啓造

自治体が主催する多文化共生社会の担い手育成の研修は、愛知県の「多文化ソーシャルワーカー」や群馬県の「多文化共生推進士」の養成講座など、2000年代後半に始まりましたが、いずれもすでに終了しています。2017年度に始まった東京都の「多文化共生コーディネーター」研修は、現在、全国唯一のプログラムで、今年度で第5期が終了しました。東京都は外国人住民が全国で一番多く、区市町村や国際交流協会そして市民団体などが様々な取り組みを進めています。この研修は多文化共生について体系的に学ぶとともに、そうした関係者が連携を深めていく貴重な機会となっています。東京都は多文化共生推進指針を策定するのは遅れましたが、2020年度に東京都つながり創生財団を設立し、この研修の他、多言語相談ややさしい日本語の活用など様々な事業を展開しています。全国最大の自治体として、多文化共生分野のリーダー的存在になることを期待しています。

講座紹介

9月30日(木)

「多文化共生のこれまでとこれから」

明治大学教授 山脇 啓造 氏

外国人住民受け入れの歴史や、地方自治体、東京都、国の「多文化共生」の取組のほか、国、自治体、企業の課題について講義を行いました。また、2030年の東京の多文化共生をテーマにグループで意見交換し、やさしい日本語をテーマにしたミュージックビデオ「やさしいせかい」を紹介しました。

・東京都の取組

東京都生活文化局 都民生活部 地域活動推進課 多文化共生推進担当課長 齊藤 寛人 氏

都が東京都つながり創生財団と連携して進めている、情報提供や外国人相談、日本語学習環境の整備、やさしい日本語の活用促進等を紹介し、「多文化共生推進指針」に基づき、区市町村や国際交流協会、支援団体等とネットワークを構築し、多文化共生社会づくりを推進することを説明しました。

「出入国在留管理行政」

東京出入国在留管理局 在留支援部門 在留支援担当 統括審査官 安本 大輔 氏

在留資格、在留カード、在留審査関係諸手続きなどの制度の説明と外国人受入環境整備に関する施策、やさしい日本語の対応、外国人支援ポータルサイト、東京出入国在留管理局の在留相談(予約制)、FRESCヘルプデスクでの電話相談などについて紹介しました。

「コーディネーターについて考えるワークショップ」

4グループに分かれて、ファシリテーター自身の取組を紹介し、コーディネーターの役割について意見交換をしました。

一般財団法人 自治体国際化協会認定 多文化共生マネージャー 長倉 美紀 氏

コーディネーター活動のヒントとしてコロナ禍の教育現場での事例や今意識して取り組んでいること、今後の連携に向けた取組について紹介しました。

特定非営利活動法人 国際活動市民中心(CINGA)理事 新居 みどり 氏

市民活動(NPO法人CINGA(シンガ)/NGOピナット~外国人支援ともだちネット~)でのコーディネーターとしての活動紹介と、コーディネーターとリーダーの違い、コーディネーターの「実践力」について紹介しました。

一般財団法人 港区国際交流協会 平野 智子 氏

港区の多文化共生の現状と課題をとおして、多様な主体との「関わりしろ」や「連携」について、「コーディネーター」として意識したいことについて紹介しました。

一般財団法人 自治体国際化協会認定 多文化共生マネージャー 山浦 育子 氏

自身の取組をとおしてコーディネーターの役割について紹介しました。

ワークショップ01
ワークショップ01
ワークショップ01

10月7日(木)

「子どもの教育」A

特定非営利活動法人 青少年自立援助センター 定住外国人支援事業部 YSCグローバル・スクール ピッチフォード 理絵 氏

外国につながる児童・生徒の学習支援に係わる様々な問題と課題解決に向けた取組について講義し、NHK WORLD JAPANで放映されたグローバル・スクールの動画を視聴しました。

「情報提供・生活相談」

公益財団法人 横浜市国際交流協会 多文化共生推進課 シニアコーディネーター 藤井 美香 氏

横浜市国際交流協会での取組をとおして、多言語・多文化に配慮した外国人住民への情報提供と生活相談について講義し、自己紹介、活動紹介などのグループワークを行いました。

「就労・労働」

・外国人の就労 ~東京都の外国人材受入施策~

東京都産業労働局 雇用就業部 就業推進課 課長代理 清水 節子 氏

外国人労働者の状況と外国人受入企業の状況、東京都の中小企業向け、外国人材向けの外国人材受入支援施策について講義し、「東京外国人材採用ナビセンター」を紹介しました。

・外国人の労働問題

東京労働局外国人特別相談・支援室 室長 竹中 文恵 氏

東京労働局外国人特別相談・支援室の取組と、外国人労働者から寄せられる労働条件等に関する相談や労働基準法・最低賃金法で外国人に関係がある条文、外国人に知っておいてほしい条文などについて講義しました。

「災害対応」

公益財団法人 仙台観光国際協会 国際化推進課 企画係長 菊池 哲佳 氏

東日本大震災における活動事例の紹介とワークショップを通じて、多文化共生を推進するコーディネーターに求められる実践の視点についての講義を行いました。

10月21日(木)

「医療・保健」

・東京都の外国人医療 ~新型コロナウイルス感染症を踏まえて~

東京都福祉保健局 感染症対策部 防疫・情報管理課 課長代理 小池 義明 氏

新型コロナウイルス感染症に関する保健所での対応、患者さんへの多言語での対応、外国語での感染症に関わる情報発信について講義し、結核患者さんへの多言語服薬ノート、外国人向けの結核に関する動画などを紹介しました。

・ちがいとカベを乗りこえる方法

一般社団法人 日本公共通訳支援協会 代表理事 西村 明夫 氏

多言語対応、医療通訳、通訳ボランティアなど医療・保健現場における課題と現状、課題解決に向けた取組について講義しました。

「日本語教育」

・「生活者としての外国人」に対する日本語教育

文化庁 国語課 地域日本語教育推進室 専門職 北村 祐人 氏

「日本語教育の推進に関する法律」と文化庁の取組について講義しました。

・東京都における地域日本語教育

東京都生活文化局 都民生活部 地域活動推進課 多文化共生推進担当 統括課長代理 山下 未奈 氏

実態調査を通じて把握した都内の地域日本語教育の現状や、東京都が目指す地域日本語教育の方向性について説明し、多文化共生社会を実現するためには地域日本語教育の推進が重要であるとの認識を踏まえ、今後の施策を取りまとめ中であることを報告しました。

・事例報告1

一般財団法人 港区国際交流協会 平野 智子 氏

港区の委託事業として実施している「基礎日本語教室」、「日本語サロン」、「外国人と日本人の交流促進事業(みなとにほんご友の会)」の事業について報告しました。

・事例報告2

調布市国際交流協会 島田 早苗 氏

「成人クラス(高校生以上)」、「だっこらっこくらぶ(子育て中の親が子供と一緒に学ぶ日本語教室)」、教育委員会からの受託事業「子どもクラス(調布市立学校日本語指導教室)」の運営について報告しました。

「子どもの教育」B

都立町田高等学校主任教諭/多文化共生教育ネットワーク東京/文部科学省外国人児童生徒教育アドバイザー 角田 仁 氏

外国につながる子どもたちの高校進学と入学後、高校卒業時の課題と課題解決に向けての取組と「多文化教育コーディネーター」について講義しました。

「福祉・居住」

・社会福祉協議会と国際交流協会の連携

荒川区社会福祉協議会荒川ボランティアセンター 社会福祉士 浅野 芳明 氏

荒川区社会福祉協議会、ボランティアセンターの取組と2017年度から行っている荒川区国際交流協会との連携事業を紹介しました。

・外国人の住宅問題

法政大学大学院デザイン工学研究科兼任講師/ 特定非営利活動法人 かながわ外国人住まいサポートセンター 理事 稲葉 佳子 氏

外国人の部屋探しの現状と困難さの原因、外国人入居のための支援策と今後の課題について講義しました。

10月28日(木)

「意識啓発」

東京法務局人権擁護部 人権擁護専門官 大西 有美子 氏

多様性や人権尊重、ヘイトスピーチへの対応など、多文化共生の意識づくりと外国語人権相談ダイヤル(全国共通ナビダイヤル)、外国語インターネット人権相談窓口などを紹介しました。

・アフリカ少年と考える多文化共生

漫画家・タレント 星野 ルネ 氏

カメルーンで生まれて日本で育った中で発見したことや、マイノリティとマジョリティが同じ空間で生活するときに起こる様々なケースを共有し、多文化共生について話しました。

「社会参画」

外国人住民による地域活性化とグローバル化への貢献について、3名の外国人パネリストにお話を伺いました。

株式会社グローバルトラストネットワークス 外国人住まい事業本部 トラン マン ティエン 氏(ベトナム)

「講演活動・通訳・翻訳・ボランティアをしています。地域では町内会班長、子供会の役員、PTA 活動、保護者会の副会長を経験しました。」

ひらがなネット株式会社 清水 エド 氏(タイ)

「来日当初は日本語がほとんどわからず、地域の日本語ボランティア教室に通って日本語を習得しました。タイ語を教えるボランティアを始め、ボランティアを「される側」から「する側」になりました。現在、ひらがなネットのスタッフとして、タイ語の通訳や料理教室講師、事務局などの業務をしています。」

株式会社エム・エイチ・グループ 代表取締役兼執行役員社長 朱峰 玲子 氏(中国)

「コロナ禍では中国武漢へ医療物資を提供し、東京都へマスク、防護服などを寄付しました。外国人としてではなく、人として気持ちを伝えることが大切です。」

「演習」

・東京都つながり創生財団の事業について

一般財団法人 東京都つながり創生財団 多文化共生課 課長 岩崎 浩子 氏

財団について、様々な人が安心して暮らせるよう在住外国人支援などの多文化共生社会づくり、ボランティア文化の定着や町会自治会の支援など共助社会づくりを推進する事業に取り組んでいることを紹介しました。

・個人発表

4日間の研修を踏まえ、各自コーディネーターとして抱える課題の解決に向けて、「現在の取組・課題」、「目指すゴール・ビジョン」、「ゴールに向けての3か年計画」をプランシートにまとめました。4グループに分かれ、発表し、意見交換しました。発表のテーマは「地域や他機関とのネットワークや連携について」や「居場所づくり」、「持続可能な活動について」などでした。

2021年度多文化共生コーディネーター研修データ(受講者141名)

2021年度多文化共生コーディネーター研修データ(受講生141名)
2021年度多文化共生コーディネーター研修データ(受講生141名)
2021年度多文化共生コーディネーター研修データ(受講生141名)

受講してよかった科目ベスト3

  1. 子どもの教育A
  2. 子どもの教育B
  3. 社会参画
受講して良かった科目ベスト3

受講後もっと学びたい(知りたい)と思ったこと

  • やさしい日本語
  • 多様な人とコミュニケーションが取れる方法
  • 地域日本語教室の活性化策
  • 意識啓発の実践
  • 多文化共生に係わる新しい取組
  • 助成制度の活用法

ファシリテーターからの一言

一般財団法人 自治体国際化協会認定 多文化共生マネージャー 長倉 美紀 氏

この研修は、生活者としての外国人を取り巻く現状を体系的に学ぶことができます。私はこの研修を初めて多文化共生施策を担当する自治体職員の方々に特におすすめしたいです。ここでの学びが基礎となり、多様な施策の可能性が見えてくると思います。さらには、横のつながりを育む貴重な機会であり、立場を超えた仲間ができます。ここで新たな取組が生まれることは決して珍しくないことです。ぜひ受講いただき、一緒に東京の多文化共生を創っていきましょう!

特定非営利活動法人 国際活動市民中心(CINGA)理事 新居 みどり 氏

第1回目の多文化共生コーディネーター研修を修了し、その後ファシリテーターをさせていただいています。この研修は、多文化共生の領域を体系的かつ最新情報を学ぶことができるよう論を重ねて作られています。同時に、東京において行政、教育、協会、市民活動分野など多様な領域の参加者が、お互いを知り、ネットワークが形成されるような工夫もされています。この研修に関わる中で、毎回新しい気づきをもらっています。

一般財団法人 港区国際交流協会 平野 智子 氏

この研修は、多文化共生の諸課題に関する知識を網羅的に学ぶことができる大変貴重な機会です。さらにその学びは、自分ひとりではなく、多文化共生の志を持った多様な「仲間」との対話を通じて築き上げられるものです。この「出会い」こそが、日頃のコーディネーションや連携、協働に取り組むときの大きな支えになっていると私自身は実感しています。

一般財団法人 自治体国際化協会認定 多文化共生マネージャー 山浦 育子 氏

今回の研修ではじめてファシリテーターを務めさせていただきましたので、この役割をきちんと果たせるかどうか正直少し不安がありました。グループの参加者は、色々な団体で活動をしている方で、4日間の研修を通して、課題、悩みなど共有できて、これからコーディネーターとしてどう実践していくのか明確な目標をたてられたと思います。参加者の皆様に助けられて、私自身も多く学ばせていただきました。ありがとうございました。