ニュースレターれすぱす

2022年11月号

L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

クローズアップ

外国人支援・国際交流・多文化共生に関わる団体や人を取材し、活動や取り組みを紹介しています。

NPO法人西東京市多文化共生センター(愛称:NIMIC ニミック)

~ 国籍や世代を超えて誰もが住みやすく生きやすい西東京市に ~

NPO法人西東京市多文化共生センター
左から相談員の加藤祐子さん、代表理事の山辺真理子さん、副代表理事の田辺俊介さん。

NPO法人西東京市多文化共生センター(以下、愛称のNIMIC)は日本人も外国人の住民も、ともに住みやすい「多文化共生社会」を築き、西東京市を活性化させることを目指して活動しています。多言語による相談業務から国際交流イベントの企画や運営、国際交流に携わる人材育成まで幅広く活動を展開しています。さまざまな活動を続けるうちに、若い学生たちも参加するようになりました。広い世代が集うNIMICの活動について、代表理事の山辺真理子さん、副代表理事の田辺俊介さんにお話をうかがいました。

2001年、誕生したばかりの西東京市で新しい国際交流組織づくりを目指す

NPO法人西東京市多文化共生センター
市の委託で運営する多文化共生センターの施設は、西武新宿線田無駅近くのビルにあり、相談業務を行うとともに、西東京市における多文化共生の拠点となっています。

西東京市は2001年、田無市と保谷市が合併して誕生しました。1990年前後に、周辺の市で相次いで設立された国際交流協会のような組織はなかったため、市の生活文化課や地域の日本語教室のボランティアたちで外国人住民の困りごとに対応していたものの、限界も感じていたといいます。そんな中2004年ごろになって、西東京市にも国際交流組織設立の話が浮上し、市内にある大学の教授やボランティア関係者などで懇談会を開き、1年ほど議論・検討を重ねました。「近隣にはすでに外国人住民に対応した制度や条例を整備した自治体もありましたが、西東京市ではまだ整備されていませんでした。当時は多文化共生についてあまり理解もなく予算もない中で、懇談会の参加者は何とか知恵を出し合って提言書を作成しました」と代表理事の山辺さん。
そして、その提言書をベースに2006年に設立されたのがNIMIC(設立時名称:西東京市多文化共生・国際交流センター)です。2008年には特定非営利活動法人の認証を取得し、NPO法人として再出発しました。
NIMICは異なる文化的背景を持つ人々が、宗教や信条、生活習慣の違いを互いに理解し尊重し合い、偏見や差別意識を持つことなく、共に地域で暮らす「多文化共生社会」を築くことで、世界平和に寄与することを目指しています。2020年にはその理念や想いを込め、「ともに住み、ともに生きる」をキャッチフレーズに選定しました。

外国人支援、多文化理解の促進と交流、活動活性化・ネットワークづくり―NIMIC独自の「3本の柱」

NPO法人西東京市多文化共生センター
数多くある事業は、常に3つくらいが並行して動いているといいます。

現在NIMICでは、「西東京市からの受託事業」「西東京市との共催事業」「NIMIC独自の自主事業」を実施していますが、それらを設立時の提言書にも掲げていた「3本の柱」で展開しています。1つ目は相談業務をはじめとする「地域に在住する外国人の支援」、2つ目はイベントの開催など日本人と外国人の“心の壁”をなくすための「多文化理解の促進と交流」、3つ目は日本語ボランティア講座やボランティア連絡会といった「活動活性化・ネットワークづくり」です。
それぞれの柱について、「全てバランスよく必要とは思っていますが、最初に『支援』がないと。『支援』は基本的には自治体の仕事だと思っているので、そこの隙間をサポートするために、『ネットワーク活性化』、また、支援した効果を上げるためには『交流活動』で意識啓発が進まなければいけません」と山辺さん。
市内在住の外国人はおよそ4800人。NIMICは外国人市民の暮らしを支えるため、自治体と協働する一方で、NPO団体としての独自性・専門性も発揮しながら活動しています。
たとえば、自主事業の一つ「子ども日本語教室」は、子どもの日本語教育には子どものおかれた背景や環境を理解し、その成長に寄り添いつつ支援する専門性が必要という考えで設立当初から実施されています。NIMIC設立以前に山辺さんも活動していた市内のボランティア日本語教室に外国人児童が増えてきていたことから、NIMIC設立後すぐ開始したといい、そうした環境整備には、NIMICという組織が必要だったといいます。

支援とともに、理解を深めるためのさまざまな環境づくりを

NPO法人西東京市多文化共生センター
NIMICに相談に来る半分以上がリピーターだといいます。「一度ここに来て相談すると、役所の通知などが届くたびにそれを持って走ってくる、とか。引っ越すからと最後のごみ処理の手続きまで頼んでいった人もいるんです」と山辺さん。

2016年にNIMICが行った調査では、87%の市内在住外国人が「西東京市に住み続けたい」と答えました。その理由として、困った時にすぐに誰かに話せる、相談できる環境があることが挙げられます。引っ越してきた外国人にはまず市の窓口から日本語ボランティア教室の案内など必要な資料一式が手に渡るようにし、困ったときにいつでも相談を持ち込めるよう、市内12の日本語教室も活動日や時間が散らばるよう調整しています。外国人住民が地域社会と繋がり、地域に溶け込んでいけるような環境づくりが行われているのです。それと同時に、受け入れ側の地域社会の啓発として、市民の多文化理解促進のための活動も行っています。「異なる文化の方が実際に入ってきたときに、それを『活力』ととらえるか、『問題』ととらえるかは意識次第なので、そうした意識をプラスにするようなイベントや事業をやっている」と山辺さん。
その一つに、外国人と日本人の出会いの機会・きっかけを提供する「留学生ホームビジット」事業があります。家庭で半日ほど留学生を受け入れ交流するというものですが、家の中にお祈りの場所を用意してムスリムの留学生を迎えた家庭からは、「自分の家でそういうことが行われることは想像できなかった。素晴らしい体験をさせてもらった」という声もあったそう。これについて山辺さんは「多文化共生の一歩だと思う」と話します。
「街中を歩いていても、(外国人の方が)結構歩いている。でも、違和感は全然ない。だんだん当たり前というか、お隣に外国人がいることが自然になってきている」と田辺さんも話します。

受け身ではなく参加意識を持ってもらうため会員制に

NPO法人西東京市多文化共生センター
副代表理事の田辺さんも、日本語スピーチコンテストの当日ボランティアをきっかけにNIMICに参加した一人です。

NIMICは当初から会員制という形をとることで、一緒に活動を創っていく仲間としての意識を共有しています。会員制にしたもう一つの理由について、「これだけの市民がきちんと賛同しているということを、市に対して示す意味もあります。実績のある団体だと自治体に認めてもらうことで、対等な協働関係を結んでいくことができる」と山辺さん。
2022年2月末の時点で会員は195名。イベントの実行委員や当日ボランティアなど、会員の7割が何らかの形で活動を続け、参加が難しい人たちも会費を納めることでNIMICを支えています。また、全体の2割程だという外国人会員も積極的に活動し、2名は理事としても活躍しているといいます。
市の委託で市報の中からピックアップした外国人にも役に立つ情報を、やさしい日本語と英語・中国語・韓国語に翻訳し発行している『西東京市くらしの情報』の制作では、外国人会員が大活躍。基本的に大部分がボランティアで行われるNIMICの活動ですが、翻訳に携わる外国人に対価を支払うことで「社会参加」の機会も創出しています。制作されたものは日本語教室や公民館、コミュニティセンターなどで配布されています。

今の活動を次の世代につなげていきたい

NPO法人西東京市多文化共生センター
Youth Club第一回のイベントの様子。左上のロゴも、メンバーが作成したものだといいます。誰もが住みやすいまちを目指して、若いメンバーも頑張っています。

「『自分で考えて自分で動く』というのが私たちの強みなんです」と山辺さん。
「会員からアイディアが挙がったときに、共鳴する人がいて、『じゃあ、やってみよう』という声が出て、やり方やコンセプトを理事会で話し合って、すぐに動いていきます」
そうした中、昨年2021年の新規事業計画の一つとして挙がったのが、高校生から25歳までの若いメンバーで構成する「Youth Club」です。数人でコンセプト案を練って立ち上げに至り、すでに活動を開始しています。現在参加している11名の中には、NIMICの子ども日本語教室の修了生もいます。「修了生がボランティアとして活動に戻ってきてくれることが一番うれしいですね」と山辺さん。
理事3名がサポートについてはいるものの、活動の企画から広報、運営まですべてメンバーがイニシアチブをとって進めており、すでに一回目のイベントを成功させたといいます。
「硬直化せずに、いろいろな世代がいることによって生まれる活動を大切にしながら、活動を次の世代に受け継いでいきたい」と話す山辺さんと田辺さん。
出身・国籍・宗教・人種・民族・世代・性別・障害の有無・社会的地位など異なる文化的背景を持つ多様な人々が「ともに住み、ともに生きる」―誰もが住みやすい地域づくりを通し、西東京市における多文化共生の実現に向けNIMICは歩みを進めます。

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