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にほんごの会企業組合 ~日本語を学ぶ人と教える人、双方の学びの場であり続けたい~

©にほんごの会企業組合

にほんごの会企業組合
理事の宿谷和子さん(前列右)と会員・会友のみなさん

7月のクローズアップは、にほんごの会企業組合のご紹介です。世田谷区下北沢を拠点として活動するにほんごの会では、外国人のための日本語教室のほか、日本語の教え方を学ぶ講座の開催や教材の開発なども行っています。また、にほんごの会の活動は、結婚、出産、育児などの事情で家庭に入った女性たちが、再び社会に出て活躍する場としての役割も果たしているそうです。今回は理事の宿谷和子さんに、にほんごの会の活動の特色や今後の取組みなどについてお話をうかがいました。

Q. にほんごの会設立の経緯をお聞かせください。

A. にほんごの会は、1984年にお茶の水女子大学のOGの集まりから発足した日本語教師のグループです。背景にあったのは、日本語を学びたい・日本人と接したいと考える外国人が、留学生などを中心に急増していたことでした。こうした人たちにより良い日本語教育を提供する必要性が感じられていた状況と、子育てなどで家庭に入っていた主婦たちの生きがいの場を設けたいという願いが結びつき、日本語教育という分野で女性がもう一度社会に出て働く機会を得られれば、ということで立ち上げられたのがにほんごの会だったのです。自分たちで学びながらそれを社会に還元することをモットーとし、日本語の勉強会をしつつ、要望に応じて外国人に日本語を教えることを始めました。当初は任意団体としてスタートしましたが、1988年に法人化、にほんごの会企業組合となって現在に至ります。メンバーは、出資金を出し仕事として活動を行う会員と、会の活動を側面から支える会友からなり、総勢40人ほどです。

Q. 現在の主な活動内容を教えてください。

A. 活動の内容はおおまかに3つに分けられます。ひとつは外国人のための日本語教室、2つめは日本語の教え方を学ぶ日本人のための日本語教授法の講座や研修。そして、その他の活動として、交流の場である談話室やことばにまつわるさまざまなテーマを話し合う勉強会の開催、教材開発などを行っています。日本語教室は事務所の小さなスペースでの開催となりますが、その分アットホームな雰囲気で進められています。教える側が全員女性であることから、生活者の支援という目線をより生かした授業を行っていることもにほんごの会の特徴のひとつですね。また、日本語の教え方を学ぶ講座もこの小さなスペースで行っており、お互いに教えたり学んだりできる双方向の学びの場となるように心がけています。

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「談話室 にほんごではなしましょう!」は毎週金曜日、北沢タウンホールで開催しています。

Q. 教材の開発についても教えてください。

A. 最初に手掛けたのは外国人学習者のための辞書、『日本語を学ぶ人の辞典』です。豊富な用例を掲載し、例文にふりがなを付けるなど、外国人学習者が使いやすいことを徹底的に追及したこの辞書は、1995年に発売されて以来ロングセラーとなっています。また、外国人の増加に伴い地域の日本語教室が増えたことから、生活者の目線を大切にして内容を練った教科書『日本でくらす人の日本語Ⅰ・Ⅱ』を作成、さらにその内容をコンパクトに絞った『いっぽ にほんご さんぽ 暮らしのにほんご教室 初級1・初級2』を出版しました。『いっぽ にほんご さんぽ』は、おかげさまで学ぶ側だけでなく、日本語を教えているボランティアさんにも使いやすいと好評です。この教科書を使って行う地域の日本語学習支援ボランティア向けの講座の開催依頼も、各自治体や国際交流協会、ボランティア団体などからいただくようになりました。

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ロングセラーとなり海外でも出版されている「日本語を学ぶ人の辞典」と
地域の日本語教室の学習者と支援者をつなぐというスタンスで作成された教科書。
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Q. 企業や各種機関からの依頼で日本語教育を担当することもあるそうですね。

A. 最初は企業にアプローチしてもなかなか難しかったのですが、少しずつ実績を重ね、委託していただけるようになりました。最も長く続けているのは、外国人技能実習生に対する日本語指導で、20年近い実績を積んでいます。また、EPA(経済連携協定)に基づいてインドネシアから来日した介護福祉士候補者の日本語研修を担当したこともあります。特別養護老人ホームでの3年間の実務経験に寄り添いながら、国家試験に向けての日本語支援を行いました。

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インドネシア人技能実習生たちの研修風景(左)と世田谷区主催「日本語教室」最終日の合同写真(右)
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Q. 長年日本語の指導をされてきて、何か学習者側の変化を感じられますか。

A. 国籍も生活背景も、日本語を学ぶ目的も多様化したと感じますね。短期で1~2か月滞在する間にちょっと日本語を学びたいという人もいれば、ずっと日本で暮らすのでしっかりとした日本語を身につけたいという人もいます。かつては企業に勤めている人と留学生が中心でしたが、今は国際結婚で来日した人がずいぶんと増えました。また、下北沢という場所柄もあると思いますが、「そば打ちの勉強に来た」というようなユニークな人が来ることもあります。相手に合わせて柔軟に教え方を変える必要性があるので、教師の側もなかなか大変です。

Q. 今、にほんごの会の課題と感じられていることはありますか。

A. 後継者の問題ですね。長年活動しているメンバーはそれだけ年を重ねているので、もっともっと若い人に入ってきてもらいたいところです。にほんごの会に加わってもらう条件として、420時間の日本語教師養成講座を修了しているなど日本語教育の知識が十分にあることを挙げていますが、実際に教えるとなると知識さえあればいいというわけではありません。現場でさまざまな経験を積みながら、教えることのプロになっていってもらいたいですね。特に今、日本語学習支援ボランティアの講座の依頼が増えているので、いずれはこの講座の講師になれるような人材をもっともっと育成していかなくてはと思っています。

Q. 今後、力を入れたいと考えている活動についてお聞かせください。

にほんごの会企業組合

A. これから需要が増えるであろう介護の日本語教育に取り組んでいきたいと思っています。EPAの介護福祉士候補生の支援を行って痛感したのが、介護の日本語は難しすぎるということです。日本人ですら難解な専門用語は、外国人にとって大きな負担です。また、介護の現場で働く外国人は、利用者である高齢者、同じ施設で働く職員、利用者の家族、施設に出入りする業者やボランティア、周辺の住民などと日本語でコミュニケーションをとらなければなりません。こうした日本の介護現場で働く外国人を支援するには、日本語を教える知識やノウハウだけでなく、介護現場とそこで使われる言葉をよく知っておく必要があります。にほんごの会にとっても大きなチャレンジとなりますが、日本語指導のプロとして、積極的に介護の日本語教育に関わっていきたいと思っています。


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