地域日本語教室活動レポート vol.1

梅雨入りのニュースが少し気になる季節となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

さて、東京都多文化共生ポータルサイトでは今月より、地域日本語教室の活動レポートをスタートします。

東京都つながり創生財団多文化共生課の職員が各地域で活動している日本語教室に伺い、その様子やお話などをレポートにまとめてご紹介していきます。

おおよそひと月に1本のペースで更新していく予定ですので、どうぞお楽しみに!


Vol.1

第1弾は、

文京区で活動されている「ボランティアサークルSPIRIT」(以下、SPIRIT)をご紹介します!

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文京区は外国人住民が10,347(令和4年5月1日時点。区調べ)、区の全人口に占める外国人住民の割合は約5%と、都内の他の区と比べると高い数値ではないものの、年々その数は増え続けています。

そんな文京区で活動するSPIRITは、もともと東洋大学社会学部の課外活動として活動を開始し、2015年に学生サークル「ボランティアサークルSPIRIT」となったそうです。

「外国にルーツをもつ子どもたちの学習支援」プロジェクト

「外国人」と言わないのは日本語がほとんど使えない日本国籍の外国出身者がいるから。外国にルーツを持つ子どもたちに、大学生が「大学」という場で、「教科学習と文化コミュニケーション」という手段を用い、日本語の「読む・書く・聞く・話す」力の習得と日本文化理解を支援することを目的とする。 ーHP資料より引用

現在も、社会学部を中心に留学生も含む学生15名が、ボランティアメンバーとして所属し、外国にルーツをもつ子どもたちへの日本語学習支援をはじめとした活動をコロナ禍でも精力的に行っています。 

   

今回は活動を見学させていただくとともに、3名の学生ボランティアの方にお話をお聞きしました。

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上段左:現代表の松下さん(3年生・社会学部)、上段右:元代表の田村さん(4年生・文学部)、下段:阿曽さん(2年生・経済学部)

皆さんはそれぞれ、

「受験時に塾の先生にお世話になった経験から、学習支援に興味を持った」(松下)

「日本語教育を勉強していたことから関心を持った」(田村)

「子どもが好きで、勉強を教えたくて参加した」(阿曽)というきっかけでSPIRITに所属したそう。

    

SPIRITでは現在、月曜日と木曜日の18時半から20時まで、外国にルーツをもつ子どもたちへの日本語学習支援を無料で行っています。

参加者は小学生から中学生のお子さんが多いですが、年齢制限等はないそうで、会社員の方や参加しているお子さんのご両親に、日本語教育を学んでいるメンバーが中心となって日本語を教えたこともあったとか。

コロナ禍以前は大学の教室を使って活動していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により教室の利用が難しくなってからは、オンライン(Zoom)で活動をされています。

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多言語での教室案内

今回は、木曜日の夜の活動を見学させていただきました。

学習支援の際は子どもたちが質問したりしやすいよう、ブレイクアウトルーム機能を使ったり、ミーティングを分けたりして、できるだけ学生ボランティアと子どもが1対1になるようにしているそうです。

また、対面時は生徒の宿題や勉強したい教材を一緒に見ながら教えていましたが、現在はLINEグループに教材の写真を送ってもらい、それを見て教えているそう。

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子どもたちとの連絡や、教材のやり取りを行うLINEグループ

   

まだ日本語が十分ではない子どもたちが相手ということもあり、特に気をつけているというのが、言葉選び

この日も、小学6年生のKさんが、国語の文章題で「億劫」の意味が分からず答えを間違えてしまった際、「"面倒くさい"って言葉知ってる?」と理解を確認しながら言葉の説明をしていました。正しい答えを確認するときも、一方的に答えを教えるのではなく、具体例を挙げながら「じゃあ、どれかな?」と尋ねたりして、お子さんの力で正しい答えにたどり着けるようサポートしていました。

Kさんが間違えて選んでしまった答えに言及する際、「とても長い時間」という「億劫」の語源に触れ、「×(バツ)じゃないよ、おしい!もう少し!」と励ます場面も。

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学生ボランティアの皆さんが「難しい!」と声をそろえた画面越しの国語の指導。チャット機能も使って要点を書きだし、一緒に答えを考えます。

   

また、この日、勉強の途中でお子さんがおしゃべりを始めてしまう場面もありましたが、「へぇ~そうなんだ!」と笑顔で話を聞く学生ボランティアのお2人。子どもが話し始めたらおしゃべりの時間を取ったりして、子どもたちが気負わず楽しく勉強できることを意識しているそうです。

このお子さんは3年以上継続して、ほぼ毎回活動に参加しているそうで、活動を楽しみに開始時間前に来てしまうこともあるとか。お子さんが前のめりになって楽しそうに話す姿からは、学生ボランティアの皆さんへの信頼が感じられました。

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活動がオンラインになったことで...

オンラインになったことで、文京区外からTwitterなどで繋がり教室に参加してくれるなど

対面だったら来られなかった人が来てくれた」

「勉強やアルバイトに忙しい中でもパソコンやスマホがあればどこからでも活動できる

といったメリットがあったそうです。

   

一方で、

オンライン環境がないために活動に参加できなくなってしまった子がいた」

「学習支援の際に指差しや書き込みができず、画面越しの指示がうまく伝わらないために対面時より教えるのに時間がかかるようになった

といった難しさも出てきたそうです。

   

「対面時より教えるのに時間がかかるようになった」、という部分では以前の週1回の活動日を週2回に増やして対応しつつも、オンラインの限界を感じているとか。コロナ禍で活動をする上で、そうした葛藤を感じている団体さんも多いのではないでしょうか。

    

「もうすぐ対面で活動したことのある学生ボランティアがいなくなってしまう...」

今回お話を伺った3名の学生ボランティアの皆さん、4年生の田村さんは対面活動の経験がありますが、3年生の松下さんと2年生の阿曽さんはサークル所属時からずっと活動がオンラインだったため、まだ対面で活動をしたことがないそうです。

「対面活動経験のあるメンバーがいなくなる前に、長期休み等を使い、場所を借りて対面で活動したい」、メンバーの皆さんの切実な思いが伝わってきました。

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コロナ禍前、対面で活動していたころ

今後の展望...

コロナ禍で先がなかなか見えない中ではありますが、メンバーの皆さんに今後していきたい活動についてお聞きしました。

   

田村さん:

「他団体とのつながり・関わりを増やしていけたら、オンラインで勉強できるところを探し困っている人と、SPIRITのマッチングがしやすくなる。サポートできる人が増える。」

コロナ禍になって機会の減ってしまった、他団体との交流や連携。今年はある団体さんと3年ぶりの交流が実現しそうだとか!

松下さん:

「コロナ禍前にやっていたような、子どもたちとの交流会等、季節のイベントをやってみたい。」

SPIRITでの活動開始から、子どもたちとはずっと画面越しで顔を合わせている松下さん。

卒業までに実現してほしいです!

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コロナ禍前のクリスマス会の様子

阿曽さん:

「今後は学習支援に加えて、進学面などでもサポートする活動ができたら」

去年運営に関わった、外国にルーツをもつ子どもやその保護者を対象とした多言語高校進学ガイダンスで、外国ルーツの子どもたちの進学の大変さを知り、感じたそうです。

   

今回、活動見学やお話をお聞きする中で、本当に熱心に活動に取り組まれている学生ボランティアの皆さんの姿が印象的でした。コロナ禍でさまざまなことが制限される中、葛藤しながらも、できることを続けていこうとするSPIRITの皆さん。

コロナ禍以前とはいろいろなことが変わってしまった中で、

変わらずに、「そこに教室(場)があり、学生ボランティアの皆さんがいる」ということ。

そのことに救われている子どもたちも多いのではないかと思います。

「居場所」としての日本語教室の役割、記事を書く私自身もかつて外国にルーツをもつ子どもの日本語教育に携わっていた際に強く感じていました。外国にルーツをもつ子どもたちにとっては、活動範囲が彼らにとっての「日本」であり、そこで関わる人たちが彼らにとっての「日本人」だ、という話も聞いたことがあります。

こうした彼らの「居場所」がこれからも守られ、そして広がっていくこと、また、一人でも多くの外国にルーツをもつ子どもたちが、SPIRITのような「場」や学生ボランティアの皆さんのような「存在」と出会えることを願うとともに、

そうした日本語教室を必要とする人と教室を、そして教室と教室を"つなぐ"役割を、今後も事業等を通し担っていけたらと改めて思いました。

    

地域日本語教室活動レポート、次はどちらの教室にお邪魔するのでしょう?次回も皆さま、どうぞお楽しみに! 

by. MK