2022年11月号
L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。
東京で暮らす外国人のみなさんの座談会です。
日々の生活のこと、文化の違いなど「生の声」をお届けします。
第1回病院について
病気と病院について、3回シリーズでお届けします。母国と日本の病院の違いや、病院にどんなサービスがあると外国人がもっと行きやすくなるかなど、3人に話していただきました。
最初に病院へ行ったのは、7歳のときです。お腹が痛かったので、お父さんが家から一番近いクリニックを探してくれました。英語が通じない、やさしい日本語で話してもくれない病院でしたので、お父さんは辞書などを使って日本語で説明をしました。お医者さんは一生懸命聞いてくれました。
日本に来て最初のときは日本語があまりできなかったので、友人に聞いて紹介された近所のクリニックへ行きました。看護師さんたちはやさしい日本語で、症状のことを聞いてくれました。そのときはずっと風邪をひいていて熱がありましたので、風邪とかfever(熱)と言って看護師さんに伝えました。先生も英語と日本語を使って診察をし、薬の処方もしてくれました。
病院は会社の健康診断でしか行ったことがありませんが、クリニックには最近行きました。筋トレで筋肉を傷めたんです。「筋肉が痛い」など(キーワード)で検索をして、ネットで調べたクリニックへ行きました。症状を説明できたので、注射を打ってもらい治りました。
日本の病院とネパールは、ちょっと違うなと思いました。日本は最初に問診票を書きますが、ネパールには問診票がないです。症状を書くということはなく、先生は会話しながら症状を聞くんです。
問診票は症状とか病気のこと、家族のこととか全部書きます。そこまで必要かなと思いました。問診票は日本語だけでしたので、あまり読めませんでした。看護師さんや受付の方が手伝ってくれて、書いてくれました。
僕も問診票は書きました。日本は病院や小さいクリニックが多いなと思いました。イタリアは大きい病院があって、小さいクリニックは少ないです。
わたしもマウリさんと同じで、日本のクリニックはすごく小さいという印象です。ウズベキスタンでは、小さいクリニックでかかりつけ医というようなものはあまりありません。大きい病院へ直接行きます。
ネパールでは日本と同じで、クリニックが多いです。専門的なクリニックが多いので、1部屋や2部屋の診察室が多いです。話をして診断をします。採血や検査をできないクリニックが多く、検査が必要なときは別のところを紹介されます。
病院へ行くときに不安はありました。日本語ができなくて、自分の病気のことをちゃんと伝えられるかが不安でした。また、お医者さんの話が分からなくて、検査をすると言われたときに、何のための検査か分からなくて不安でした。今は大丈夫です。
僕の不安なことも、病院で症状が伝えられるかどうかです。
そうですよね。いちばんの不安は言葉の問題と、それぞれ国の医療の仕組みが違うからだと思います。
お父さんもわたしも、日本語の病気の名前がわからないときは、先生が英語で病名を書いてくれて、わたしたちはGoogleで調べます。それでどんな病気かがわかります。お医者さんはできるだけ簡単な言葉を使って説明してくれました。
もし、分からない言葉があったら、紙に書いてくださいと言って、後からGoogleで調べようと思っていました。でも、お医者さんの説明はとても分かりやすかったので、大丈夫でした。
お医者さんが話した日本語が難しくてわからなかったら、やさしい日本語で話してもらうか、もし可能であれば英語で病気のことだけ説明してくださいとお願いします。日本の先生たちは皆さんやさしいので、とてもありがたいです。ネパールでは医者の立場がすごく高いので、先生は気軽に話をしてくれないです。ネパールと日本の医者の大きな違いかと思いました。
Googleで調べられるようになったので、とても便利になりました。
はい、本当に便利になりました。
はい、本当に便利になりました。
日本に来たばかりの人は言葉の問題が大きいと思います。タブレットで簡単な画像を見せたりするのがいいと思います。
外国人にとって一番大きい壁は、やはり日本語だと思います。できれば病院に通訳者がいるとか、翻訳アプリがあれば安心できると思います。
わたしの友人が働いている病院には通訳サービスがあって、病気の説明をすると通訳がクリニックの人と話してくれるそうです。このサービスは保険のカバーがないので、すごく高いと聞きました。通訳サービスをもっと広げて、だれでもアクセスできるようになればいいと思います。
わたしは病院で医療通訳をしています。病院のシステムは各国違いますから、そこを理解してもらうのがとても難しいです。例えばネパールだったら先生の判断と違っても、患者さんの希望で検査や治療をできることが多いです。日本は、ほとんど先生の判断で検査や治療をします。患者さんは検査をやりたいけど、先生はやらなくていいとか、逆に先生は患者さんに検査をしてほしいのに、患者さんは自分の症状はそこまでじゃないから検査はしたくないということがあります。そのあたりを理解してもらうのは、とても大変です。
わたしが驚いたことは、健康保険です。ウズベキスタンにはありません。薬はもともと安く、ウズベキスタンでは子どもの医療は無料です。保険料を払わなくても18歳まで無料です。
ネパールも同じで、保険はありません。ネパールでは年齢に関係なく、全員医療費は自費になります。医療費は高いと思います。お腹が痛いとか、風邪ぐらいじゃなかなか病院に行かないです。薬剤師さんは資格が必要ですから、病気のことはほぼ薬剤師さんに相談をして、薬をもらいます。本当に辛くなるまでは病院に行かないですね。
イタリアも保険がなくて、その代わり年収が400万円以下の人は、医療も薬も全部タダです。子どもは無料というのはありません。親の年収に合わせて、少しずつ上がっていきます。イタリアの病院はけっこう並びますし、待たされます。年収の低い人はタダですから行きますが、並ぶのですぐには見てもらえません。
日本は保険があって、病院やクリニックもスムーズに受診できるので、そこはいいところだと思います。
(もし、皆さんが大きな病気をして、手術が必要となったとき、日本で治療を受けますか。それとも母国の病院で治療しますか。という質問に・・・・)
僕は日本で受けます。
わたしも日本で治療や手術を受けたいです。ネパールは保険がないので、経済的にも大変です。実家に帰って家族と一緒に過ごしたい気持ちはありますけど、国を行ったり来たりする大変さを考えると、日本の方が安心だと思います。
わたしはケースによって選びます。たとえば乳がんの手術も、温存するか切除するかなど、国によって方針が違うように思います。病気によって、どこで治療するか選択したいと思います。
今回は「病院について」話してもらいました。国によって病院のシステムが違うので、話したいことがたくさんあり話題がつきません。次回は「病気について」話していただきます。
── 次号へ続く