2022年度 多文化共生コーディネーター研修(第6期)報告書

東京都内には、多くの外国人住民が暮らしており、今後さらに増えることが予想される中、国籍や民族の異なる人々が地域社会の構成員として、共に生きていく多文化共生社会を実現することが重要になっています。
東京都つながり創生財団では平成28年2月に策定された東京都の「東京都多文化共生推進指針」に基づき、地域における外国人の多様なニーズにきめ細かく対応し、多文化共生社会の実現に資する専門人材である「多文化共生コーディネーター」のための研修を平成29年度から実施しています。
本研修における「多文化共生コーディネーター」とは、外国人住民に関わる基本的な法制度と教育・医療・防災等、多文化共生の諸課題に関する知識を有し、外国人住民に関わる課題の解決に向けて、企画立案し、関係部署・団体間の連携や協働を進め、取り組む人を指します。

日 時 令和4年 6月16日(木)・6月23日(木)・7月7日(木)・7月14日(木)
午前9時00分から午後4時30分まで
会 場 外国人在留支援センターFRESC会議室
(新宿区四谷1-6-1四谷タワー14階)
対 象 都内区市町村、都内国際交流協会及び社会福祉協議会職員都内で多文化共生に関わる一般市民団体関係者など
内 容
  • 多文化共生に係る概論及び各分野に係る基礎、基本に関する講義
  • 振返り(講義内容の整理と意見交換)
  • フィールドワーク(関係機関や団体を訪問)
  • 演習(課題解決に向けた今後3か年の活動プランの発表)
  • 外国人在留支援センターFRESCの見学(協力:東京出入国在留管理局)
  • 交流会(研修終了後、山脇教授とファシリテーター、受講者有志が参加)
受講者 39名
主 催 一般財団法人 東京都つながり創生財団
共 催 東京都
全体監修 明治大学 山脇 啓造 氏
全体監修担当明治大学教授 山脇 啓造

自治体が主催する多文化共生社会の担い手育成の研修は、愛知県の「多文化ソーシャルワーカー」や群馬県の「多文化共生推進士」の養成講座など、2000年代後半に始まりましたが、いずれもすでに終了しています。2017年度に始まった東京都の「多文化共生コーディネーター」研修は、現在、全国唯一のプログラムで、今年度で第6期が終了しました。東京都は外国人住民が全国一多く、区市町村や国際交流協会、社会福祉協議会そして市民団体などが様々な取り組みを進めています。この研修は多文化共生について体系的に学ぶとともに、そうした関係者が連携を深めていく貴重な機会となっています。特に今年は3年ぶりに対面で開催することができました。今年6月に国は「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」(5か年計画)を策定し、「外国人総合支援コーディネーター」の育成を掲げました。国や他の自治体にとってモデルとなりうるように、東京都が本研修のさらなる充実に取り組むことを期待しています。

講座紹介

6月16日(木)

「多文化共生のこれまでとこれから」

明治大学教授 山脇 啓造 氏

多文化共生とはなにか、自治体や国の取組の歴史、多文化共生プランや多文化共生の事例、やさしい日本語の取組、ドイツ・韓国・台湾といった海外の取組などについて講義し、今後の国や自治体、企業の課題、行政と企業の連携について言及しました。

・東京都の取組

東京都 生活文化スポーツ局 都民生活部 多文化共生推進担当課長 二宮 卓也 氏

東京都は、「多文化共生推進指針」に基づき、東京都・東京都つながり創生財団を中心とするネットワークを構築し、オール東京で多文化共生社会づくりを推進していくことを説明しました。また、具体的な取組として、やさしい日本語の普及啓発、在住外国人への生活情報の提供、地域日本語教育の推進、防災知識の普及啓発、外国人の人権に関する取組等について紹介しました。

・東京都つながり創生財団の取組

一般財団法人 東京都つながり創生財団 多文化共生課長 梅田弘美 氏

多文化共生社会づくりでは、関係団体とのネットワーク、情報発信、人材育成、外国人相談、やさしい日本語の活用促進、地域日本語教育の推進などの外国人住民支援事業について説明しました。また、共助社会づくりでは、ボランティア文化の定着に向けた「東京レガシーネットワーク」の運営や「腕きき掲示板」、町会・自治会応援キャラバン事業を紹介しました。

アンケートから

日本と外国の政策の違いや日本の中での国と自治体の役割の違いを学び、自分の職域でどういう役割を果たしていけばいいのか考えるための基礎的な知識が得られたと思う。

「出入国在留管理行政」

東京出入国在留管理局 在留支援部門 在留支援担当 統括審査官 安本 大輔 氏

在留資格、在留カード、在留審査関係諸手続きなどの制度を説明し、外国人の受入環境整備に関する施策、やさしい日本語での対応、外国人生活支援ポータルサイト、東京出入国在留管理局の在留相談(予約制)、FRESCヘルプデスクでの電話相談などについて紹介しました。

アンケートから

出入国管理行政というと「管理」の側面ばかりだと思っていたが、やさしい日本語の普及や外国人相談窓口の設置など、共生施策についても取り組みが進んでいることを知ることができた。

「コーディネーターについて考えるワークショップ」

研修の企画、運営を担当している4名のファシリテーターの取組を紹介し、コーディネーターの役割について意見交換をしました。

一般財団法人 自治体国際化協会認定 多文化共生マネージャー 長倉 美紀 氏

コーディネーター活動のヒントとして、教育現場での事例で連携を意識して取り組んでいること、今後の連携に向けて準備しておきたいことなどを紹介しました。

特定非営利活動法人 国際活動市民中心(CINGA)理事 新居 みどり 氏

市民活動(NPO 法人 CINGA(シンガ)/ NGO ピナット~外国人支援ともだちネット~)でのコーディネーターとしての活動紹介とコーディネーターとリーダーの違い、コーディネーターの「実践力」について話しました。

一般財団法人 港区国際交流協会 平野 智子 氏

港区国際交流協会での日頃の取組をとおして多様な主体との「関わりしろ」や「コミュニティ」について及び「コーディネーター」として意識したいことについて話しました。

一般財団法人 自治体国際化協会認定 多文化共生マネージャー 山浦 育子 氏

自身の取組をとおしてコーディネーターの役割について紹介しました。

アンケートから

国際交流協会、自治体、市民活動団体と異なる立場から多文化共生への考え方、アプローチ方法を聞くことができた。心がけていることや、それぞれの経験が大変参考になった。

6月23日(木)

「子ども教育」

明治大学 国際日本学部 特任教授、国際交流基金 日本語国際センター 所長 佐藤 郡衛 氏

外国につながる子どもの実態や就学、日本語の問題、異文化適応、進路について講義したほか、国の動向について説明しました。また、多文化共生コーディネーターへの期待として、地域と子どもの実態の把握をすること、子どもを支えること、学校や教師と連携して課題解決を図る取り組みをすること、地域のNPO やボランティアとのネットワーク化、他機関と連携することなどについて話しました。

アンケートから

外国籍住民にとっての日本の学校教育とは何か、どのように子どもを支えていくのかを、データをもとに、さまざまな角度から考えさせられる内容だった。

「情報提供・生活相談」

公益財団法人 横浜市国際交流協会 多文化共生推進課 シニアコーディネーター 藤井 美香 氏

外国人住民への情報提供のための「情報収集・情報作成」と相手に届く「情報発信」、多言語・多文化に配慮した生活相談について、横浜市国際交流協会の取組を基に講義し、また、参加者の活動や取り組みを共有するグループワークを行いました。

アンケートから

どういう情報を集め、どう発信すると必要な人に必要なタイミングで伝わるかという視点で取り組みが行われている。相談者に対して情報提供することの責任を改めて感じた。

「就労」

東京都産業労働局 雇用就業部 就業推進課 課長代理 上林 里絵 氏

外国人労働者の状況と外国人受入企業の状況、東京都の中小企業向けや外国人向けの外国人材受入支援施策について講義し、「東京外国人材採用ナビセンター」を紹介しました。

アンケートから

東京都の外国人材受入施策について、これまで細切れの情報しか得ることができなかったので、包括的に情報を得ることができた。

6月23日(木)

「居住」

特定非営利活動法人 かながわ外国人住まいサポートセンター理事 稲葉 佳子 氏

「外国人の住宅問題」と題して、外国人の部屋探しの現状と困難さの原因、外国人が入居するための支援策と今後の課題について講義しました。

アンケートから

外国人の住宅問題の現状・動向等を知ることができた。同じ地域に住む人としてお互いに気持ちよく暮らしていくためには何が必要か考えたい。

「災害対応」

公益財団法人 仙台観光国際協会 国際化推進課 企画係長 菊池 哲佳 氏

東日本大震災における活動事例の紹介とワークショップを通じて、多文化共生を推進するコーディネーターに求められる実践の視点について講義しました。

アンケートから

困ったときに仲間として外国人に接することは難しいことではない。災害時に起こる事例のグループワークは自分の所属する地域に置き換えて自分ごととして考えることができた。

7月7日(木)

「医療・保健」

東京都の外国人医療 ~新型コロナウイルス感染症を踏まえて~

東京都福祉保健局 感染症対策部 防疫・情報管理課 課長代理 中島 丈晴 氏

外国人住民が具合の悪い時の医療機関の受診や新型コロナウイルス感染症の治療・療養、その他の感染症への対応について紹介しました。

多言語対応、医療通訳、通訳ボランティアなど医療・保健現場における課題

一般社団法人 日本公共通訳支援協会 代表理事 西村 明夫 氏

各国の医療事情とことばの壁や医療現場でのコミュニケーション方法、外国人住民の医療の課題や医療通訳の難しさやリスクなどを話しました。また、医療通訳の適用事例を紹介しました。最後に、「調剤薬局での在住外国人対応について」受講者全員で検討しました。

アンケートから

コロナ感染の疑いがある外国人に対して支援の流れがよく分かった。医療通訳の現状や重要性、医療機関での体制整備の困難さなどについて理解が深まった。

「日本語教育」

「生活者としての外国人」に対する日本語教育

文化庁 国語課 地域日本語教育推進室 協力推進係長 石神 香織 氏

 「日本語教育の推進に関する法律」と文化庁の取組について紹介しました。

東京都における地域日本語教育

東京都 生活文化スポーツ局 都民生活部 多文化共生推進担当課長 二宮 卓也 氏

一般財団法人 東京都つながり創生財団 多文化共生課 課長代理 伊藤 結花 氏

これまでの東京都及び東京都つながり創生財団の取組について説明するとともに、多文化共生社会に向けた地域における日本語教育を推進していくことを話しました。

事例報告 ~新宿区における日本語学習支援~

新宿区 地域振興部 多文化共生推進課 多文化共生推進係 大山 倫太郎 氏

公益財団法人 新宿未来創造財団 地域交流参事役 岸田 心 氏

新宿区の外国人住民の現状と特徴、日本語学習を支援する目的、区内の日本語学習の支援体制について報告しました。

アンケートから

3団体から報告、問題提起を受けることで、現在の日本語教育のトータルな課題が理解できた。各機関のかかわり方や自治体の取り組み方や工夫には、学ぶべき点がたくさんあった。

研修中、情報提供コーナーを設けました。

7月7日(木)

「フィールドワーク」4グループに分かれて関係機関や団体を訪問しました。

特定非営利活動法人 IWC国際市民の会
(外国につながる子どもたちへの学習支援など)

HP:NPO法人 IWC国際市民の会

アンケートから

長年積み上げられた活動の様子を知ることができ、非常に貴重な体験だった。

東京外国人雇用サービスセンター及び新宿外国人雇用支援・指導センター
(留学生を含めた外国人の就職、転職支援など)

HP:東京外国人雇用サービスセンター
HP:新宿外国人雇用支援・指導センター

アンケートから

2ヶ所のサービス範囲、サービス対象の違い、それぞれの環境や状況もじかに見ることができたことは、今の業務に直接役立つため、良かった。

大久保図書館及びしんじゅく多文化共生プラザ
(外国人に関わる活動など)

HP:大久保図書館
HP:しんじゅく多文化共生プラザ

アンケートから

どちらも地域に対応した活動、居場所としての取組を考えている。図書館は多文化共生の先駆的取り組みをしており、プラザは連絡会の開催もし、多文化共生について専門機関や関係機関、当事者で考える機会があるのはとてもいいと感じた。

法テラス本部国際室及び東京労働局外国人特別相談・支援室
(外国人に係わる相談について)

HP:法テラス本部国際室
HP:東京労働局外国人特別相談・支援室

アンケートから

具体的な相談事例などを聞くことができ、実際にフロアーを視察して、相談体制の具体的イメージがつかめた。

7月14日(木)

「意識啓発」

東京法務局 人権擁護部 人権擁護専門官 佐々木 孝範 氏

多様性や人権尊重、ヘイトスピーチへの対応、多文化共生の意識づくりと外国語人権相談ダイヤル(全国共通ナビダイヤル)、外国語インターネット人権相談窓口などを紹介しました。

漫画家・タレント 星野 ルネ 氏

「漫画でふりかえるアフリカ少年と多文化共生」と題し、カメルーンで生まれ、日本で育った中で経験したことなどを、漫画を使って生き生きと楽しく話しました。人を分ける基準を人種や民族ではなく、「生きがい」などに変えると、新たな視点や出会いの可能性が広がるとも話しました。

アンケートから

人権に関する制度について理解できた。当事者の声を当事者の目線で聞くことができ、今まで、自分が気づかなかったことも気づかせてくれた。

「社会参画」

外国人住民による地域活性化とグローバル化への貢献について外国人パネリストが話しました。

外国人パネリスト紹介

株式会社グローバルトラストネットワークス 外国人住まい事業本部 部長 トラン マン ティエン 氏(ベトナム)

講演活動・通訳・翻訳などのボランティアをし、地域では町内会班長、子ども会の役員、PTA 活動、保護者会の副会長を経験しました。地域に外国人が転入した時に、地域の皆さんと円滑なコミュニケーションをとれるようにサポートしています。

ひらがなネット株式会社 清水エド 氏(タイ)

来日当初は日本語がほとんどわからず、地域の日本語ボランティア教室に通って日本語を習得しました。現在、ひらがなネットで料理教室や散歩、講座運営などを担当。事務局スタッフとして活躍中です。

神奈川県立 相模向陽館高等学校 非常勤講師 大城スサーナ 氏(ペルー)

10歳で日本に移住。日本語をゼロから学びましたが、ペルーに帰国しないと聞かされ、働く両親の姿を見て頑張れました。高校の部活は上下関係が大変でしたが、今でも付き合っている友達ができました。現在、定時制高校で日本語指導をしています。

アンケートから

生の声の迫力。有名人でない市井の日本で暮らす外国人の方々から見える姿を聞けたのが何よりも学びだった。一市民として仕事をし、地域に根付いて生活している皆さんを「外国人」と呼ぶことは正しいことなのかと思う。

「演習」

フィールドワーク発表

各フィールドワーク先について各グループの代表者が発表を行いました。

活動プラン発表

課題解決のためにグループ(7グループ)あるいは個人(15名)で3年間の取組みプランを発表しました。各グループとも研修中に連絡を取り合い、様々な立場からコーディネーターとしてどのように取り組むのか話し合い、プランを検討しました。パワーポイントや模造紙で資料を作成し、熱のこもった発表が行われました。

研修終了後の交流会

2022年度多文化共生コーディネーター研修データ

受講してよかった講座ベスト4

  • 意識啓発
  • 災害対応
  • 社会参画
  • コーディネーターについて考えるワークショップ

受講後もっと学びたい(知りたい)と思ったこと

  • 外国人の子育て支援/外国につながる子どもたちの声
  • 地域日本語教育の推進
  • 地域でのつながりづくり
  • 多文化共生に係わる新しい取組、進んだ取組、失敗した取り組み

ファシリテーターからの一言

一般財団法人 自治体国際化協会認定 多文化共生マネージャー 長倉 美紀 氏

第6期の本研修は、2年ぶりに対面実施となり、ワクワクしながら準備を進めてきました。この研修は、生活者としての外国人を取り巻く現状を体系的に学べる場です。毎年テーマを見直し、できる限りタイムリーな学びとなるよう心掛けています。そして今年は2年ぶりにフィールドワークを行い、多文化共生のまち東京を体感できました。私はこの研修を初めて多文化共生施策を担当する自治体職員の方々に特におすすめします。ぜひ受講いただき、一緒に東京の多文化共生を創っていきましょう!

特定非営利活動法人 国際活動市民中心(CINGA)理事 新居 みどり 氏

コーディネーター研修では、多文化共生領域の基礎的な知識が体系的に学ぶことができます。その内容は実践者による最新の現場報告でもあります。行政職や地域の対人援助職の人などにも有益です。また、その知識をふまえ、地域問題解決のためのプロジェクトを協働で計画することも醍醐味の一つです。普段、一人または少人数で仕事や活動をしていている人にとってもこの参加者同士の対話の場は貴重なものになると思います。

一般財団法人 港区国際交流協会 平野 智子 氏

多文化共生の諸課題に関する知識を体系的に学ぶこの研修も、今年度で6年目を迎えます。基礎的な内容はしっかり押さえつつ、日々刻刻と変わる社会情勢にも対応できるよう、毎回アップデートされています。多文化共生を推進するためには、多様な領域間での連携や協働が不可欠です。この研修の参加者によって形成されるネットワークは、今後の「共創」を生み出すプラットフォームにもなっていると感じます。これからも多くの方がこの研修に集い、私たちの「仲間」になっていただけたら嬉しいです。

一般財団法人 自治体国際化協会認定 多文化共生マネージャー 山浦 育子 氏

今回の研修で2回目のファシリテーターを務めさせていただきました。久しぶりの対面研修となって、フィールドワークの実施もできて、本当に良かったと思います。地域ごとにグループを分けて、地域の取り組みや悩みなどを共有でき、話し合って、いくつかのグループ発表にもつながりました。発表の共通キーワードは「横のつながり、顔の見える関係構築」などで、参加者の皆様がこれらを意識して、これからも地域で多文化共生を推進していくために、たくましく成長していくことを期待しています。